ラッパーが多用する「Bitch」という言葉。2Pacの曲から込められた想いを読み解く

Writer: 渡邉航光(Kaz Skellington)


 

2Pacだけは聞いちゃ駄目だよ

私が小学校のときに友達のお母さんに言われた言葉である。カリフォルニアで育った私がヒップホップに出会ったのは、定かではないが小学校3年〜4年ぐらいのときだ。当時エミネムやDr. Dreが爆発的に売れていた時代だったので、彼らを好んで聞いていた私は当然2Pacにも興味を持ち始める。そして実際に2Pacの曲を少しづつ聞いたりしていた。当時はネットを使用する文化がまだなかったので木曜日にテレビでやる「昔のヒップホップ特集」みたいな番組を毎週見ていた。

 

たまたま友達と彼の母親とご飯を食べているときに、「ヒップホップにハマっている」という話しをしたら「2Pacだけは聞いちゃ駄目だよ」と言われたのを今でも覚えている。その人がいうには「2Pacはたくさん悪い言葉や人間としてよろしくない内容をラップするから」という理由であった。当時は「まぁそんなこと言ったらドレーとかエミネムも変わらないよなぁ」ぐらいに聞き流していたが、最近ふとこの出来事を思い出したのだ。

はたして2Pacのリリックはよろしくない内容なのだろうか?

もし私が同じ台詞を現在言われたら反論してしまうだろう。昔と違ってリリックに対して考察することが増えたからでもあり、単純に小学生のときに比べて思考力が成長したからかも知れない。

2Pacのようなヒップホップアーティストが批判されるときに必ず言われることがある。それが「Bitch」という言葉の乱用についてだ。「メス犬」「アバズレ女」「嫌な女」などの意味を含む「Bitch」という言葉はもちろん、本気で人に言っていいものではない。実際には男性やものに対しても使用する言葉であるが、ヒップホップアーティストはこれを使用する。もちろん人に対して本気で使用していい言葉ではないのであるが、そんなBitchという言葉に込められた意味を2Pacの曲から読み解くことができるのだ

2Pacの“Wonda Why They Call U Bitch”という曲である。


 

曲名は「ビッチと呼ばれる理由はなぜだ」という意味となっている。「All Eyez On Me」に収録されている曲でも特に私が気に入っている曲だ。そう、この曲はビッチと呼ばれている女性がなぜビッチと呼ばれているのかを、2Pacが教える内容となっている。2Pacのラップはこのようにして入る。

 

Look here, Miss Thang, hate to salt your game / But you’s a money hungry woman and you need to change

聞いて、自己主張が強いあなたのやり方にケチをつけたくはない。でもあなたは金に飢えた人で、それを変えないといけない

 

この入りで既に全女性を軽視しているリリックではないということが少し予想がつく。さらに彼はこの女性の状況をもう少し説明する。1stヴァースの注目すべきリリックをいくつかハイライトしてみた。

 

It was said you were sleeezy, even easy / Sleepin’ around for what you need, see / It’s your thing, and you can shake it how you wanna

あなたは簡単に寝れると言われてしまっているんだ。物欲しさのために色々な男と寝る。自分の体だからどうしようと自由だが。

 

Still looking for a way out, and that’s okay / I can see you wanna stray, there’s a way out
Keep your mind on your money, enroll in school / And as the years pass by, you can show them fools

まだその状況から抜け出す方法を探しているけど大丈夫、方法はある。金を集めたらちゃんと学校に行って、将来馬鹿にしてきたやつらを見返すんだ。

 

But you ain’t trying to hear me cause you’re stuck / You’re heading for the bathroom ‘bout to get tossed up

でもあなたは思考が固まってるから俺のアドバイスなんて聞こうとしない / またトイレに行って男にいいようにされようとしている。

 

Still looking for a rich man, you dug a ditch / Got your legs up trying to get rich

まだ金持ちの男を探していて自分で墓穴を掘った。金持ちになろうとして足をあげている。

 

そう、2Pacは貧困地域に住み、お金を稼ごうと自分の体を使っている女性に対して「学校で学び、自分自身をリスペクトできる仕事をしよう」と言っているのだ。実際に2Pacの「Young Niggas」という曲では、ギャングになりたがる少年たちに「そんな急いで人生を決めないで。今から頑張れば医者にでも弁護士にでも会計士にだってなれる」というメッセージを送っている。貧民街にいいようにされている女性たちに、「このような生活をしていたらビッチと呼ばれるのも不思議ではない」と言っており、その状況から抜け出すように応援しているようにも聞こえる。

 

2ndヴァースにて一番伝えたいこと


Got them legs wide open while you’re sittin’ at the bar / Talking to some nigga ‘bout his car / I guess he said he had a Lexus, what’s next? / You heading to his car for some sex? / I pass by, can’t hold back tears inside / Cause Lord knows, for years I tried

バーにて足を開いて、そこで出会った男と車の話しをしている。彼がレクサスに乗っていると知った瞬間のあなたの行動は見えている。彼の車にて彼と寝るんだろう。そんなあなたとすれ違った俺は、今まで言ってきたことが無駄だったと知って涙を堪えられずにいる。

 

この曲の歌詞を見ていると彼がこの女性にたいして、以前は特別な感情を抱いていたとわかる。そしてこの後に、一番のメッセージが込められている。

 

You don’t have to kill your dreams plotting schemes on a man / Keep your head up, legs closed, eyes open

男の策略にのって、夢を諦めなくてもいいんだ。上を向いて、足を閉じて、目を見開いてよく周りを見てみろ。

 

2Pacは女性に「男性に頼らなくてもいい生き方」を推奨しているように聞こえる。男のために自分の人生を捨てるな、自分の夢を追いかけろ、と呼びかけているのだ。

確かにビッチという表現は悪いが、実際にリリックの内容を読み解くと、どういう人に対してこのフレーズを使用しているのかがわかる。タイトルや響きだけを見るととても悪い内容に思えるが、その人の「想い」を読み解くことが大切なのだ。

実際に貧困地域では、女性が金銭的な問題で自立できないという社会問題がある。そのため体を売って生活するのが当たり前となっている地域もある。そのような問題が一刻も早く解決されるように願う。そのような人たちに対しても「Bitch」という言葉を投げかけるのは、もちろん許されることではない。しかし2Pacの想いを知ることにより、このような問題が多く存在するということを知ることができた。もし自分が大勢の人々を助けられるようになったとき、この曲を思い出して問題解決に少しでも貢献できるような人になりたいと感じさせる曲だ。2Pacがいまだに支持されている理由がわかる。

2Pacが語る「無責任なラッパー」とは?どのようなリリックが無責任になるのだろうか?

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

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