全てはサイクルになっている

というフレーズを聞いたときに「は？」と思う方もいるだろう。しかし世の中の繋がりや、エネルギーの動き方はサイクルになっていると感じる。私がイメージしているサイクルがどのように読者の方に伝わるのかはわからないが、以前Playatunerにて紹介した「Flying LotusはStones Throwでインターンをしていた。全ては「サイクル」になっていると感じる話」を読んで頂ければイメージが共有できるだろう。

そして今回またその「サイクル」に似た感覚を感じたエピソードがあるので紹介したい。今回はヒップホップのレジェンド・オブ・レジェンドであるプロデューサーのDJ Premierと若手カリスマTravis Scottの関係性とサイクルである。DJ Premierはヒップホップ以外にジャンルも愛し、音楽的な教養を持っているプロデューサーであるが、彼の音楽のルーツはテキサス在住の頃にある。

Gang StarrというとNYのグループなイメージがあるが、彼はテキサス州ヒューストン市で生まれ、幼少期を過ごした。RapRadarではテキサス時代の音楽的ルーツについて語っている。

Premier：Travis Scottの父親Jackと叔父Travisは俺の子供時代のOGなんだ。もちろん子供Travisはまだ生まれてなかったんだけど。父親のJackは俺にダートバイクとかの運転を教えてくれたよ。Travis Scottのお婆ちゃんは俺に国語を教えてくれてたんだ。彼女は最高にクールな人で、いつも誰よりも先に最新のものをゲットしていた。ビリヤード台とか、ビデオカセットレコーダーとかも最初にゲットしていたのは彼女だった。その時は「え、これでソウル・トレイン全部見れるの！？」って驚いたな。だから彼らの家が俺らのたまり場になっていたんだ。

なんと今ラッパーとして活躍するTravis Scottの父親とDJ Premierには深い関係があったのだ。父親Jackと叔父Travisに小さい頃よく遊んでもらったと語るDJ Premier。そして彼らの家でソウル・トレインを見続けたらしい。この頃から音楽をディグる習性がついていたのだろう。これだけだとただの偶然になってしまうかもしれないが、彼はさらにこう語る。

Premier：俺がティーンネイジャーになったぐらいかな、彼らはいつも楽器を演奏していたんだ。父親Jackはいつもドラムをやっていて、叔父のTravisはいつもベースを弾いていたから、彼らにドラムとベースを教わっていたんだ。俺がドラムを叩けるのは、Jackが教えてくれたからなんだ。この経験が自分のプロデューサーとしてのスタイルに大きく影響している。

なんと彼の初期の音楽的メンターとなったのがTravis Scottの父親と叔父さんであったのだ。もしPremierが彼らと出会ってなかったらプロデューサーになっていなかったかもしれない。この後はるか離れたブルックリンに引っ越し、一流ミュージシャンになるために自分たちを信じて活動してきたGang Starr。そしてその業界最高のプロデューサーとしてOGとなったときに、自分が昔教わっていた「先生」的な存在の息子が業界で活躍しはじめる。偶然とも言える出来事であるが、これはPremierが自分の理想像を実現するために前に進み続けたことが、巡り巡ってその人たちと再度繋がるきっかけになったのだろう。「努力が作り上げた偶然という名の美しいサイクル」とでも言うべきか。

先日書いた「A-Trakとカニエ・ウェストの出会い」という記事にも共通してくるだろう。A-Trakは最初Pusha TのバックDJを志望していたが、Pusha Tに自身の映像を見せるだけで、特に仕事には繋がらなかった。しかしその後、「偶然」が重なってカニエ・ウェストのDJとなる。そしてカニエ・ウェストがG.O.O.D. Musicを立ち上げ、Pusha Tと契約し、最終的にはPusha Tはレーベルの代表となる。その後カニエ・ウェストのDJをやめたA-Trakは自身のレーベル「Fool’s Gold」を立ち上げKid Cudiなどのアーティストを世に出す。そしてKid CudiはカニエのG.O.O.D. Musicと契約することになる。ここでも行動力によってできた繋がりからなる「サイクル」が出来上がっている。