「クラウドファンディングで2億円集まったら引退する」ヘイターを煽るVince Staplesのアーティストとしての自由

 

 

インターネット時代の

アーティストとリスナーの関係については幾度となくPlayatunerにて書いてきた。アーティストをリスナーはプレスやメディアを通じなくても「直接」繋がることができるようになり、ファンに届けるという意味ではアーティスト活動にとって非常に大きなメリットとなる。しかし直接繋がっているからこそ、今まで以上に「ネガティブ」な意見も入ってくる。そのような「ヘイター」に悩まされるアーティストも多い。

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アーティストも感受性豊かな「人間」なので、このように他人の意見を一々気にするのはしょうがないことであるが、Run the JewelsScHoolboy Qが言うようにアーティストは「他人を気にしない」で表現するべきなのだ。ここ最近も「Swizz Beatzのヘイターに対するアドバイス」という記事を書いたが、今回は完結編として、最強の対処方法で自己表現をしたVince Staplesの件を紹介したい。

Vince Staplesは誰に何を言われようが「I Don’t Give a Fuck」精神で生きているが、彼がこの度発表したクラウドファンディングを見るとその精神が伝わってくる。彼は彼のアートに対してごちゃごちゃ言ってくる人にたいして、皮肉った煽りのようなキャンペーンをはじめたのである。それは下記の「俺の今後の生活費を払う気がないんなら自由にやらせろや」といった内容である。彼はGoFundMeにてこのように語る。

 

➖ 皆さんこんにちは。私の名前はVinceです。まずは皆さんが素晴らしい一日を過ごしていることを願っています。はい。本当にそう思っています。そして最近ライブ・パフォーマンス、ステージ上のエネルギー、使用しているビート等について多くのクレームを頂いています。確か「ロボットゲームのBGMの上でラップしてるみたい」と言っていた方もいました。その件に関してはお詫びを申し上げます。

この度、そのように感じる方のために、私たちは選択肢をご用意いたしました。GoFundMe.comにて、皆さんが私に2ミリオンドル(2億1200万円)を寄付して頂ければ、私は黙って世間の目から永遠に消え去ってやります。ええ、曲もインタビューも何も一生やりませんよ。でも、もしそれが出来ないのであれば、好きなときに好きなことを自由に私にやらせる選択肢を取ることもできます。私の前から消え失せるか、私のライフスタイルの資金を提供するか?選択肢はあなたの手にあります。どちらにせよ、感謝します。

このお金で私は下記を約束します
・パームデールに引っ越し
・ホンダの車を購入
・捕まってるホーミーたちに一年分のスープを購入
・子犬を購入

 

ハッシュタグ「#GTFOMD(Get the Fuck Off My Dick)」という名前で彼はこのようなクラウドファンディングキャンペーンを立ち上げた。「色々文句言ってくる人たちがいるけど、俺の生活をファンドできないんだったら自由にやらせろ」という旨をこのようにコミカルで笑えるキャンペーンで伝えたVince Staples。最初は非常に真面目な雰囲気を出し、「なんか困っているのかな?」と皆の意識を寄せつつ、正論でヘイターたちをフックでぶん殴るといった彼の「煽り返し」には脱帽である。もしこの「正論」を直接ツイッターに書いたとしたら、「リスナーのおかげで食っていけてるのに何を言っているんだ!」と怒った人もいるだろう。しかしこのように皮肉が効いたコントのような形で表現したからこそ、逆に彼の意図が伝わる形になっていると感じる。(Get the Fuck Off My Dickは直訳すると「俺のチ◯コから降りやがれ」であるが、ニュアンス的には「俺に執着してんじゃねぇ失せろ」という感じである)

このような「クレーム」に合わせ、全ての意見を取り入れることが市場を広げると思いがちであるが、実際にはインターネット時代には案外そうでもない場合も多い。特にVinceのように、ロイヤルティの高いファンに対して「狭く/深く」刺さっているアーティストにおいては、「ファン」ではない人に媚びることが逆に「ブランディング」の面でも命取りとなる。自分の作品を気に入って投資してくれていない人たちも含めた100人を20%満足させるより、自分の作品を深く愛して投資してくれる30人を100%満足させたほうがスモールビジネス的には正解の場合も多い。彼は口だけ動かす人が自分の人生において責任を取ってくれないのを知っているのだろう。だからこそ「俺の人生の責任とってくれるなら、ヘイター達の言う通り辞めてもいいよ」という意思表明なのである。笑えると同時に、巧みなキャンペーンであったと感心もした。特にVince Staplesは何よりも自由に表現することを重要視しているので、納得である。

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