T-Pain、Shady Records、Hopsin等から見る「信頼」と「疑い」のバランスの重要性

 

 

アーティストとレーベルのビーフ

は本当に頻繁に見る。実際には統計は取っていないのでなんとも言えないが、特にヒップホップ界はなんとなく他のジャンルより多いようにも思える。そんななかPlayatunerではアーティストの権利やレーベルとの仲違いの事例を頻繁に紹介している。レーベル以外にも、プロデューサーの立場などについても書いており、アーティストがクリエイティブコントロールを持ちつつ、正当な活動ができるようになることを願っている。

T-Painから見るレコード契約とアーティストの自由。彼が語るアーティストが感じるストックホルム症候群とは?

 

以前もT-Painがいかに自分の作品へのクリエイティブコントロールを失ったかを書いた。そしてそのクリエイティブコントロールを持ち続けるためには、独自で「レバレッジ」を作る必要があるということも書いた。どちらも記事も是非読んで頂きたい。そんななか、またT-Painのインタビューにて、興味深い事例があったので紹介をしたい。今回は「金銭的な面」である。

実際に金銭的な理由でレーベルと仲違いするパターンは非常に多い。それはCash MoneyとLil Wayneも、Ruthless RecordsとIce Cubeも、HopsinとFunk Volumeという歴史が証明している。そんななか、T-PainもYoung Money/Cash Moneyからロイヤリティが正当に支払われていないと主張している。しかしT-Painはビーフしているわけでもなく、自分の確認不足のせいでもあると語るのだ。

 

 

T-Pain:俺は今まで要求していなかったんだ。おい?俺のロイヤリティはいつくるんだ?って聞かなかったんだ。だから俺にも責任はあるよ。これはフィーチャリングのギャラとかじゃなくて、もっとバックエンドのことだ。フィーチャリング自体はお互いを助け合うって意味で無料でやったけど、その後のロイヤリティはまた別の話しだ。

まぁ実際に俺も自分のお金を自分で管理しているわけでもないし、Lil WayneとBirdmanにたいして文句があるわけではないが、これは彼らの仕事でもある。俺のチームが「あれ?これまだお金入ってきてなくない?」ってやっと気がついただけだ。

 

彼は今でもLil WayneとBirdmanとの関係は変わっていなく、彼らが何か手助けが必要だったら協力すると語った。この発言ではT-Painの人柄の良さでもあり、ビジネス的な弱みでもある部分を見ることができる。個人的にこの発言を聞いて感じたのは、「信頼」と「疑うこと」のバランスの重要性である。「疑う」という言葉を使うと響きが悪いが、これはある意味ビジネスでは「気にかける」という意味合いの意識で考えている。自分にとっても、信頼している相手にとっても、「疑う:気にかける」ということは非常に重要なのである。それは権利を主張/理解しあうためにもそうであるし、自分の身の回りをクリティカルな目で見ていないと結果的に誰も得をしない状況になる場合もあるのだ。

例えばHopsinが立ち上げた、業界を代表するインディーズ・レーベル「Funk Volume」の事例も非常にわかりやすい。彼はビジネスパートナーであるDameと、共同代表として会社の50%ずつ所有していたが、結果的に金銭的な理由で解散している。Hopsinは完全にDameを信頼していたため、全くファイナンスや楽曲パーセンテージについて気にかけていなかったのだ。逆にDameは信頼されていることにあぐらをかき、確認作業/コミュニケーションを怠っていたのだ。Dameからしたら「業界スタンダード」であるかもしれないマージンのパーセンテージも、Hopsin側からしたら実は全く納得いかないものであった。しかしHopsinは「こいつはレーベルの初日から一緒にやってきたから全面的に信頼している!」というテンションであったため、結果的にその納得いかない数字に気がついたときには、もう遅かったのだ。もし早めにHopsinが「疑って」おり、気にかけていたら、レーベル解散にはならなかっただろう。

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上記はある意味Ruthless Recordsとジェリー・ヘラーのような話かもしれないが、金銭的な点以外でも、「アーティストとしての権利」はある。それは上記にて書いたクリエイティブ・コントロールである。エミネムのShady RecordsがGriselda RecordsのConwayとWestside Gunnと契約したニュースはまだ記憶に新しい。「Shady Recordsと契約できる!」となったら、恐らく世の中のラッパーには無条件で所属する人もいるだろう。しかしGriseldaの2人はそうでもなかったのだ。彼らはGriseldaというブランドを自分で背負いながら、長年自分たちだけで実績とファンベースを作ってきた。その経験があるからこそ、自分たちが100%のクリエイティブコントロールを持てるような契約をしたのだ。これも業界に搾取されまいと「疑った」結果得ることができたShady Recordsからの「信頼」であろう。

このような事例から「自分の周りにたいして質問/疑問を抱く」ことの重要性がわかる。それは決して尖ったり、攻撃的になることではなく、人間として敬意を持って「すり合わせ」をすることであろう。「疑い:気にかける」ことにより、やっとすり合わせができるようになり、ステークホルダーの多くが納得できる条件/信頼を獲得ができるようになるのだと感じる。そのため、質問/疑問を持ち、確認していくことが「信頼関係」の第一歩なのかもしれない。アーティストとしての信頼を得て、いい条件で契約する話は下記がオススメである。

現代のアーティストにとって理想な「契約」をRussから学ぶ。アーティストが搾取されないために

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