Travis Scott「ライブ中に携帯見るな」ライブ中のスマートフォンの使用とシチュエーションについて

 

 

ライブは生の空間

という意見がほとんどだろう。以前Denzel Curryの発言から「ライブで曲を流すだけでラップをしなくてもいい風潮」という記事を書いたが、やはり生の声を聞きたいという方は多かった。むしろその「生演奏」を感じることがライブの意図であり、それを楽しみにしているので、楽曲を流して盛り上げるだけのライブは「ライブ」ではないのかもしれない。

ライブではラッパーの生の声を聞きたい?「ライブで曲を流すだけでラップをしなくてもいい風潮」についてDenzel Curryの発言から考える

 

そんなライブ事情であるが、「生感」を楽しむと言ったら他の議論も存在する。そのなかでも最も大きい議論が、「ライブ中のスマートフォンの使用」である。これは度々ネットでも議論されていることであり、アーティストによっては非常に嫌う人もいる。そんななか、Travis Scottがライブ中に語ったことを紹介したい。

 

お前らゲートの後ろにいるやつらで携帯をイジってる奴ら、帰れよ。そんな感じで携帯イジってメッセとかしている奴らにはVIPでのショーを与えられない。

 

まずこの動画を見たときに率直に思ったのは「この鳥に乗るセット、クソやばいな」であったが、そこは一旦スルーして彼の発言について考えたいと思う。彼はVIP席でスマートフォンをイジっている人たちが気に食わなく、このような発言をしたわけであるが、この発言には様々なコメントがついている。

・VIP席のお金払ってんだから別にいいじゃん

・VIPはトラヴィスが招待したゲストだから怒ってるんだろ

・テキストメッセージじゃなくて、スナップチャットにアップしてるんでしょ

などのコメントが投稿についており、アップロードしたヒップホップYouTuber「DJ Akademiks」によると、VIPはトラヴィスに招待された人たちらしい。しかしここで議論したい本質は、ゲストかどうかでも、なんのアプリを使用しているかでもない。ライブ中に「スマートフォンを過度に使用する行為」である。

彼が実際に何を見て、何を感じたのかはわからないので一概には言えないが、恐らく彼は自身の一番の見せ場で、携帯に集中している人がいたので気に食わなかったのであろう。実際に「ライブ中に携帯を使うな!」というアーティストは多くいる。その理由をブレイクダウンすると、大体「①ライブに集中してほしいから」「②他の日程へのネタバレになるのが嫌だから」「③気になって集中できないから」の3パターンに当てはまるだろう。アリシア・キーズなどはライブでのスマートフォンを禁止にしているが、彼女の理由は①と②の両方からきている。

「チケット代支払ったんだから撮影してもいいだろ」という意見もあるが、チケットというのは「人前で演奏する仕事」以外にも「場所を借り、”空間”を企画/制作した仕事」への対価として支払うものであると捉えている。双方のコミュニケーションによって良いライブ「空間」が生まれるが、個人への好意でやっているわけではない。「与えられた仕事」をベストコンディションでこなすということが、アーティストにとっては大切になってくる。そんなベストコンディションで仕事をするためには、仕事環境を選ばないといけないアーティストも多くいる。例えオフィスワークだったとしても「仕事中にめっちゃ役員が撮影してくる…他の役員はそれを疑問に思ってるし、作業に集中できないけど、給料もらってるからしょうがない…」という考えにはならないだろう。

 

「体験」を損なう?

もしお金を払っている1人の行動が、他の正統に料金を支払っている人の「体験」を損なうのであれば、アーティストが全力で阻止するのは当たり前であろう。もちろん「皆で撮影して超熱いライブにしようぜ!!」というアーティストもいるだろうし、それがその人なりの「空間」の作り方の意向なので、その場合は自由である。または、たまたま緊急の通知が来て、ちょっと見てしまったという場合もあるだろう。様々なシチュエーションがあるので、一概には言えない。

上記のオフィスワークの例えは、少しおかしいかもしれないが、一つだけ確実に言えることはある。それはアーティストの意向も尊重しないといけないということだ。「金払ってるんだから、何をしてもいいだろ」という考えは、ブラック企業と同じような精神性だと感じる。アーティストが作ろうとしている「空間」を尊重し、アーティストと一緒に相乗効果を楽しむことができるライブ体験が理想だろう。

写真撮影は関係ないが、このような例がある。以前とある有名ラッパーの来日ライブを2日間連続で見たとき、1日目と2日目の中音と外音のバランスが全く違ったのもあり、1日目は凄く良いライブであったが、2日目は客も本人のテンションも非常に微妙であった。2日目の外音が非常に小さく、観客が盛り上がれなかったのもあり、演奏している本人も本調子が出なかったのである(本人はそれに気がついてない可能性もある)。「LTV(顧客生涯価値)」という概念をロングスパンで考えたら、2日目しか見てない人の多くは、恐らく一生「あのアーティストは微妙だった」と感じ続けるだろう。長い目で見たら営業妨害とまで言える環境であった。

シチュエーションや条件を考えずに、一概に「撮影OK」や「撮影NG」を語るのは個人の倫理観でしかないのかもしれない。ここまで書いておいてなんだが、超簡単に結論を言うと、「時と場合による」ということなのだろう。このような議論が頻繁に行われるのは、結局は「シチュエーション」という前提がないからなのかもしれない。こちらは素晴らしかったライブのレポート⬇

【ライブレポ】Thundercatのグルーヴ、超絶テク、シュール&キュート全ての頂点に立った笑顔のライブ【LIQUIDROOM】

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