カニエ・ウェスト創業のレーベル「G.O.O.D. Music」CEO、Pusha Tが語る「アーティストレーベル」の素晴らしさ

 

 

アーティストが立ち上げた

レーベルというのは多く存在する。特にヒップホップ業界には「プレイヤー」をやりながらも、裏方としても業界を底上げしている人材が多く存在している。Jay-Z、Dr. Dreなどがロールモデルとなっている場合が多いと感じるが、アーティストとして成功した人たちのキャリアパスとして「レーベルを立ち上げる」という道はむしろ定番となっている。

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そんな「アーティストレーベル」のなかで、非常に強力な戦力を持っているのがカニエ・ウェストが2004年に立ち上げたG.O.O.D. Musicである。このレーベルには過去にはCommon、Kid Cudi、John Legendなどが所属しており、現在ではBig Sean、Kanye West、Pusha T、Cyhi the Prince、Desiignerなどが所属している。そして2015年にはアーティストであったPusha TがCEOに就任したのである。そんなPusha Tが語るG.O.O.D. Musicについて、紹介したい。

 

Pusha T:大体レーベルと契約するときって非常に長いプロセスを経てやっと動けるようになるんだ。でもG.O.O.D. Musicと契約したときは、カニエは「何が必要か遠慮なく言ってくれ。必要なことを彼ら(ビジネスサイド)に伝えたら、彼らがそれをやってくれるから、俺たちはこっちで創作に集中しよう」という感じだった。

契約アーティストという立場からCEOという立場になったのは、彼が俺の意見を尊重してくれるからだ。俺は音楽にたいしては確固たる理念/意見を持っている人なんだ。そして、俺たちがいかに素晴らしいチームかということも大きい。

 

これが「アーティストレーベル」の強みであろう。アーティストがくぐり抜けないといけない部分がどこであり、アーティストにとって本当に重要なことは何かを理解しているのだ。「創作」に集中できる環境を作り、必要なことがあれば遠慮なく言える関係性を築くことができているのだ。その関係性と環境が心的にもより良いものを結果的にプロデュースするのだろう。さらに彼はこのように語る。

 

Pusha T:世間はG.O.O.D. Musicをクリティカルな目で見ている。特にカニエに対しては厳しい目を持っている。そんななかで、俺はG.O.O.D. Musicに関することは全部ちゃんと発言するようにしている。それはチームとしてもそうだし、全アーティストに対しても今考えていることを伝える。例えばスケジュール的にBig Seanのことを話さないといけない時は、彼について忌憚なく意見を言う。それを全員同じようにやるようにしているし、それは組織全体を考えてやっていることだ。俺の役目は客観的であり、ベストな意見を彼らに伝えることなんだ。

ホスト:あなたは非常に正直な人であり、率直な意見を言う人です。エゴがあったり、自分の表現をするアーティストたちに対して意見を言うとき、どうやったらポジティブに受け取ってもらえるのですか?

Pusha T:まぁ俺が悪意があって言ってるんじゃないって全員が理解してるからできることなんだよね。俺はレーベルに所属しているやつらの全員を尊敬しているし、賞賛している。誰か一人に対して「何かができていない」って冷遇することは絶対にないんだ。

 

チーム全体に今考えていることを伝えることの重要性を語った。これは作品にたいしての意見だけではなく、CEOとして、組織に自分のヴィジョン/考えを伝えることでもある。CEOの最も重要な仕事は、社員/世間に自分のヴィジョンを伝えていくことなのだろうと感じる。さらにそれはステークホルダー全員に対してリスペクトがあり、全員平等に尊重しているからこそできることなのだろう。さらに彼はアーティストレーベルならではの強みを語った。

 

Pusha T:CEOとしてのゴールは「リリースされるべき作品を、なるべくちゃんとスケジュール通りに世に出す」ということだ。例えばBig Seanは超インディペンデントなマインドを持っている人だから、誰に何を言われようと自分の作業を進めることができる。逆に「The Life of Pablo」とかは絶対にコントロールできないものだった。彼と一緒に「The Life of Pablo」を12曲まで絞って、皆でハイファイブをした翌朝に19曲に戻ってたりするんだ。俺は彼のクリエイティブをコントロールできないし、コントロールしない。それが「カニエ」であり、彼のアートだからね。

G.O.O.D. Musicの一番素晴らしいところは、「アーティストにとっての自由」だよ。俺らの仲間になったら、クリエイティブに対して「◯◯はやってはいけない」って言うことはない。このクリエイターたちと一緒に作業できる環境は素晴らしいし、まるでクリエイティブ遊園地だよ。

 

これがアーティストレーベルであることの最大のメリットかもしれない。もちろんビジネスバックグラウンドが強い人たちがレーベルを水面下で支えていると思うのだが、「アート」を作って売上を上げるというビジネスモデルで運営するとき、最も重要なのはその「アート」を作る環境なのだと感じる。もしカニエに「ふざけんな!あの12曲でリリースしろ!」と制限をかけてしまったら、「作り手」が徐々にいなくなり、空っぽな知名度だけが残るのだろう。もちろん忌憚なく意見は言うが、それは制限をかけることではないのだ。

Pusha Tはここ数年の功績で一番嬉しいのがDesiignerのサクセスだと語っている。彼は常に新しい才能を受け入れることの重要性についても語っている。Pusha Tはアーティストとして爆発的に成功した瞬間がわけではないが、彼のロンジェヴィティ/キャリアの長さはアーティストであれば誰もがリスペクトするものを持っているだろう。彼のキャリアが何故長続きしていて、何故彼が常に業界の最前線にいるのか、このインタビューを見て理解できた気がする。

もちろんアーティストとしての自由は「アーティストレーベル」でなくても獲得することができる。それは「レバレッジ」を作ることであろう。その辺については、是非下記の記事を参照していただきたい。

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