Chance the Rapperのフェスでのライブ動画から読み解く。フェスの本質と役割とは?
レジェンドをカバー
するのはもはやアーティストにとっては定番である。以前Smif-N-WessunのTekにインタビューをしたときにも「カバーをすることによって、俺らは愛を広げてるんだ」と語っていた。そして昨日今日で話題になっていたのが、Chance the RapperのBonnarooでのパフォーマンスである。彼はなんと真のOG、Dr. Dreとスヌープの「Nuttin’ But a “G” Thang」と、OutKastの「Hey Ya!」をカバーしたのである。両方ともPlayatunerでは何度も取り上げてきたアーティストだ。
この動画は他社メディアさんでも、広く取り上げられており、Chanceのパフォーマンスを絶賛する声が多かった。しかしパフォーマンス以外にも絶賛すべき点があると感じる。それは「最前列で手話をしているスタッフ」の存在である。そう、音楽フェスに「手話」をするスタッフがいるのである。
2ヶ月ほど前、スヌープ・ドッグがフェスに出演した際に、手話スタッフがスヌープのリリックを伝えている動画がSNSにて拡散されていたのもあり、このような光景を見たことがある方もいるだろう。実は近年コモンなケースになっていると感じる。Press Enterpriseが紹介したこの記事では「フェスにおける手話の役割」というところがカバーされているので、引用しつつ紹介したい。
手話スタッフとフェスの役割
フェスにて手話が行われるようになってきたのが2008年頃だと紹介されている。音楽や歌詞を手話で表すだけではなく、アーティストのキャラクターを演じきることが重要になってくるのだ。心を込めたエアギター、ビブラートを表す手の表現、観客へのリクエストなどを全て体現するのだ。
「これは手話だけではないんだ。アーティストの感情、音楽を”魅せる”必要がある。」
「起こっていることをビジュアル的に表現する。」
「音楽は耳で聞こえる以上の体験なんだ。」
実際に手話スタッフをやる方たちはこのように語る。今年のコーチェラでも手話チームが、様々なステージを担当し、「体験」を作り上げるために努めたという。
ここで気になるのが、ステージの準備である。近年ではオファーを受けることも多いが、フェスには基本的にリハーサルといったリハーサルはない。そんななか、彼れは事前に歌詞、ライブ動画、音源を研究し、アーティストの動きやパフォーマンスを頭に叩き込むのである。実際、セットリストなどは直前に渡されるので、まるで「大学の試験のようだ」と語られている。
このようなことからも、「フェス」の役割が「音」だけではないということがわかる。誰もが楽しめる、異世界/非日常の「体験」を与えることが「フェス」の役割なのである。実際には耳が聞こえない方にも様々なレベルがあるので、手話スタッフさえいれば、振動や全体のヴァイブスで盛り上がることができるという方もいるようだ。「フェスティバル」という言葉からもわかるように、音楽だけではなく、老若男女が非日常の「ワクワク」を感じることができる空間を作る。そのような努力が伝わってくる。アーティストと手話スタッフはある意味「バンドメンバー」のようなものであり、最高の非日常体験を提供するための重要なパートナーなのだ。
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