J. Coleの「4 Your Eyez Only」の全曲がビルボード40位以内にランクインした現象の理由を考察

Writer: 渡邉航光(Kaz Skellington)


 

jcole-4youreyezonly

 

J. Cole – 4 Your Eyez Only

Playatunerでは既に数回とりあげている通り、この作品はJ. Coleにとっても特別なものだ。自身の目線と亡くなった親友の目線がパラレルとして描かれているこの作品は、アルバムが一つの映画のようになっている。

そんな彼の「4 Your Eyez Only」は全曲がビルボード40位以内にランクインしたのであるが、今までそんなアルバムはあっただろうか?このアルバムからはシングルもまだリリースされていなく、アルバムに収録されてもいない「False Prophets」と「Everybody Dies」もランクインしている。

なぜこのような現象が起きているのだろうか?アルバムの内容から考察をしてみた。

 

ストリーミング時代のアルバムの役割


CD時代とストリーミング時代では明らかに音楽の消費の仕方が変わってきている。CD時代は曲数を多く収録することが主流であり、その中には多くの「捨て曲」というのもあった。しかしストリーミング時代では数年に一度アルバムを出すより、シングルを小出しにするほうが有力と言われてきた。先日書いた「Nipsey Hussleのインディーズでの成功要因」を研究しても、確実にシングルを小出しにするのが主流だと言えるだろう。

しかしJ. Coleの新作は「アルバム」というものに、一味違う価値観を付け足したと感じる。何故このアルバムの全曲がビルボードにランクインしているのだろうか?

それは曲数を多くし、パッケージとして売る「アルバム」とはまた違う「アルバム」の形を提示しているからだと感じる

アルバム最後の曲であり、タイトル曲にもなっている「4 Your Eyez Only」の最後のヴァースにて明かされる亡くなった友人の娘にたいしてのメッセージ」を聞くことにより、これがその友人のライフストーリーだと理解することができる。アルバム最後の曲を聞いた後、このメッセージを正しく理解するため、その友人がどのような人生を送ったかを再確認するため、さらにはJ. Coleとどのような関係性だったのかを理解するために、全曲聞きなおしたくなるのだ。もちろん売れた背景には単に曲が良く、J. Coleのファンが多いだけということもあるかもしれない。しかしこのアルバムはまさにオチが素晴らしい映画を見たあとに、伏線を再確認するために再度見たくなる感覚と同じなのだ。

私が考察した結果、「アルバム」という作品形態で、映画のような感覚を体現したからこそ起こる全曲チャートイン現象であると感じた。ストリーミング時代にはシングルを小出しにするのが主流のなかで、曲同士の内容的な繋がりを大切にした「アート」を作ったからこそ、この功績を残すことが出来ているのではないか。最近だとまさに「スター・ウォーズ:ローグワン」を見たあとに、旧3部作を再確認したくなる現象と似ているのかもしれない。

このアルバムがどのような内容なのかを知りたい方は是非この記事を読んでほしい。

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington)カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼、Playatunerの代表。FUJI ROCK 2015に出演したumber session tribeのMCとしても活動をしている。