ターンテーブリズムと世界一のDJを決定する大会「DMC」について。彼らの想いとJapanファイナル

 

Guest Writer:Ayami Kageyama (DMC JAPAN)

 

(このイベントは終了しました)

ヒップホップの四大要素

「MC/DJ/グラフィティ/ブレイキング」この4つのなかでも、ヒップホップ誕生のきっかけとなったのがDJカルチャーである。DJクール・ハークやグランドマスター・フラッシュのようなパイオニアたちが、曲中の「ブレイク」の部分をターンテーブルで繋げ続けたことからヒップホップは生まれた。

Googleトップページの「ヒップホップ誕生記念日」プロジェクトに込められた想い。プロジェクトメンバーたちが語る文化

 

このようにしてヒップホップが生まれる原点となったDJカルチャーだが、これがさらに独自の進化を遂げ、誕生したのが「ターンテーブリズム」である。

ターンテーブリズムとは、DJの、DJによる、DJのための文化であり、現在も多くのファンを熱狂させ続けている。一般世間ではラップ/MCが「ヒップホップ」の主なイメージとなっているかもしれないが、ターンテーブリズムという視点からディープなヒップホップカルチャーを見てみると、さらにヒップホップの世界が広がるであろう。今回はDJのさらに先を行く、ターンテーブリズム、そしてそれを志すDJ達にとっての最大にして最難の大会、DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPSを紹介したいと思う。

 

ターンテーブリズム

DJと一口に言っても、ラジオDJやクラブDJなど、そのジャンルは多岐にわたる。その中でも、最もエキサイティングなのがバトルDJ = ターンテーブリストであろう。そしてターンテーブリストとは何か簡単に説明すると、レコードを特殊な技術で演奏し、ターンテーブルを楽器のように操るDJのことである。

 

それでは、このターンテーブリズムとはどのようにして生まれたのか?ヒップホップが好きな人であれば、誰しも一度は「スクラッチ」という言葉を聞いたことがあるだろう。これは70年代後半にGrand Wizzard Theodore(グランド・ウィザード・セオドア)という、Fantastic Freaksのメンバーとしても活動していたDJが発明したものだ。彼は大のターンテーブルマニアで、独自のカセットミックスを作るために機材で遊んでいた際に、レコードを前後にこすった時に鳴るあの「チュクチュク」という音に魅了されたのである。こちらのインタビューによると、カセット録音中に母親が急に部屋に入ってきて焦り、その時のフェーダーの操作ミスでスクラッチ音がたまたま録音されたらしい。その技術に興味を持った親戚のグランドマスター・フラッシュが世に広め、瞬く間に世界を席巻した。

このスクラッチの誕生が、後のターンテーブリズムの発祥となる。そしてこの流れに乗り、文化にいち早く貢献したのが、Jazzy Jay(ジャジー・ジェイ)であった。彼は、クールハークとグランドマスター・フラッシュに並ぶ「ヒップホップ黎明期3大DJ」の1人であるアフリカ・バンバータの元でDJをはじめた。彼はいち早くスクラッチの技術をヒップホップ文化に取り入れ始めたのである。そこからターンテーブリズムの文化は独自に進化を遂げてゆき、ビートジャグリング(二枚のレコードを左右交互に再生し、曲を再構築してプレイすること)や、ボディトリック、バトルブレイクス(ターンテーブリストたちがより手軽にプレイできるよう、効果音などの音ネタだけを仕込んだレコード)などが次々と生み出されていった。その生み出された財産のうちの一つが、ターンテーブリストたちの世界一を決める大会、DMC DJ WORLD CHAMPIONSHIPSである。

 

DMC DJ WORLD CHAMPIONSHIPSとは?

DMCとは1年に1度、世界一のDJを決定するDJの大会である。1983年にイギリス国営放送のプロデューサーであったTony Princeが「DJこそが明日の音楽の中枢を担う」という考えの下、世界的DJ組織 のネットワークを創出するために、DISCO MIX CLUB(DMC)の大会をロンドンでスタートさせたのが発端となっている。

日本でも開催!

世界各国で開催されているDMCだが、日本はその中でも強豪国として知られている。1989年にDMC JAPANがスタートして以来、90年代中頃のヒップホップムーブメントと共にDMC JAPANも急激に成長して行ったのだ。

・DJ Kentaro (2002年 シングル部門)
・DJ Akakabe (2004年 バトル部門)
・DJ Co-Ma (2006年 バトル部門)
・Kireek(Hi-C, Yasa)(2007年 – 2011年DMCチーム部門連続優勝)
・DJ Izoh (2012年 シングル部門)
・DJ Yuto (2016年 シングル部門)

彼らは皆、DMC世界チャンピオンに選ばれた日本出身のターンテーブリストである。その中でも特に注目を浴びたのが、2002年にチャンピオンの栄誉を獲得したDJ KENTAROだろう。世界を舞台に活躍をし続けるDJ KENTAROは、DMC JAPANが生み出した「DMCの革命児」として多くの音楽ファンに知られている。それ以降も、近年では2012年はDJ IZOH、さらに昨年もDJ YUTOが三本目のベルトを持ち帰った。

DMCには6分間のルーティンと呼ばれる、ターンテーブリスト達が何度も練習を重ねて作り上げた曲を披露するシングル部門、バトル部門、チーム部門の3部門構成されており、DJが1対1で向き合い、技術を競うバトル部門では、直接的なディスワードでお互いを罵り合ったり、対戦相手ができないオリジナルのスキルを繰りだすことで優劣が決まる。近年盛り上がりをみせるフリースタイルラップを彷彿とさせる緊張感のあるトーナメント方式で、最終的なチャンピオンを決定するというものだ。

 

ターンテーブリストたちがDMCにかける想い

今年も4月にDMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPSが開幕した。日本全国7都市で開催された地方予選と映像審査を経て、8月26日(土)にはいよいよ決勝大会が開催される。この決勝大会で優勝、すなわち日本一のタイトルを獲得したものは、10月にロンドンで開催される世界大会に出場することができる。ロンドンの舞台でチャンピオンになるということは、DJとして最大の名誉が与えられると同時に、世界中から大きな脚光を浴びるということを意味する。まさに彼らは人生をかけてDMCに挑戦しているのだ。

 

最近アメリカでヒップホップ/R&Bの売り上げが、初めてロックを超えるというニュースが大きな話題となった。世界中でかつてない勢いでヒップホップが人気を集めるなか、日本も類にもれず「フリースタイルダンジョン」などの影響で、ラップシーンが盛り上がりを見せている。

ヒップホップは本当に様々な角度で楽しむことのできるカルチャーだ。この文化の走りとなったDJカルチャーも今では独自に進化を遂げ、多くの人を楽しませると同時に勇気や希望を与え続けている。ヒップホップというカルチャー全体を、「ターンテーブリズム」という重要な要素を含めて楽しんで頂きたいと私は願っている。

そして8月26日(土)にいよいよJAPAN FINALが渋谷のWOMB LIVEにて開催される。日本全国7都市で開催された予選と動画審査を経て、ついにファイナリストたちの決戦を見ることができる。ゲストショーケースにはスクラッチの神様と言われるQBertや、現役世界チャンピオンDJ YUTOなど、DMCならではのアーティストが登場する。ターンテーブリズムの魅力を、これを機会にぜひ体験して欲しい。

詳細はこちら!http://dmc-japan.jp/
8/26 (Sat) 16:00 START 21:00 CLOSE
@WOMBLIVE
当日 3300円 前売り2800円 学割2000円(要学生証提示)*ドリンク代500円別途
前売取扱 : 楽天チケットclubberiaHMV Record Shop

DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS 2017 FINALIST:

・SINGLE CATEGORY
DJ RENA (東海代表)、DJ SkYATCH (北海道代表)、DJ WA-TA (東北代表)、DJ FUSE (関西代表)、DJ REIKO (関西代表)、ANONYMOUS (関東代表)、DJ 松永 (関東代表)、DJ SHUNSUKE (九州代表)、DJ BUCK$ (中四国代表)
・BATTLE CATEGORY
DJ FUMMY (DEFENDING CHAMPION)、DJ DOM-AUTO、DJ Doon、DJ Makoto、DJ 諭吉、PACHI-YELLOW、SATOYON、SENSE BEATS
・GUEST:DJ QBert、DJ YUTO、DJ IKU
・JUDGE:DJ QBert、DJ KENTARO、DJ IZOH、DJ YUTO、DJ HI-C、DJ YASA
・HOST MC:DARTHREIDER
・VISUAL:Kimgym

➖ LOUNGENumark presents PORTABLE SKRATCH MEETING
・GUEST:DJ $HIN、SPIN MASTER A-1、DJ JIF ROCK、DJ BUNTA、DJ KEN-ONE、DJ TSUYOSHI

ヒップホップのはじまり〜グランドマスター・フラッシュとターンテーブルの奇跡の出会い

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