エクスペリメンタル・ソウルバンド「WONK」スペシャルインタビュー

Interviewer: 渡邉航光
Photos: Shingo Ajikata


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エクスペリメンタル・ソウルバンド「WONK」を知っているだろうか。日本人離れした楽曲やライブが話題になっている世界水準のバンドであるが、待望のファーストアルバム “Sphere”が2016年9月14日にリリースされた。

本作は タワーレコードの選ぶ「タワレコメン」に選出されるなど話題を集めており、ブラックミュージックファンの間では今年最も注目されるバンドとなっている。

ジャズやソウル、ヒップホップなどをクロスオーバーに取り入れ、独自に昇華した世界水準の1枚となっており、Dian [MC from KANDYTOWN] や、Shun Ishiwaka [Drums] をはじめとした豪華客演陣も参加している。世界で同時的に進化しているブラックミュージックシーン であるが、WONKは 日本のブラックミュージック/ソウルシーンの新たな担い手となるであろう。
そんなWONKに話を聞くことができたので是非彼らの音楽に対するこだわりを感じて欲しい。

 

Interview – WONK


今作では直感的に良いなと思った音色だったり構成だったりを大切にしている

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➖簡単な自己紹介よろしいでしょうか。(画像左から順に)

Ayatake EZAKI(以下Ayatake): キーボードのAyatake EZAKIです

Kan INOUE(以下Kan):ベースのKan INOUEです。

Kento NAGATSUKA(以下Kento):ボーカルのKento NAGATSUKAです

Hikaru ARATA(Hikaru): ドラムのHikaru ARATAです。

 

➖WONKはどのようにして結成したのですか?これまでどのような道のりでしたか?

Hikaru: それぞれ僕が繋がりがあって、一緒にやりたいなと思って集めたのがこのメンバーですね。2013年に始まってからずっと作品は出してなくて、2015年の1月に1st EP「From the Inheritance」を出してからまた1年ぐらいかけて今作を作った感じです。
iTunes: From the Inheritance – EP – WONK
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➖WONKは「エクスペリメンタルソウル」と名乗っていますが、それはどのような意味合い/気持ちがあってそう呼んでいるのでしょうか?

Hikaru: 特に意味合いはないっすね。

Kan: 本当にそこにはあまり意味合いはなくて、キャッチーになる引きを考えてソウルって言葉を出している感じだね。

Ayatake: 当初からジャンルフリーみたいなことを言いたかったのだけど、今となっては、最近のフューチャーソウル的な文脈の上でとらえるのが、聴き手としては一番しっくりくるのかなって感じはしてます。

Kan: わかりやすさ重視だね。

 

➖今回のアルバム「Sphere」にはどのような意味やコンセプトを込めたのでしょうか?

Hikaru: 最初のアルバムってことで、セロニアス・モンクのミドルネームからアルバム名をつけていて、実は2曲目に入ってる「savior」って曲もセロニアス・モンクの曲からインスピレーションを得てるんですよね。それを自分たちなりに解釈をした作品ですね。

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➖そのようなインスピレーションも含め前作の「From the Inheritance」から変わったこともあると思いますがどうでしょうか

Hikaru: 今回は前作「From the Inheritance」とは全く違う作り方や音色を試せたらな、と考えながら作りましたね。

Kan: 前作はスタジオにとりあえず入って音を出そう!ってところからEPができているので、セッションの形式で作られている曲が多いね。今作は各々思い描いている音から土台を作っていって、それを各々が持ち寄って、家で「こんなのがいいんじゃないか」って感じで皆で考えながら仕上げていった。つまり即興重視ってよりは「作曲をした!」って感じだよね。

一同:うん。

 

➖なるほど、たしかに前回より曲っぽくなったというかなんとなくヒップホップ的な作り方をしているのかなと感じたのですが、作曲のプロセスはどのような感じでしょうか?

Kan: そうだね。実は結構サンプリングで作ったビートみたいなのが元となっている曲が多くて。そういう意味でプレイヤーとして出すフレーズというよりは、一旦理論とかは抜きにして直感的に良いなと思った音色や構成を大切にしている楽曲が多い。

Ayatake: ドラムのHikaruがビートを作ってきて、その上に僕とベースのKanさんでコード進行などを考えて、それからみんなでアレンジするみたいな感じですね。そして最後にKentoさんが歌詞やメロをつけるというプロセスですね。

 

➖これ自分たちでレコーディング/ミックス/マスタリングとかしたんですか?

Kan: そう。全部自前でやった。

 

➖レックもミックスも曲も全部凄いクオリティなのですが、これができる秘訣とかってあったりするんですか?

Kan: 実は自前でやったのは音源だけじゃなくて、デザインとかビジュアルイメージとかに関してもメンバー全員が結構こだわりを持ってやっていて。

Ayatake: レックの話だけじゃなくなっちゃうけど、メンバー全員がそれぞれ違う分野でプロフェッショナルで、それぞれの人を軸に全員で作品制作を進めているんです。

Kan: 音楽の理論とか形式を超えた良いサウンドを作ってくるのがHikaruだし、全体のデザインとかビジュアルイメージを考えるのがAyatakeで、最終的な出音とかレコーディングの過程とかは僕がやっている。そしてボーカルのKentoは料理が上手い(笑)

Kento: 俺だけ全然違うじゃん(笑)

Ayatake: Kentoさんはプロの料理人で、レコーディングとか練習が終わったときに料理を作ってくれるんですよ。

Kan: まぁ冗談だけど、歌詞とかは俺ら楽器隊は本当にノータッチで彼に全部任せてて。

Ayatake: あとはKentoさんが今までモデルをやっていた繋がりで、スタイリストの方が衣装をトータルコーディネートしてくれたり。

 

➖そういえば前に美容室行ってヘアカタログみたらKentoさんいました!

Kento: 大体ベリーショートのところいるんだよね。

Kan: そういう意味でWONKは、それぞれプロフェッショナルな領域がある人たちが集結してる。皆がそれぞれ自分の得意分野を持ちつつも、共通項をたくさん持っていて、結果全体に対して皆が自分の思いを言える環境になってるってところが良いのかな。

Ayatake: 全員のスキルを合わせると音楽+それぞれの得意分野で綺麗な五角形のレーダーチャートになるみたいなイメージですね。

メンバー全員がそれぞれの分野でプロフェッショナル

 

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➖曲もメンバーの印象も全部マッチしすぎてて、バンド内でぶつかり合っている情景が思い浮かばないのですが、皆さん趣味や嗜好はかなりマッチするのですか?

Kan: 実は全然そんなことなくて、僕らボツバンドとして有名で。まぁ有名ではないんだけど、EPの時も今回も散々ボツにしてきてるんだよね。音楽的な嗜好も全然ばらばらで。もちろん最低限のラインでの共通項はある上でだけど。

Hikaru: 僕はどちらかと言うとヒップホップとかビートミュージックよりで。

Ayatake: 僕はクラシックとジャズを掘ってて、逆にヒップホップのことはあまり知らないからHikaru経由でいろいろ聴くようになったり。

Kan: Ayatakeに関しては俺が凄く好きなエピソードがあって、前に「Earth, Wind, & Fireって知ってる?」って聞いたら「なんですかそれ?」って答えが返ってきて(笑)

一同:(笑)

Kan: そういう意味でも皆自分の好きなジャンル以外の音楽に関してはめっちゃDigってるってわけでもないんだよね。でも皆許容範囲がすごく広いし、ある程度の共通認識もあるから、“カッコよさ”の見解は一致するね。

Kento:俺も元々はずっと歌の部分しか聞いてこなかったから、最初のほうは「このピアノのフレーズ良くね?」みたいな会話がわからなかったんだよね。初めてバンドを組んだのがWONKっていうこともあって、このメンバーと出会ってそういうのも初めてちゃんと聴くようになった。

 

➖それで初めてがWONKって結構やばくないですか(笑)

Kento:正直言うと最初は本当に訳分からないところとか結構あったね。

Ayatake:他のメディアさんからもボーカルと楽器を同じように扱うバンドだとよく言われますね。

 

流行りのビート感を追い求める気はあまりない

 

➖近年は結構綺麗に分割されているカチカチなタイム感とかが主流な気がするんですが、その中でかなり人間味が強い自由なリズム感が目立ちますよね。

Hikaru: 結構カチカチなのもやりたいと思うんですが、表現したいリズムの幅が広いので、個人的には流行りのビート感だけを追い求める気はあまりないですね。ただのオフビートじゃなくてもっと変速的なリズムのループとかをやりたいですね。まぁ今作は結構よれてるのが多いですけど、特に人間味を意識してるってわけではないですね。

Kan: そういう「表現したいビートの広さ」って意味ではライブでは音源と違ってかなりビートを崩したりするよね。ライブでは「お、ここでビート崩すんだ!」みたいな、その場の驚きを大切にしたいって思ってる。

 

自由にできるはずの社会の中で逆にいろいろ見失っている人たちに対してポジティブなメッセージを

➖日本で英詩で歌っているブラックミュージックのバンドって凄く雰囲気重視な抽象的な内容の歌詞が多いと思うんですけど、WONKは意外に歌詞でストレートにメッセージを伝えようとする意思が読み取れるんですよね。歌として表現するにあたって伝えることのこだわりを教えてください。

Kento: やっぱり自分で歌ってそれを人に伝えるときに、自分で経験したことや生活の中で思ったことじゃないと伝わらないと思ってるし、心も入らないと思う。結構自分の人生だったり、他人の生き方、人生のあり方みたいなのを考えて書いているのが多いかな。

 

➖例えば「savior」とかも歌詞的にはマイナスな感情を最終的にプラスに変えて落とし込む、という起承転結ができているのが凄く印象的でした。音だけではなくてメッセージ性であったり「自由への執着」を感じます。

Kento: そうだね。まぁ音楽に限った話じゃないんだけど、世の中的に好きなことをやっていても受け入れられるって空気感が段々できてきている気がする。特に最近って、世界的にも、皆企業に勤めて、終身雇用の中で生きていくって人生しかないわけじゃないと思うんですよ。もっと選択肢があるなって。でもそういう自由にできるはずの社会の中で、逆にいろいろ見失っている人たちもすごく多いと感じていて。そういう人たちがポジティブになれるようなメッセージを伝えたくて。

 

➖そういうところは結構私と考えが近いかも知れません(笑)そういう周りの環境に対してメッセージを伝えたいという思いが、ロックンロール、ファンク、ヒップホップなどブラックミュージックの本質的なエッセンスを感じる一因なのかなとも思いました。日本でブラックミュージックをやっているバンドとの違いはそういうところにも感じました。アルバム6曲目に入っている「h.v.c.」とかまさに90’sのコンシャスヒップホップみたいな歌詞でしたし。

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 自分たちが今できる新しい音楽ってなんだろう

➖ブラックミュージックを昇華したいというフレーズを見たのですが、WONKにとってブラックミュージックを昇華するとはどういう意味でしょうか?

Kan: もちろん黒人文化から出てきた音楽をリスペクトしているというのもあるけど、実際には黒人だけがブラックミュージックをやっているわけじゃないのが現状だなって思っていて。しかもそれが黒人の後追いとかじゃなくて、そのような音楽を聴いて育ち、その上で「今の時代に自分たちはどのような物を表現するか」ということを考えて、実行しているバンドが最近すごく多い感じがする。例えばHiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)とかはオーストラリアにいながらも、ブラックミュージックの良さとオリジナリティを組み合わせていて、僕らもそのようにありたいと思う。

Hikaru: だから、実は自分たちから“ブラックミュージック”をやっている、という風には言いたくなくて。各メディアでは日本のブラックミュージックシーンの新たな担い手というフレーズが使われているし、自分たちでも便宜上そのままの言葉を使っているけど、僕らとしては、黒人の音楽にただ近づこうという意味での“ブラックミュージック”をやっているつもりはないですね。

Kan: そういう意味で昔から聴いてきた音楽を自分たちなりに解釈して、その上で「東京にいる自分たちが今できる新しい音楽ってなんだろう」ってことを考えてやっている。そういう意味で「昇華したい」ということかな。

 

➖アルバムでいろいろな人とコラボしていますが、どのような繋がりでコラボに至るのですか?WONKはあまりシーンに属している感じがしないので

Ayatake: 属せるシーンがない気はしているのですが、ジャズのシーンやヒップホップのシーンにはつながりがあるので、そこでカッコいい人たちと出会ったり、一緒にやろうってなったりはしますね。どのシーンにいたい、どのシーンでやりたい、世代感を出したいというよりは、完全に「人」を意識してます。

Kan: この人なら間違いない、って思える「人」をただ呼んでるだけではあって、もちろんその人たちには属しているシーンとかがあるから、そういう経路でいろいろ繋がったりする。WONKは最先端の音楽をやっている人たちに嫉妬するタイプだから、多分そういう意味でシーンに属すことはないのかも知れない。

 

 

➖次にコラボしてみたい人とかはいますか?

Hikaru: ネタバレになっちゃうけど、兵庫のKIANO JONES君っていうラッパーとコンタクトを取っていて、一緒にやってみたいなと。

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あとはフランスのKodämaっていうユニットのKialaちゃんってボーカルの人と次回作は何かやろうと話していますね。

 

➖レーベルのepistrophなのですが、これは自主レーベルですか?

Kan: お、これ多分epistrophについて話すのは初だと思う。

Ayatake: 一応自主レーベルなのですが、まだ僕らがやっているって公表はしてないです。というのも、バンドを通して音楽的な価値を提供するだけではなく、アパレルだったり飲食だったり他の部分にもチャンネルを持ちたいねって感じで、音楽レーベルにとどまるつもりがなく…まだ構想段階なので。

 

➖今後他のアーティストをこのレーベルからリリースする予定はあるのですか?

Hikaru: まぁいろいろ考えてはいるけど、ただの音楽レーベルというより、どっちかというとブランドにしたくて、服とかも作っていきたいなと思ってます。

Ayatake: いろんなことをやってる人が集うハブとして、音楽もあれば服もあるし、ライブも出来ればファッションショーも出来れば飲食まで提供出来る、みたいな場が作れたら最高だねって感じで。

Kan: まぁまだ整備とかされていないから情報は公開してないんだけどね(笑)

 

➖最後に何かアナウンスとかあれば!

Kan: 「Sphere」を買ってください!

1st Album “Sphere” 2016.9.14 ON SALE!!
(TOWER RECORDS, HMV, Village Vanguard, iTunes Store, etc.)
GUEST: Dian(MC), Shun Ishiwaka(Drums), Kohei Ando(Sax&Flute), Onetwenty(MC), Tweli G(MC), Patriq Moody(Tp), JUA(MC).
Detail→ http://www.wonk.tokyo

 

 

 

ありがとうございました!

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