インディペンデントに活動する心意気とは?巨大なファンベースを築いたHopsinから学ぶ「段階を踏む」ことの重要性

 

 

インディペンデントに活動し

自分の表現にコミットするラッパーたちを応援するためにPlayatunerではインディペンデントな「グラインド」の事例を頻繁に紹介してきた。もちろんレーベルと「チーム」として世の中に自分に音楽を広めることも素晴らしいことであるが、自分が今あるリソースを最大限に有効活用し、試行錯誤する心意気にも美学があると私は感じている。特に近年ではインターネットの発達により、以前よりインディペンデントアーティストにとって活動がしやすい環境になった。下記の記事はまさにそのようなアーティストを応援するようなものである。

現代のアーティストにとって理想な「契約」をRussから学ぶ。アーティストが搾取されないために

 

インターネットの発達により活動はしやすくなったが、それは活動が楽になったわけではない。誰でもできるプラットフォームになったからこそ、さらに露出する人の数は増え、そのなかで頭角を表さないといけないのだ。そんなインディペンデントなラッパーとして頭角を現しているのがHopsinである。彼は次世代Tech N9neとでも言うべきだろうか。現在はマネージャーとの仲違いで消滅してしまったが、Funk Volumeというレーベルを自分で運営しており、インディペンデントにゴールド認定されたり、億単位の金額を売り上げていた。現在はその成功をさらに会社として改善し、Undercover Prodigyというレーベルをはじめている。

はじまり

そんな彼は元々Eazy-Eが亡くなった後のRuthless Recordsと契約していたのだが、アルバムもリリースされずレーベルが何もしてくれない状況から「自分で何かしないと…」と焦りを感じ、自分の「レーベル」をはじめたのである。彼は2009年にFunk Volumeを正式に立ち上げたのだが、彼はこの度インタビューでインディペンデントに活動しはじめた当時の心意気をこのように語っている。

 

➖ Ruthlessで色々と予想外なことがあって、「次は自分でやるぞ」となったときの心境

Hopsin:俺には自分が欲しいものをゲットするまで止まらない習性があるんだ。だから俺は失敗をすると、周りのものを注意深く観察するようになる。まるでロボコップのように見えるもの全てを分析するんだ。Ruthlessの契約が上手くいってない状態でも、頭のなかで様々な考えが巡って「Myspaceは使えるな…YouTubeはまだまだよくわからないサイトだ…」と頭のなかが色々な要素でパニックになっていた。

とりあえず自分のMVを作らないといけないって思っていた。俺は白いコンタクトをつけてラップをしていたし、俺の頭のなかのヴィジュアルを人々に見てもらえないと、リスナーは俺の音楽にエンゲージしないと考えていた。でもRuthlessは何もしてくれないし、ビデオも作ってくれないし、自分もビデオを作ると言ってもカメラも知識もないんだ。これは2005年とか2006年の話だ。

 

所属しているレーベルが何もやってくれないから、自分でやらないといけないと感じたHopsin。彼は頭のなかで様々な選択肢を考えると同時に、パニックで状態にもなったと語っている。そして「MVが必要」という結論にたどり着いたが、自分がビデオについて何もしらないことにも気がつく。

 

Hopsin:友達にビデオやってるやつとかいなかったし、当時はまだインスタとかもなかったから、そういう人材を見つけるのも一苦労だったんだ。だから俺は「自分でカメラを使えるように勉強しないといけない」と強く思ったんだ。

カメラ屋さんなんて行ったことなかったから、ネットで調べて足を運んだんだ。Ruthlessとの契約金がまだ少し残っていたから、それを予算にカメラを買おうと思った。そしたら店員に「どんなISOのやつが欲しいですか?」とか言われて、「いやまじで何もわかんないからとりあえずカメラをくれ」って伝えるんだ。そしたら「◯◯のレンズがあってどれにしますか?」とか言われるから「もうなんでもいいから!とりあえず予算内のカメラを選んでくれ!」って感じだったよ。そして買ってからカメラの機能を理解しようと試みるんだけど、それだけでもう頭痛が起こるぐらいめんどくさかったよ。家に帰って撮ってみたら、なんか映像が暗いから、「なんでこんな暗いんだ…」と思ったら撮影用のライトが必要って知った。母さんからもらった電球ランプを使っても上手く撮れないから、もっと試行錯誤して…そんな感じだった。

 

とりあえず、足を運ぶ。そして「分からない」ことを恥ずかしがらずに、人からも情報を集める。わからないことがあったら、納得いくまで試行錯誤を繰り返す。このようにして自分で撮影をするようになったのだ。

 

Hopsin:撮り終わったら、次は編集プログラムが必要だと知った。「は?編集プログラムってなんだよ。撮影しながら編集できないのか?」って思ったよ。んでAdobe Premierをゲットして、使ってみたら意味が分からなすぎて、心がFuckされている気持ちになった。「俺は大学行ってねぇからわかんねぇよ…」という気持ちにもなった。でもありがたいことに、YouTubeで13歳の子供がチュートリアルをやっていたから、それを真似していたら段々いい感じに編集ができるようになってきた。

そしてその二年後、俺は最強になっていた。カメラ屋に行って「ダン調子はどうだい!今日は◯◯の機能がついたこれをくれよ!」みたいな態度も取れるようになった。俺は全てのことを注意して調べるようになっていた。

 

編集プログラムのハードルもあったが、調べてどうにか編集できるようになったのだ。ネットを駆使をし、徐々に自分がイメージしている作品を作れるようになったと語る。二年後にはカメラ屋さんとも仲良くなり、専門用語で会話もできるようになったのだ。

 

 

Hopsin:気がついたら、俺は自分がやりたくもないことを、やれるようになっていた。当初は俺はラップだけをやって、ビートも編集もやりたくなかったんだ。でも俺は「自分がスタジオにならないといけない」と思って、実際にそうなった。俺は大きいレーベルと契約したいって思っていたけど、自分が大きいレーベルになった。当初は予想もしていなかったけど、「Ruthlessがいつかどうにかしてくれるだろ…」って思わなくて良かったと感じる。

たまにラッパー志望のやつとかで「俺はビデオを作れないんだ…カメラもないし」って言ってるやつがいるけど、そういうのは腹が立つんだ。だって皆俺よりiPhone持ってるじゃん。自分が使ってたカメラよりよっぽどハイスペックだし、ハングリーさが足りないんだ。自分が持っているものを最大限に活かす必要があるんだ。最近気がついたのは、成功している人たちは、みんな何かしら複数のスキルを持っている。それは「自分でやらないといけない」という精神が産んだスキルだ。表からは、その人が裏で何をしているのかが見えないからね。

 

自分がやりたくないこともあったが、ラッパーとして成功するために、様々な分野を勉強する必要があったと語った。気がついたら、自分には様々なスキルがついており、自分で全てを回せるようになっていたのだ。これはインディペンデントに活動するアーティストにとって非常に重要なことである。もちろん様々な分野のスキルをもった仲間がいたら、自分はラップに集中できるかもしれない。しかし最初から自分を認めてくれる人など、なかなか存在しないのだ。「今の時点で自分のポテンシャルを認めてくれる人は自分だけ」というのがインディペンデントに活動しはじめるときに重要な心意気なのだろう。

これは徐々に「段階を踏む」ことの重要性を語っているものでもある。既に成功している周りのアーティストのクオリティと比べることは激励にも繋がるかもしれないが、「俺も頑張ろう」というモチベーションではなく「何かが起こって、このクオリティになれるような手助けがくるかもしれないから待とう」という心境になるのが一番危ないのだ。「何かが起こって」という箇所が何かしらに該当するとしたら、それは「自分が出来るリソースを最大限に活かし、今可能な作品を出し続ける」という「段階を踏むこと」であろう。Hopsinの曲もMVも、当初はクオリティ的には決して高いとは言えないものとなっており、彼がいかに成長したかも見えてくる。徐々に段階を踏まないと、将来来るべき「手助け」や「ポテンシャルを認めてくれる人」も一向に現れはしない。そのようなメンタリティで活動するときに、KPIという概念が重要になってくる。そんなKPIという概念は下記の記事がオススメである。

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