ウータン・クランのMasta Killaが初めて書いたヴァースは「Da Mystery of Chessboxin’」偶然の積み重なりによって決まる運命

 

 

人生が変わった日

というテーマの記事は今まで何度かPlayatunerで取り上げてきた。とある大きなきっかけがあって、人生が変わった者もいれば、地道に水面下で活動していった者もいる。過去にはFabolousがN.O.R.E.と一緒にラジオに出演したエピソードや、Mobb Deepがレーベルの建物の前で業界人に音源をひたすら聞かせていたエピソードについても書いたので、そちらもチェックして頂きたい。

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今回はWu-Tang ClanのMasta Killaに関しての情報を紹介をしたい。Masta KillaはWu-Tangに最後に加入したメンバーとして自分のことを「Little Brother」と形容しているが、彼がWu-Tangに加入した経緯が彼の新曲のMVにて説明されている。彼のソロアルバム「No Said Date」の付録DVDにも同じ内容が紹介されている。

 

Masta KillaはWu-Tangのクラシックデビューアルバム(通称36 Chambers)にて、「Da Mystery of Chessboxin’」のみの参加となっているが、このヴァースがきっかけで彼はMCとしてWu-Tangに加入することになった。実は元々彼はMCを目指していたわけではなかったのだ。彼は小さい頃からタレントショーなどでラップを披露したり、学校のランチタイムに趣味でサイファーしたりしている青年であった。そしてWu-Tangの創業メンバーのうちの1人GZAと遊んでいるうちに、とある機会が訪れたのだ。

それは楽曲「Da Mystery of Chessboxin’」にてラップできるチャンスであった。当時Killah Priestがヴァースを獲得するはずであったが、とあることがきっかけでMasta KillaのヴァースになったとKillah Priestは語っている。深夜のスタジオで、メンバーの多くが帰宅した後、その出来事は起こった。Masta KillaとKillah Priestの2人がリリックを書いていたが、Killah Priestはリリックを書きながら居眠りしてしまったのだ。

そのため、Masta Killaがボーカルブースに入り、この「Da Mystery of Chessboxin」のラストヴァースが出来上がった。その後Killah PriestはMasta Killaのヴァースを聞き、やっと起きたのだ。これはMasta Killaがはじめて書いたヴァースであり、マイクを使用したのも初体験であった。「Da Mystery of Chessboxin’」のGeniusページにて彼はこのように説明した。

 

Masta Killa:これは俺がはじめて書いたラップだ。俺は自分が書いたものに対して、完全な自信を持っていなかった。だからGZAの元に行き、自分が書いたということを言わずに「これどう思う?」と聞いたんだ。そしたら彼は「これお前が書いたの?」と聞いてきた。彼はその時既にラップの「ジニアス」であったから、俺に「ここにこのラインを追加して、この言葉をこれに変えよう。もしこれをラップできるなら、もしかしたらお前はWu-Tangでキャリアを積むことができるかもしれない」と言ってくれた。彼は間違えてなかった。

 

 

そう、本来Killah Priestが参加すると思われていたが、Masta Killaは今まで書いたことをなかったリリックを書き、行動に起こしたのだ。そのため、GZAは彼に可能性を感じ、Wu-Tangに正式加入することになったのだ。もしここでKillah Priestが居眠りしていなかったら、全く違う人生になっていたかもしれない。そしてMasta Killaが積極的にリリックを見せることをしなかったとしても、同じように全く違う人生になっていただろう。このように「偶然」の積み重なりにより、運命というものが出来上がってくるのだろう。以前Playatunerにて書いた「サイクル」の話とも似ている概念であると感じる。

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人々は全員このように運命の「歯車」として生きているが、その歯車を動かすためには自分自身も「行動」をしないといけないのである。一つの歯車が動かなければ、周りが動こうとしても、どうにもならない。Masta KillaのWu-Tang加入はこのようなことを実感させてくれる。

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