TimbalandがJay-Zとの楽曲製作プロセスを語る。アーティストとプロデューサーの間に生まれる「化学反応」

 

 

偉大なプロデューサー

というとPlayatunerでは頻繁にDJ PremierDr. Dreについて取り上げている。彼らの精神性はカムアップするプロデューサーにとっても重要なものであり、学べることは多い。そんななかで、常にヒットを飛ばしてきたプロデューサーと言えばTimbaland(ティンバランド)である。以前Timbalandとミッシー・エリオットの関係とカムアップについては紹介した。

Missy Elliott「床に寝てた日々を思い出す」Timbalandと乗り越えた日々を語る。

 

床に寝ながら、カップラーメンをシェアしていた2人。そんな2人はAaliyahの「One in a Million」でブレイクアウトすることになる。その後Timbalandはジャスティン・ティンバーレイクやJay Zなどのアーティストと組み、トッププロデューサーとして大ヒットを次々に飛ばすようになった。そんな彼が語るJay Zとの作業プロセスが非常に興味深いので紹介したい。

 

彼はジャスティン・ティンバーレイクをプロデュースしたときにも音楽での「化学反応」を感じたと言っているが、その「化学反応」のプロセスをジャスティンとJay Zとの事例で具体的に語っている。

 

Timbaland:音楽は魂に面白い形で話しかけてくる。例えばジャスティンの「Cry Me a River」に関しては彼がスタジオに入ってくるときの雰囲気や、ボディランゲージを見て、あのメインのメロディとなる部分を思い浮かんだ。そしてそれが彼に普段と違う動きをさせることができるということも知っていた。、お互い何も声に出さなかったけど、お互いが自然と間に生まれた「化学反応」に気が付いていた。

 

ジャスティン・ティンバーレイクとの間に起きた「化学反応」について語ったTimbo。これは音楽を複数人でやったことがある人であれば感じたことがあるかも知れないが、その「感覚の合致」というものが素晴らしい作品を生み出す場合がある。さらに彼はJay Zに関してこのように語った。

 

Timbaland:Jay Zと一緒にやったときも、俺は彼のリズムをフォローしただけなんだ。彼は「アイディアがある」と言って、フローを口ずさむんだ。まだリリックはできていないから、彼は思い浮かんだリズムを適当な言葉で、鼻歌のようにラップするんだ。そして俺はそのリズムを聞いて、そのヴァイブスを掴むんだ。その後、彼に「5分間時間をちょうだい」と伝えて、その5分間でビートを作った。彼に聞かせるためにヘッドフォンを渡したら、「え?」みたいな顔をされたけど、聞いた瞬間に全てが合致した顔になった。その曲が「Jigga What, Jigga Who」となった。そこで俺らの間には「化学反応」があることに気がついた。

 

実際には他の曲でもJayがシャワーを浴びながら思い浮かんだリズムやメロディを元にトラックを作ったりしたと語っている。この2人の作業プロセスを見ると、Timbalandという「プロデューサー像」が見えてくる。近年だとインターネットの発達によって、特に一緒に「作業」するわけではない、ビートを送ってラップを乗っけて終了、という「コラボ」は増えている。しかしこのTimbalandとJay Zのような、実際に顔を合わせ、お互いの小さく曖昧な「火種」に相互的に燃料を投げ入れることができる「コラボ」は、結果も必然的にマスタピースとなる場合が多いと感じる。お互いが自分の役割を自然と肌感覚で理解しており、そこには「彼がこういうのやりたがってるからしょうがない」という妥協はないのだ。

ある意味TimbalandはJay Zのリズムを聞いて「仕立て」ているとも言えるが、これがもしかしたら偉大なプロデューサーの条件なのかもしれない。アーティストが考えているぼんやりしたヴィジョンを、自分が持っている経験で明確な選択肢を与える。プロデューサーと言ったら、一般的には「◯◯したら世間にウケる」という方向性を作る印象があり、もちろんそのようなプロデューサーもいるが、自分が「アーティスト」としての経験があるプロデューサーは、アーティストのヴィジョンを明確に届ける方法を提示するのだろう。そしてアーティストと二人三脚でそのようなヴィジョンが明確に描けたときに、はじめて表現として世界を変える作品が生まれるのかもしれない。以前「海外のキュレーターにウケる音楽を作りたい」と言っている「プロデューサー」的な方もいたが、「プロデューサーとは何か?」と考えさせられる事例であった。

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