自然災害とWu-Tang Clan。作品を失っても進み続けた彼らの強い精神

 

 

何があっても毎日進み続ける

逆境を乗り越え、成功しているアーティストたちを見ているとそのような共通点が見えてくる。何もない状態から這い上がってくるアーティストや、1stアルバムにて「俺は悲劇を勝利に変えるチャンピオンだ」とラップしたカニエ・ウェストも大事故の後に進み続けた1人だ。

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そんな「進み続けた人たち」について今回は紹介したいと思う。このような「逆境を乗り越えた」というフレーズを聞くと毎回思い出すのがWu-Tang Clan(ウータン・クラン)だ。彼らは「自然災害」という逆境を乗り越えたのである。

実は36 Chambers、Method ManのTical、GZAのLiquid Swords、RaekwonのOnly Built for Cuban Linxの曲たちは、ほぼ同じスタジオで制作されているのだ。そのスタジオとはRZAが作ったNYのStaten Islandに立ち上げた36 Chambers Studioである。彼は昔の伝説的なレコードレーベルと同じように、グループ特有のサウンドが欲しかったため、グループの全ての曲をそこでレコーディングすることに決めたのだ。Wu-Tangの1stアルバムがリリースされ、その後グループメンバーのソロアルバムをリリースしようと思った矢先、予期しなかった災害が起きた。それは洪水である

1996年のVIBEマガジンにてRZAはこのように語っている。

 

RZA:実は最初のWu-Tangのアルバムがリリースされた時、既にメンバーの他のアルバムも準備できていたんだ。皆の名前が書いてあるファイル(恐らくフロッピーディスク)があって、皆が15個ずつビートを選んだんだ。でも洪水で300曲ほどのビートが失われた。絶望的だった。

 

そのため、Method ManのTicalに収録されているBring the Painなどは、私たちが聞いているバージョンはオリジナルではなく、実際にはRZAが失ったビートを再現したものらしい。ソロアルバムの大半を失ったが、リリースが決まっているMethod ManはなんとWu-Tangのツアー中にこの作品をレコーディングしたのである。そのためRZAとMethod Manだけ、ツアーの空き時間にスタジオに入り、アメリカ中に街にてレコーディングをしたとも語っている。

さらにInspectah Deckに関してはなんと2度目の洪水にもやられてしまったのである。

自分のソロアルバムがレーベルの都合により、数年も延期されてのに加え、再度RZAのスタジオが洪水にやられてしまったのだ。フロッピーが全部水浸しになってしまったの彼の1stアルバムであった。さらにはWu-Tangの他のメンバーは既に2ndアルバムをリリースしそうになっており、Method ManやRaekwon等のフィーチャーも実現しなかったのだ。2年以上の延期を乗り越え、プロモーションもない状態でゴールド認定されたのだ。

 

Deck:もし俺のアルバムで、皆がサポートしてくれてたらプラチナ認定された可能性もあったと思う。皆のソロが売れたとき、全員がサポートし合っていたけど、俺の番になったときにはサポートを得られなかった。全てはタイミングだから、誰かのせいにするつもりはない。アルバムも延期になったが、俺は文句も言わずにやってのけた。

 

彼はこのように語る。洪水で素材を全部失い、ツアー中にレコーディングをしたMethod Man、度重なる延期の末、2度目の洪水に襲われアルバムを失ったが文句も言わずにやってのけたInspectah Deck、300曲以上のビートを失っても作り続けるRZA…彼らの強い「精神」から学べることがあると感じる。まさに「進み続ける精神」であり、自分の人生が辛い局面にぶつかったときに思い出したいエピソードである。「自分でやる精神」については下記の記事もオススメである。

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