Notorious B.I.G.の「Ten Crack Commandments」から学ぶオフィスでの処世術

 

Guest Writer:GASHIMA(WHITE JAM) Editor:Playatuner

 

Notorious B.I.G.の代表曲

と言えば何を思い浮かべるだろうか?もちろん「Juicy」や「Big Poppa」などのシングル・カットされた楽曲が真っ先に頭に浮かぶ人がほとんどだと思う。しかし、アルバム曲である上、サビさえ無いにも関わらずそのコンセプトだけで圧倒的な存在感を放っている「Ten Crack Commandments」はきっとヒップホップファンであれば誰もが耳にしたことのある楽曲であろう。

DiddyがNotorious B.I.G.の「Life After Death」について新事実を語る。

この「クラック十」と題された楽曲は、元ドラッグディーラーから成り上がったNotorious B.I.G.が自身の経験を元に書き下ろした「ドラッグ稼業で成功するための10ヶ条」となっている。読者の皆様に、この10ヶ条を知って「よし、明日からドラッグディーラーになろう!」とは思っていただきたくは無い。しかし「起業家としてJay-Zから学べること」、「DJ Khaledから学ぶプロジェクトマネージャー術」、「TDEのスタジオルールから学ぶオフィス術」のように、ヒップホップアーティストから学べることがたくさんある。そういう意味でも、この曲に綴られた教えから一般社会に生きる人たちが何を学べるのか?こんなトピックでその一つ一つを考察してみた。もちろん一般社会とクラックゲームではシチュエーションも違うので極論だと感じるものもあるだろう。しかし彼の言葉は頭の片隅に置いておいても損はないはずだ。

 

ルール その1. どれだけ稼いでるかは誰にも教えるな

羽振りの良い暮らしをしていたり、周りより稼いでいることは嫉妬を買うことになり、ストリートでは命取りになるぞという教え。一般社会ではそれで命を狙われたり、給料を強奪されたりすることはないであろうが、社内の人間に自分の給与を知られることによるデメリットは計り知れない。「なんで同期なのにアイツの方が給料が高いんだ?」「あの上司、大して何もしてないクセにそんなにもらってるのか?」など周囲の嫉妬から足の引っ張り合いに巻き込まれないためにも自分の給与のことは話さないのが利口かもしれない。

 

ルール その2. 次の動きは誰にも悟られるな

自分が計画していることを人に話さず、静かに遂行しろという教え。せっかく思いついた企画やアイデアを見境なく話してしまったがあまりに誰かに横取りされてしまっては元も子もない。その相手が社内の人間ならまだしも競合の企業ともなれば、それは死活問題である。仕事しているアピールのためかFacebookなどのSNSで会議や会食を都度報告している人も多いが、本当に大切なことは胸の内に秘めておいた方がいい場合もある。

 

ルール その3. 誰も信じるな

10ヶ条の中でも特に厳しいこのルール。共に過ごす日々の中で、特に気の合う同僚や、尊敬出来る上司と出会い、人間関係が深まることもあるだろう。しかし、ビギーによるとビジネスはビジネス。決して彼らは友人ではないということは肝に命じなければならないと教えてくれる。周囲の人たちに極端な不信感を抱く必要はないが、一方的に自分が信頼を起き、過度な期待をしてしまったがあまり、相手がそれにそぐわない行動を取った際に勝手に裏切られたと感じてしまう人も多いのではないだろうか。

 

ルール その4. 自分の商品でハイになるな

ストリートに蔓延するドラッグの中でも特に中毒性の高いクラック。これに自らが手を出してしまったら身を滅ぼすぞという教えである。一般社会においては、いたって当たり前にも感じられるこのルールであるが、自分の提供するサービスや商品を乱用、また自身がそれを使用しなくとも、商品を横領や横流ししたことで刑事事件へと繋がるケースは後を絶たない

 

ルール その5. 自分の家ではクラックを売るな(プライベートな領域を守れ)

厳密にはこの「自分の家」をビギーはリリック内で「自分の休む場所」と表現している。つまり仕事と休みのオンオフはしっかりと分け、自分の客にプライベートな領域にまでは踏み入らせるな、ということである。クライアントや上司の要望に休日も返上で応えることは、社会の中では献身的な行為と評価されがちであるが、繰り返す内にそれが当たり前となってしまうことも多いだろう。しっかりと休息を取れないことは結果、日々のパフォーマンスを下げることに繋がり兼ねない。プライベートな時間や領域にまで踏み込んだ要望にはNOという勇気を持つことも必要なのだ。

 

ルール その6. 掛売りはするな

「ヤク中が金を返しに来るなんて思うな」と続くこのルール。たしかに薬物中毒者に「後で金を返すから先に商品をくれ」と言われても信用出来ないことは、ドラッグ稼業に関わったことがない人間にも容易に想像が付く。しかし、この相手が企業やクライアントだった場合はどうだろうか?特にフリーランスや個人事業主が請求を踏み倒されるというケースは多く、泣き寝入りしてしまう人もいる。そういった事態を回避するためにも、クライアントには入金日の期日や支払いを厳守してもらうよう努めるべきだろう。

 

ルール その7. ビジネスと家族は完全に切り離せ

ビギー自身もリリックで「このルールは軽視されすぎている」と語っているが、実際に「他人よりは信頼のおける肉親」という考えから家族とビジネスをしてしまう人は多いのではないだろうか?江戸時代の仙石騒動から、記憶にも新しい大塚家具のお家騒動まで、歴史を振り返っても家族間でのビジネストラブルは繰り返されている。新しいビジネスパートナーは見つけることは出来ても、家族の替えは見つけることは出来ない。金には代えられないものを失わないためにも、家族とのビジネスは避けるべきだなのかもしれない。

 

ルール その8. 大量のブツは持ち歩くな

その理由として「お前の仲間だって そのブツを捌こうと思えば捌けるんだ」とビギーは語っている。一般社会においては、よほど高価な宝石などを取り扱っていない限り、自分の商品を強奪されることは想像しづらい。しかし、知的財産を提供する業種の人間であれば、持っている情報やアイデアは容易に横取りすることが出来てしまう。これはルール2にも共通することである。また、他者に奪われるリスク以外にも、重要なデータなどを紛失してしまうということも現代社会ではありえるだろう。重要なデータの入ったハードディスクなどはなるべく持ち歩かず安全な場所に保管しておこう。

 

ルール その9. 警察には近づくな

このルールは「逮捕されないように警察に近づくなよ」と言った簡単なものではない。警察に関わらない理由としてビギーは「お前だけが捕まっていなかったら、周りの奴らはお前が密告者だと疑うだろう。奴らは聞く耳も持たずにお前を殺しに来るぞ。」と語っている。なんとも恐ろしい世界だ。ディーラーにとっての警察のように、ビジネスマンの運命を左右する存在は誰だろうか?恐らくそれは人事に関わる役職の人間達だろう。彼らとあまりに密接な関係になれば「あいつは人事に媚を売ることで自分のポジションを守っている」などと言いがかりを付けてくる輩もいる。「警察」を「運命を左右する人」に置き換えることにより、人事に限らず上司など自分の評価を下すポジションの人間には付かず離れずの距離感を保つことが賢明であると捉えることもできる。

 

ルール その10. 客がいないなら商品は受け取るな

ストリートで幅を利かせるディーラー達も麻薬市場では末端の販売人であり、彼らの上にはさらに大きな権力を持つ元締めの組織が存在する。そして、その元締めから商品を受け取ってしまったからには何があってもその支払い期日までに商品を売り捌き、売上を返納することが義務付けられる。無論、捌ききれなかった言い訳などは聞き入れてもらえないのだ。これはビジネスシーンでも同じことが言えるであろう。上司やクライアントからの要望を受託した時点で、ビジネスパーソンにはそれを全うする責任が生じる。もしその責任を果たす自信がなければ、依頼された時点で断るべきなのだ。たしかに頼まれた業務に対し「NO」と言うのは勇気のいる行為だ。しかし、引き受けた仕事を完了出来なかった時に失う信頼はそれ以上の損害となることを理解しなくてはならない。高みを目指してチャレンジすること自体は大切ではあるので、計画的に仕事をすることが重要である。

 

以上がNotorious B.I.G.が残したドラッグ稼業の10ヶ条である。その全てとは言わずともいくつかは一般的なビジネスシーンで活用出来るものがあったのではないだろうか?また、同じニューヨーク出身のラッパーNasは楽曲「Represent」の中で「ラップゲームはクラックゲームと似ている」と語っている。ビギーは売人を引退した後も、このような成功哲学を持っていたからこそ、音楽業界での成り上がりを果たしたと言えるだろう。

このようにのし上がったヒップホップアーティストのバイタリティから、ビジネスマンが学べることは多い。もちろんそのままの意味で捉えてしまうと、全く共感できないものかも知れないが、自分の状況と上手く照らし合わせることにより、より毎日の仕事でも勇気が湧いてくるだろう。このようなビジネス参考になる記事は下記もオススメである。

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