【J-Wave】「エミネムのリリックと心の居場所」Playatuner代表がナビゲーターを務めるラジオ番組「Booze House」Vol.3まとめ #Booze813 #Jwave

 

 

J-Wave × Playatuner

10月からJ-Wave にて、Playatuner代表Kaz Skellingtonがナビゲーターを務める新番組「Booze House」が始まった。毎週木曜日26:00〜の30分間となっており、ブラックミュージックをはじめとする洋楽を掘り下げる番組となっている。

この番組ではJ-Waveとタッグを組み、番組で話した内容のリキャップをPlayatunerにて記事化していく予定だ。また、番組情報を発信していくツイッターアカウントは下記となっている。

 

 

「Vol.2 OutKastから始まるアトランタの台頭と分岐」のまとめはこちら

 

Vol. 3 エミネムと心の居場所

新アルバム「Kamikaze」もリリースされ、多くの人をディスしたという内容で話題になっているエミネム。Vol. 3ではあえて一切新アルバムの内容に触れずに、Kaz Skellingtonが影響された楽曲を紹介した。「昔のエミネムってなんでこんなに多くの若者に支持されてるの?」という疑問を持っている方にオススメしたい回となった。

 

1曲目:Rock Bottom

 

1曲目は「どん底」という意味の「Rock Bottom」という曲。メジャーデビュー・アルバム「Slim Shady LP」に収録されており、彼がDr. Dreに出会う前の人生の「どん底」についてラップをしている。

 

I feel like I’m walkin’ a tight rope without a circus net
サーカスのネットがない状態で綱渡りをしているようだ

 

というラップの出だしに共感したと語る。さらに下記のリリックが気に入っていると紹介する。

 

Minimum wage got my adrenaline caged
Full of venom and rage, especially when I’m engaged
And my daughter’s down to her last diaper, it’s got my ass hyper
I pray that God answers — maybe I’ll ask nicer

最低賃金が自分のアドレナリンを閉じ込める
毒と怒りで満たされていく、
特にもう婚約していて娘のおむつも買うことができない状況だと
神が答えてくれると願う…もう少し親切に聞いてみるか

 

この曲は自分の「どん底」の状況と、そのときに心に浮かんだ感情と悔しさを詳細に語ったリリックとなっている。娘もいるし、婚約もしているのに、全くお金がない状況、仕事に雇われたと思ったらその日中にクビになったこと、叫ぶほど怒っているのに涙が止まらないことなど、この楽曲で語られている「どん底」に共鳴した方も多いだろう。YouTubeのコメントを見ても、各々が「将来が見えずに暗い毎日を送っていた時期」を語っている。Kaz Skellingtonはこのように語る。

 

Kaz:この最初のラインもそうですが、自分も2年前に会社の状況がやばかったときや、精神的にもう無理だって思ってた時期に毎日聞いていて、この曲が共鳴してくれると感じていました。人間って一人ひとり人生は違うし、経験するものも違う。そのなかで、「これ大変だな」「これ辛いな」って感じることのレベルも一人ひとり違うなかで、「自分は今人生のどん底にいるんじゃないか?」と感じている人を多く救ってきた曲だと思います。

 

2曲目:Sing for the Moment

 

こちらもエミネムの人生経験から来ているリリックに多くの人が共感した曲であろう。この曲はエアロスミスの「Dream On」をサンプリングしており、アルバム「The Eminem Show」に収録されている。1stヴァースは家庭に居場所がない子供や、思春期の少年が義理の父親とウマが合わずに感情を爆発させ、暴力に繋がってしまうことについて語られている。2ndヴァースではさらに、その子どもたちがエミネムなどのアーティストの表現にいかに影響されてしまうか?自分が有名であることの悪影響についてラップをする。

世間のメディアや親からは、自分たちアーティストが子供たちに悪影響だけを及ぼしていると思われているが、音楽は子供たちが夢中になる「居場所」にもなるとエミネムは語る。この楽曲で特に心に刺さったラインを紹介した。

 

That’s why we sing for these kids who don’t have a thing
Except for a dream and a fuckin’ rap magazine
Who post pin-up pictures on they walls all day long
Idolize they favorite rappers and know all they songs

Or for anyone who’s ever been through shit in they lives
So they sit and they cry, at night, wishin’ they’d die
‘Til they throw on a rap record and they sit and they vibe
We’re nothin’ to you, but we’re the fuckin’ shit in they eyes

だから夢とヒップホップの雑誌以外、何も持っていない子供たちのために歌う。
壁に好きなラッパーの写真を貼って一日中眺め、全ての曲を知っているやつらだ。

人生でクソみたいなことがあって、夜中に泣きながら死にたいと思ってる子供は
ラップのCDを再生して、座ってそれを聴いて心が救われる。
親やクリティックには俺らは何者にも見えてないかもしれないけど、
彼らの目には俺らはかけがえのない存在なんだ。

 

何もない状況から、自分の人生/リアリティを表現し全てを手に入れることができるのが音楽であり、この音楽が多くの「居場所」のない子供たちを救ってきたとエミネムは語る。子供と「居場所」というテーマについて、Kaz Skellingtonはこのように語る。

 

Kaz:夢中になれる音楽が子供の居場所になるってのは、少し感じていて。むしろ人生において何かしら「居場所」がないと、前を向いて生きていくのが凄く難しいと思うんですよね。その「居場所」を学校や家庭に感じることができない子供たちも世の中には多くいて、そのような居場所となるような音楽を作ってきたアーティストは世界中で共鳴されるんだなって思いました。「命の恩人」となるアーティストは、自分の経験を素直に表現することによって、多くの人の経験と共鳴するんだなって。

 

「子供と居場所」というテーマは、Playatunerで何度も書いているのもあり、この楽曲の内容は自分にとっても非常に重要なものである。

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3曲目:Revelation

 

この楽曲も「子供と居場所」というテーマに沿った曲であり、エミネムが加入していたグループD12の1stアルバム「Devil’s Night」に収録されている「Revelation」という曲だ。この曲はPink Floydの「Another Brick in the Wall Pt.2」をサンプリングしており、サビでがっつり「I don’t wanna go to school. I don’t need no education(学校に行きたくない!教育なんて必要ない!)」と歌っているが、この楽曲のテーマは学校が必要ないということではないと感じている。

 

「Revelation」は、子供を「物」として扱い、居場所を与えることができない教育現場/家庭環境についてラップしており、そしてそのような環境で育った子供がどのような行動を起こすかについてラップした曲である。学校で起こる銃撃事件などの原因となる家庭環境/教育環境、そしてそのような教育環境で育った子供の心情を描いた曲だ。

このような内容に関してはPlayatunerでも何度か書いており、先程の「Sing for the Moment」と同じように、「心の居場所」の重要性を語っている。

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この重い内容だけではなく、エミネムのヴァースは韻の踏み方も素晴らしく、言葉の母音部分を伸ばす彼の韻の踏み方は、この時代のエミネムのフローを作る特徴でもある。「I’ve been praised and labeled as crazed, My mother was unable to raise me full of crazy rage」の赤の部分である「エイ」の発音を伸ばすことにより、彼はアグレッシブかつキャッチーなフローを作っている。彼の他の韻の踏み方を解説した記事もオススメである。

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4曲目:The Way I Am

 

このYouTubeにアップされているMVはクリーンバージョンなので、楽曲のメッセージも気持ちよさも半減しているが、1stアルバムでクレイジーな内容で急に有名になった後に、世の中で起こる多くの問題の原因としてアメリカ中から指を刺されるようになった理不尽などを歌った曲だ。四六時中追いかけてくるメディア、パパラッチ、ファンに嫌気がさしたという内容でもあり、非常にアグレッシブながらも彼の心情をさらけ出した曲となっている。

世の中で起こる多くの問題の原因としてアメリカ中から指を刺されるようになった気持ちをラップしているラインで、気に入っているラインがこちらだ。

 

And all of this controversy circles me
And it seems like the media immediately points a finger at me
So I point one back at ‘em, but not the index or pinkie
Or the ring or the thumb, it’s the one you put up
When you don’t give a fuck

全ての議論が俺の周りで巡っていて
メディアはすぐに俺に指を指す
だから俺も指を差し返すが、それは人差し指でも小指でも薬指でも親指でもない
差し返すのはクソくらえってときに出す指だ。

 

このラインは韻の踏み方もキャッチーであり、冒頭の「アー」と「イー」の発音を伸ばすことにより、リズムを覚えやすいものとしている。小学校のときにみんなでよくこのフレーズを歌っていたのを思い出す。

 

5曲目:Scary Movies

 

エミネムのリリックは「クレイジー」な内容が多いが、エミネムは独自の表現で自分がクレイジーだと言わなくてもクレイジーさを表現することができている。他のラッパーが「俺はクレイジーだ」で済ましてしまうところ、彼は非常に独特な表現で自分が何故クレイジーか?ということを示すことができている。そのクレイジーさが出ている楽曲で、私が最も好きなエミネムのヴァースが1999年にリリースされた、Royce Da 5’9とのBad Meets Evilの「Scary Movies」という曲である。

Bad Meets Evilと言えば2011年にリリースされた「Hell: The Sequel」を思い浮かべる方も多いと思うが、この1999年にリリースされた彼とRoyceの楽曲のエミネムのヴァースがなかなかぶっ飛んでいる。エミネムは出だしで、いきなりこのラインから始める。

 

The one man on the planet that’ll drive off of the Grand Canyon
Hop out of a Grand Am and land in it handstandin’

俺は、グランド・キャニオンから車で飛び降り、
その車からも落下途中に飛び降りて逆立ちで着地する世界唯一の男だ。

 

なかなか現実離れした、冷静に考えると意味がわからない表現であるが、クレイジーという言葉を使わずに彼がいかに「クレイジー」であるかを示した表現となっている。普通であれば思い浮かばないフレーズであるが、もし「クレイジーなことをしてください」という大喜利があったとして、実際にこれをやった人がいたら満場一致で「クレイジーだ…!」となるだろう。このような「よくこんな表現出てきたな」と感じさせるスキルがあり、初期エミネムの曲が聞いていて飽きない。

 

このような感じで、エミネムの最新アルバムには一切触れずに、好きなエミネムの曲を紹介/解説した回となった。今回は記事の更新が遅くなり、既に次週の放送も終わってしまったため、Radikoのタイムフリーでも聴くことはできないが、次週の「1972年にリリースされたファンキーなミミズから始まる高音シンセの世界」は現在Radikoのタイムフリーで聴くことができる。

メッセージはこちらのサイトの「Message」から、またはTwitterにて#Booze813をつけて投稿してください。

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