ヒップホップで最も使用された言葉は?他のジャンルの歌詞と比べたデータから見る「コンテクスト」の重要さ

 

 

ヒップホップとラップ

の要素のなかでも非常に重要なのはリリックだ。世界に対して伝えたいメッセージや、頭と心底からひねり出したライム/言葉遊びを披露するプラットフォームであり、まさにビートという「キャンバス」の上に自由に表現することができる手法である。Playatunerではリリックの解説を頻繁にやっていたが、そのなかでも「ストーリー」に注目した記事が多かった。ストーリーテリングの素晴らしさ、そしていかにそのようなリリックから学べるか、という観点が多いなか、「言葉」そのものにも注目することも非常に重要である。

シェイクスピアより語彙力があるラッパーたち。一流ラッパーの語彙力に驚こう

以前上記で「シェイクスピアより語彙力があるラッパーたち」という記事を書いたのだが、こちらはpudding.coolというヴィジュアルエッセイサイトが公開したデータを元に、非常に語彙力が高いラッパーたちを簡単に紹介していったものであった。そしてこの度、こちらのpudding.coolがまた面白いデータを公開したので紹介したい。そのテーマは「どの言葉が最も”ヒップホップ”なのか?」というものである。長いデータとなっているので、簡単に紹介した後にそこから何を感じたのかを紹介したい。The Language of Hip-Hop via pudding.cool

共通項

まずこのデータの導入としてラッパーたちのリリックから、そのラッパーのカラーを作り上げる「頻繁に使用される中心的な言葉」を抽出がされている。そしてその中心的な言葉からラッパーの同士をグループ化して、ラッパーたちの共通項をマッピングしているのだ。

例えばLil Yachty、Kodak Black、Migosなどの近年流行りのラッパーたちは流行りの「Skrrt」 という効果音/言葉を頻繁に使用するので、そのような言葉を共通点として近い箇所でマッピングがされている。「シェイクスピアを超える語彙力のラッパーたち」でも頭角を現していたWu-Tang Clanの面々であるが、彼らもさすが同じグループということで、リリックに登場する言葉からも共通点を見つけることができる。

Courtesy of https://pudding.cool/2017/09/hip-hop-words/

 

ヒップホップ特有の言葉?

そこから彼らはビルボードラップチャートにランクインしたことがある500ものラッパーのリリックから2,600万語を使用し、「ヒップホップ特有の言葉」を調べ上げたのだ。その結果、このようなグラフが出来上がった。

 

Courtesy of https://pudding.cool/2017/09/hip-hop-words/

 

こちらのグラフはX軸が「ヒップホップ内でその言葉が使用された多さ」であり、Y軸が「他のジャンルでその言葉が使用された多さ」である。例えば「Sorrow(悲しみ)」という言葉はX軸の値が小さく、Y軸が真ん中ぐらいなので、ヒップホップ以外の他ジャンルでは頻繁に使用される言葉であるが、ヒップホップ曲ではあまり登場しない言葉ということがわかる。右斜にある青い線に近づくにつれ、どのジャンルでも使用されている言葉であることだ。「ストラグル」という言葉はヒップホップのリリックで、人生について語られるときに頻繁に使用されるイメージがあるが、案外他のジャンルでも使用されている。

実際にはこのスクリーンショットに登場している4語以外にもかなり多くの言葉がこのグラフに登場しており、左上の「Search」から気になる言葉がどこに分布するかを検索できるので、非常に面白いグラフとなっている。実際にこのグラフで気になる言葉を検索してみて頂きたい。

そしてヒップホップでも、他のジャンルでもダントツで使用されている言葉が「Love(愛)」という言葉になった。非常に好ましい結果であり、ヒップホップ感の強い言葉であるが、この「Love(愛)」という言葉の分布を見て、私はとあることを感じた。それは言葉の「コンテクスト」の重要さである。

 

言葉そのものと「コンテクスト」

上記のデータは非常に面白い。実際に自分が気になっている言葉を検索して、他のジャンルと比べると何時間でも飽きなさそうだ。しかし面白いと同時に、「コンテクスト(文脈)」を考えずに情報を受信してしまうと、本質を見落とす可能性もある。言葉の「コンテクスト」というものの重要さは、頻繁に発信してきた。言葉には様々な意味があり、どのようなシチュエーション/文脈で使用されているかが、メッセージを理解するのに大切だ。例えば「Bitch」という言葉は悪い言葉であり、人には言ってはいけない言葉であるが、2Pacの「Wonda Why I Call U Bitch」という曲では、その意味を踏まえて深いメッセージを発信している。

ラッパーが多用する「Bitch」という言葉。2Pacの曲から込められた想いを読み解く

どのようなコンテクストで使用されているのかを理解しようとせずに「あ!悪い言葉だ!」と反射的に批判することは非常に簡単である。しかし「言葉」そのものに囚われていると、実際にどのようなシチュエーション/メンタリティで使用されているのかを見落としてしまう可能性が大きい。

上記の例だと、「Game」と「Love」がその「コンテクスト」が違う言葉に当てはまるのではないだろうか?と感じる。例えば「Game」という言葉は、ヒップホップで使用される場合は「Rap Game(ラップゲーム)」と言った「競争が激しいラップ業界」のようなニュアンスで使用されることが非常に多い。逆に他のジャンルなどで単純に「ゲーム」という意味であったり、「Don’t play games with me」のような「からかわないで/ふざけないで」という意味が多いのかもしれない。後者の「Don’t play games」のようなフレーズはヒップホップでも多く使用されていると思うが、「俺はおふざけには容赦しない」のようなフレーズで見ることも多い。実際に同じ言葉だとしても、「リリックの世界観」が全然違う可能性が大きい。

「Love」も非常にわかりやすい例かもしれない。恐らくポップミュージックなどのジャンルでは「Love」はどちらかと言うと異性などに対してのラブソング的な立ち位置が多いのではないだろうか?ポップミュージックでのラブソングの市場は非常に大きく、むしろ最も歌われているテーマかもしれない。そしてヒップホップでは、また違う「愛」についてラップするアーティストが多いと感じる。ブラザーや仲間達、ファミリー、フッド、人々を愛することについてラップしているテーマが相対的には多いのではないだろうか?同じ「Love」であったとしても、何を伝えるかによって意味合いが変わってくる。もちろんポップミュージックでも仲間やファミリーについての「愛」の歌もあれば、ヒップホップでもラブソング的な曲はあるので、これは極端に「白黒」をつけられる話ではなく、どちらにも当てはまることではある。

しかしこのグラフには、単純に「Loveという言葉が多い」というだけデータではなく、恐らくその先があるのだ。それは技術的な問題で「コンテクスト」まで読み取ることができないのかも知れないが、データの先を見て、「そのデータのさらに奥にはどのようなデータがあって、どうやったらそれをブレイクダウンできるのか?」と考えることが重要なのかもしれない。私はデータサイエンティストでもなければ、統計の専門家でもないので、音楽ファンとして「このデータから考えられる仮説」を立てることを楽しんでいるだけである。もちろんこちらのデータは非常に面白いものであり、これが将来解明できるであろう事実を導き出す第一歩と考えるとエキサイティングだ。様々な言葉を調べて、どんなコンテクストで使用できるか?という妄想を是非やってみて頂きたい。ケンドリックやエミネムのリリックが何故共感されるのか?という記事もオススメである。

エミネムとケンドリック・ラマーが共感される理由を考える。ストーリーテリングと多重視点

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