MF Doomがマスクをつけている理由を語る。その理由から考える「悪役キャラ」とは?

 

 

 

メインストリームヒップホップ

ではないにも関わらず、まさにカルト的ファンベースとともに「スーパーヴィラン」の世界観を作り上げてきたラッパー/プロデューサー「MF DOOM」。リリシストとしても評価されている彼であるが、彼のトレードマークといえば「悪役」のマスクであろう。(彼のグッズはこちら

そんな彼が「マスクをつけている理由」を語っているRed Bullのインタビューを紹介しつつ、彼の「世界観」と「悪役キャラ」について少し考えてみたい。

 

➖ 何故マスクをしようと思ったのですか?

Doom:俺のマスクか?なんかヒップホップが「音」ではなくて「見た目」重視になった時期があると思うんだ。昔はMCがどんな見た目をしているかなんて、ライブにいかないとわからなかったんだ。逆にビデオとかを見る前にライブで見ていたりすることもあったけど。

だから昔は「見た目」じゃなくてレコードの良さだったり、スキルで判断していたんだ。でも金儲けのための「ビジネス」になってきて、「音」を売るのではなく、「見た目」でどうにかしようとするアイディアが生まれた。

 

ヒップホップというものが段々「MCとしてのスキル」ではなく、「見た目」などの「音」以外のエッセンスで売ろうとするものになってきたと彼は語っている。さらに彼は自分の「マスク」が何を象徴しているかをこう理由づけた。

 

Doom:大切なのはそのアーティストが「どんな音を出すか」だ。だからこのマスクはアーティスト「人」として売ろうとしている業界にたいしての反乱を象徴している。自分の顔が売れるとかはどうでもいいんだ。

だから自分の見た目/性別/国籍/人種とか関係なしに、自分の心を出したい人であればこの「悪役」マスクは誰がつけてもいいんだ。

 

彼のマスクは「業界にたいしての反乱」の象徴と語るMF Doom。彼は内面/スキルを見て欲しいがためにこのような格好をしているのだ。しかし、ここで「悪役キャラ」MF Doomのファンであれば彼の言っていることに対しての素晴らしく美しい「バラドックス」に気がつくであろう。

下記はこちらのHipHopDXのMF Doomブレイクダウンでも語られている内容と少し被るのだが、彼はMF Doomという「スーパー悪役」以外にも、「ヒップホップが禁止されている別次元の世界から地球に降り立った“Viktor Vaughn”」というキャラや、まさにゴジラが由来の「King Geedora」というキャラを演じ、巧みなストーリーテリングをしていくのだ。そう、彼は様々なキャラをラップという手法で演じるキャラづくりの天才なのである。もちろん彼の場合はサウンドと「スキル」も備わっている。

彼はインパクトのあるマスクと世界観によって、逆に「見た目」を重視する業界に反乱を起こしているのだ。キャリアの初期に組んでいたKMDというラップグループもレーベルに見捨てられ、一時はホームレスになったMF Doom。彼は見た目を重視する業界へのアンチテーゼとして、あえてインパクトのある見た目の「スーパー悪役キャラ」として生まれ変わったのだ。自分が批判していた事象を、自分のために使うという「パラドックス」を体言しつつ、悪役キャラとして生まれ変わる…まさにアメコミの強力な悪役を彷彿とさせる。いつの時代もカリスマ性のある「悪役」は上手く「パラドックス」を使用するのだと感心した。

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