Tyler, the Creatorとフランク・オーシャンから見る「コラボの極意」

 

2017年7月も

素晴らしいアルバムたちがリリースされた。2017年は今のところヒップホップ的には素晴らしい年であると感じる。様々なアーティストがアルバムをリリースし、今年のトップ20は選ぶのに苦労しそうである。そんな2017年7月にリリースしたアーティストのうちの1人がTyler, the Creator(タイラー・ザ・クリエイター)である。彼については下記のモチベーショナルな記事がオススメである。

Tyler, the Creatorが「創造」し続けるモチベーションについて語る。「本当に信じていればどんなことだって可能だ」

そんな彼が7月21日にリリースした新アルバムが「Flower Boy」である。リリースの10日前にはリークしていたので、リリース前から聞いた人は多いと思うが、このアルバムはCherry Bombに比べたら攻めてる感は少ないが、Tyler, the Creatorらしい「後発的じゃない」サウンドとなっている。このアルバムではフランク・オーシャン、ASAP Rocky、Anna of the North、Lil Wayne、Kali Uchis、Steve Lacy、Estelle、Jaden Smith、Rex Orange Countyをフィーチャリングしており、そのなかでも人気曲「911 / Mr. Lonely」ではフランク・オーシャンが一役を買っている。長年のコラボレーターのフランクとのコラボについてタイラーが語ったインタビューが面白いので紹介をしたい。

 

Zane Low:フランク・オーシャンとのコラボについて教えてもらえますか?多分あなたは誰よりも彼のことを長く知っていますよね?

Tyler:俺らは実は一回もコラボの予定を立てたことはないんだ。俺は大体いつもスタジオで何かを作ってる。あいつはよく「よー今何してんの?」って連絡してくるんだけど、いつも「スタジオにいるよ」って伝えるから遊びにくるんだ。あいつが来ると俺は「これどう思う?」って曲を聞かせるんだ。そしたらあいつが「なんかメロディが思い浮かぶか試していい?」って感じで色々試しはじめる。そうやって「Bimmer」「48」「She」ができた。

むしろ今回の「911」はもはやアクシデントで今の形になったし、元々は全く違うメロディだった。彼がスタジオに入ってきていきなり「これ好きじゃない。俺になんか試させてくれ!」って言ったと思ったら400回ぐらい「Chirp, Chirp, Chirp」って言い始めた。彼はその部分を使いたくないって言ってたんだけど、俺は「これそのまま入れたほうが絶対に良いから俺を信じろ」って伝えてこの形になったんだ。

 

フランク・オーシャンとのコラボについて語ったタイラー。なんと彼は一度もフランクとコラボの予定をたてたことがないのである。ホーミーであることから、音楽家として「コラボをしようぜ」ともならなくても、お互いのセンスを理解できているのである。たまたまスタジオにやってきて、忌憚なく意見交換をし、思いついたものがあれば試してみる…オープンなマインドを持っているアーティストだからこそできるコラボ方法である。お互いが双方の良さを理解しており、成り行きで自分が思いついた「価値」を重ねていく。そしてそれが一つの作品としてまとまる様子はまさに「化学反応」であろう。

これはアートにてコラボをする醍醐味とも言える。例えば「表現」ではない、「ビジネス」上のコラボでは、お互いを意識しすぎるせいか、このような化学反応を起こすのは難しい感じる。そのためビジネスのコラボは「単に乗っかりました」感が出てしまうのだ。これは音楽だけではなく、企業同士のコラボでも同じことが言えるだろう。そしてこの「化学反応」の規模を大きくしたものが、アルバムなのではないか?と感じる。例えばDAMN.やTPABからはその雰囲気が伝わってくる。最近ではこのコラボが良かったので、要チェックである。

Pro EraのNyck CautionとKirk Knightの新コラボアルバム「Nyck @ Knight」の一聴レビュー

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

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