Nasがハーバード大学の教授に「It Ain’t Hard to Tell」のリリックの一部を解説する。解説されたリリックを紹介

 

偉大なリリシスト

ポエットと言えば誰を思い浮かべるだろうか。やはり大多数のヒップホップヘッズはNasを思い浮かべるだろう。Nasと言えば以前「Nasのビートを選ぶセンス」という記事にて彼のリリシズムを大絶賛したが、是非こちらも読んでみて頂きたい。

Nasのビートを選ぶセンスが悪いという議論。皆さんはどう思いますか?

 

以前NasのIllmaticを含む4つのヒップホップ作品が、ハーバード大学の書庫に永久的に保管されることが決まったが、またもやNasがアカデミックな分野に登場した。Nasは2013年にハーバード大学の特別研究員的なポジションに任命されており、この度彼はハーバード大学のポエトリー教授のElisa Newに「It Ain’t Hard to Tell」のリリックの一部を解説したのである。

 

まずは3rdヴァースを声に出して読んだのだが、そこで注目すべきラインをいくつか説明をした。(ついで色付きで韻も解説しておきました。)

This rhythmatic explosion
Is what your frame of mind has chosen
I’ll leave your brain stimulated, niggas is frozen
Speak with criminal slang, begin like a violin
End like Leviathan, it’s deep; well, let me try again
Wisdom be leakin‘ out my grapefruit, troop
I dominate break loops, givin’ mics men-e-strual cycles

このリズムの爆発は、お前の心のフレームが選んだものだ。
脳みそを刺激し、それによって彼らは凍る
犯罪者のスラングで喋り、バイオリンのように始まり
リヴァイアサンのように終える。深い、もう一度やらせて頂く。
俺のグレープフルーツから漏れ出す、Troop
俺はブレイクループを支配をする、マイクに月経周期を与える

 

こちらのヴァースのなかで彼はず「Wisdom be leakin’ out my grapefruit, troop(俺のグレープフルーツから知性が漏れ出す、Troop)」という箇所を解説をした。グレープフルーツとは人間の脳みそに例えたものであり、彼の脳みそから知性が漏れていると語り、いかに彼のリリックが深くストラクチャーされているかを説明した。Troopとは「My Guys」のように「仲間」を呼ぶため意味合いがあり、グレープフルーツと韻を踏んでいる。

さらには彼は「Dominate Break Loops(ブレイクループを支配する)」という箇所を解説した。ブレイクループとはヒップホップがブレイクのループで出来ていることにより、「用意されたステージ」を表している。歴史上の詩人たちは用意された形式のなかで、いかに素晴らしい表現をするかにフォーカスしてきた。Nasにとってその形式とはブレイクのループなのである。マイクに月経周期を与えるというのは、マイクから血が流れるほどのスキルを提示し、「周期」を「ループ」のサイクルという意味にかけているのだ。

さらに動画で説明はされていなかったが、個人的には「begin like a violin, end like Leviathan(ヴァイオリンのようにはじまり、リヴァイアサンのような終える)」という箇所が気に入っている。リヴァイアサンとは旧約聖書に登場する海中の悪魔的な怪物である。ヴァイオリンのように静かなスタイルもできるが、挑戦者の全てを破壊するリヴァイアサンのようなスタイルもできると彼はこの一文で伝えているのだ。

Nasのリリックは深く考えないと理解することが難しいものが多く、彼がポエットとして評価されているのもこのような要素が大きいと感じる。ケンドリックに関しても同じようなことを書いたが、NasのIllmaticは100年後も、私がシェイクスピアを研究するように研究されていると感じる。下記のAb-Soulのポエトリーも素晴らしいので是非チェックしてもらいたい。

Ab-Soul「Evil Genius」に隠された悲しい実話と素晴らしい言葉遊びを考察

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