Goldlinkのヒット曲「Crew」の軌跡から学ぶ。レーベルとA&Rがアーティストのポテンシャルを信じる重要性

 

 

非常にユニークなスタイル

を持っている若手ヒップホップアーティストと言うと、誰を思い浮かべるだろうか?私はTyler, the Creatorなどを思い浮かべるが、一人忘れてはいけないアーティストがいる。それがGoldLinkである。彼はDMVエリアのGo-Goカルチャーから影響を受けた「Future Bounce」という独自のスタイルを確立している。Playatunerでは、以前そんな彼にインタビューをしているので、こちらを読んで頂ければ、彼のスタイルのルーツがわかるであろう。

【GoldLinkインタビュー】GoldLink本人と探る地元DMVエリア。彼の音楽にどのような影響を与えたか?

 

2017年はGoldLinkにとって特別な年になった。彼のシングル「Crew」が大ヒットをし、なんと初のグラミー・ノミネートされたのだ。ビルボードHot100にて45位を獲得し、GoldLinkにとっては初のメインストリームヒットとなった。

 

彼のヒット曲「Crew」であるが、ヒット曲になるまで軌跡が非常に興味深いストーリーとなっている。この曲のヒットの裏にはレーベルのA&Rとマーケターの「想い」が込められており、普段はインディペンデントに活動するアーティストの事例を頻繁に紹介しているが、今回はメジャー・レーベルならではの成功例を紹介したい。

こちらの曲がどのようにヒットしたかは、DJBoothにて紹介されている。RCAのA&RであるDerrick Arohにインタビューをし、彼のストーリーを紹介している記事であるが、世間の「メジャーレーベル」のイメージからは少し離れている手法で売れているのだ。元々GoldLinkの「Crew」は2016年の12月にリリースされており、実はリリース当初はそこまで話題にはなっていなかった。リリース後は「普通」の結果として評価されていたこの楽曲だが、A&RのDerrickはGoldLinkが「特別」だと信じていたと語る。データでは見えない部分が重要だと語る。

 

➖データがあったとしても、その裏にある想いや、なんで人々がそのコンテクストを気にしているのかがわからないと意味がない。そもそもアーティストに対して熱意がないと、データというものは意味がない。彼らが信じていることを自分も信じるようになると、やっと「データ」というものが連れて行ってくれる場所が見えるようになり、そこにたどり着く方法を考えることができる。アーティストを信じていない場合は、そもそもデータなんて意味がない。どんな楽曲も「終わり」を見るだけだ。

 

GoldLinkが「特別」だと信じていたとしても、メジャー・レーベルとなると、結果を出す必要がある。結果を出す前に戦略などで空回りしてしまい、追い出されてしまうアーティストもいるなかで、Derrickは他のA&Rとは違うスキルを持っていた。それは彼自信もレーベルから「信頼」されていたということである。彼はChance the Rapper、Post Malone、Travis Scottなどがまだアンダーグラウンドな頃からレーベル内に彼らの存在を紹介していたため、レーベル内から「才能を見抜く人材」として評価されていたのだ。

そんな彼は「Crew」がリリースされた後も、常に楽曲とGoldLinkの動向を観察していたのだ。基本的にアーティストがどのように動くかをマネジメントするのではなく、「パートナー」としてアーティストの音楽をどのようにして売っていくか?を考え、実行することが「レーベル」の役割である。そのため、リリースした曲があまり話題にならなかった場合、すぐに次の楽曲にフォーカスする戦略も少なくはない。しかし「Crew」は非常にロングスパンで、機会を虎視眈々と狙っていたのだ。それはDerrickが「Crew」が特別な曲であり、今までのGoldLinkの楽曲と違い、メインストリームで大ヒットするポテンシャルを持っていることを信じていたからである。

そしてそんな虎視眈々と目を凝らしている彼らにとある道筋が見えた瞬間があった。それはGoldLinkがコーチェラにてGucci Maneと知り合った瞬間である。彼はその出来事をきっかけに、Gucci Maneをフィーチャリングした「Crew」のリミックスを実現するために働きかけたのだ。

 

そして彼はマーケティング部門の代表に、今何が起ころうとしていて、何故GoldLinkに投資することが重要か?ということを熱く説明したのだ。そのことがきっかけで、マーケティング部門の代表は既にリリースされてしばらく時間が経っている楽曲のプライオリティを上げる決心をしたのだ。普通であれば「あの曲良かったのに、あまり上手く行かなかったね」で済まされてしまうようなシチュエーションであるが、Derrickの観察眼と、彼の熱い想いがメジャーレーベルのマーケティングのプライオリティを変えることができたのだ。

RCAのデジタルチームはそんなGucci Maneが参加するリミックスを速やかにプロモーションする方法を実行した。彼らはSpotifyに連絡をし、巨大プレイリスト「RapCaviar」にてフィーチャーされるように働きかけたのだ。その結果、元々は2016年の12月にリリースされた「Crew」がおよそ一年経って、やっとビルボードHot100にてランクインしたのだ。

この事例からは
①レーベルのA&Rとしてアーティストの楽曲が持つポテンシャルを信じることの重要性
②一度上手くいかなかったとしても楽曲が話題になる機会は作れる
③音楽が消費されるスピードとは裏腹にロングスパンでヒットさせることができる
④現代の音楽のマーケティングにおいてフレームワーク的なものもあるが、アーティストによってプロモーションの仕方や戦略はかなり変わってくるので、一人一人にマッチした戦略を真摯に考える必要がある。

ということが学ぶことができる。メジャーレーベルというと、どうしても「コントロールされた」というニュアンスの事例が多く世に出回ってしまうが、実際にメジャーレーベルが合うかどうか?というのもアーティストによってそれぞれなのだろう。GoldLinkの場合は非常に相性の良い優秀なA&Rとチームとして動くことができているため、かなり合っているようにも思えるが、実際に同じRCAでもT-Painなどはあまり満足していないようだ。そしてなによりも「アーティストを信じる人」がいるかいないか?というのが非常に重要になってくる。TDEが「最強」となった理由も、アーティストへの信頼からきているのだろう。

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