ベテラン・ラッパーScarfaceがLil Pumpの「Gucci Gang」に与えた評価が面白い。彼の「ラップファン」としての素直な反応
グレイテスト・ラッパー
トップ10のリストを上げたときに、誰が入るだろうか?2Pac、Nas、ビギー、Rakim、エミネムという皆の定番以外にも個人的にはAndre 3000、Black Thought、Redmanもいれている。そんな自分のトップ10に恐らく入るであろうラッパーがScarface(スカーフェイス)であろう。彼は元々Geto Boysのメンバーとして、テキサス/南のパイオニアとして、様々なアーティストが世に出る道を作った。
彼はオールドスクールなリリシストであり、ギャングスタ・ラップというふうに括られているが、どちらかというと「リアリティ・ラップ」であろう。フッドで起こることを重く太い声でラップする彼の姿はまさに「ドン」に相応しいものである。
「Hand the of the Dead Body」「On My Block」「G Code」などのクラシックスをリリースしてきた彼はヒップホップ/ラップのOGとして今でも多くのラッパー/ファンにリスペクトされている。そんな彼が他のラッパーのパンチラインを評価する動画を紹介したい。彼の反応がいかにもヒップホップを愛してる人という感じで微笑ましい。
こちらはBETの「RATE THE BARS」というラッパーたちが他のラッパーのパンチラインを5段階評価するという動画シリーズなのだが、このシリーズの面白さは「誰のリリックかわからない」ところである。評価する側のラッパーたちは、渡されたパンチラインが誰の曲かを知らされないので、アンバイアスなリアクションを見ることができるのだ。今までにはRedman、T.I.、Royce Da 5’9などが参加しており、全員自分に近い人たちのパンチラインを素直に評価している。Redmanはパンチラインの書いてある紙を渡されると、一語一句読み上げ、解析しはじめるので、彼のリリシズムとクレバーネスがどこから来ているのかがわかる。
Scarfaceはパンチラインの書いてある紙を渡されると、読み、非常に良いリアクションをするのだ。例えばUGKのBun Bの「Trill Recognize Trill」のフレーズを読み上げ、「Whoo!これはタフだぜ!誰かわからないが最高だな!」とリアクションをする。自分のライムを2.5と低く評価した後、The D.O.C.の「The Formula」についてこのように評価する。
The D.O.C.「Creative so I’ll never be regarded as a regular/More than just a little bit better than my competitor/You should never underestimate the fashion/I hold for the stage whether I’m coolin’ or thrashin”」
Scarface:Whooo!こいつは最高だな!これはこのスポーツのなかでも最高峰なんじゃないか!4.5か5評価だな!
リリックを読んだときの彼の反応はラップファンの「鑑」とも言えるだろう。言葉によって紡がれるクリエイティブさを楽しみ、「ウマい!」という反応をする。そして何人かのスキルフルなリリシストのパンチラインを評価した後、事件は起きる。彼は手元にある紙を読み上げる。
Scarface:Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang, Gucci Gang… これはなんかの間違いか?多分何かのミスかな…?ミスじゃないの…?
…まぁクールかな?何故かと言うと、これだったらライブをやるときにもあまり覚えなくてもいいしな。Gucci Gangを12回か…これは一体なんのギャングなんだ!?なんのギャングが知りたいな。ハードに聞こえるからGucci Gangには近寄らないようにしないとな…多分こいつらは冷酷だよ…!(爆笑)評価できないぐらいインクレディブルだよ。
ScarfaceがLil Pumpの「Gucci Gang」を知っているかどうかはわからないが、彼のリアクションはかなり面白かった。彼のようなオールドスクールなリリシストがGucci Gangのような曲のリリックを見たときに、脊髄反射で批判することも多い。特に近年は「マンブル・ラップや若手ラッパー V.S. レジェンドたち」という構図もあり、ソーシャルメディアにて常に議論がされている。そんななか、オールドスクールリリシストであり、ラップレジェンドのScarfaceのような人物のこのリアクションは、批判するわけでもなく、少しネタにしながらも誰もが笑えるものであった。
最初Lil Pumpのリリックが出てきたときには「あ、これは批判になるかな?」と思ったが、ウィットに富んだリアクションで批判でも偽りでもないリアクションを見せてくれたのだ。特にギャングスタ・ラッパーとして、フッドを歌ってきた彼がGucci Gangの「ギャング」という部分に反応し、「このギャング強そうじゃね?」というリアクションをしているのは、まさに「パンチライン」的な切り返しだろう。偽りのないリアクションでかつ、皮肉って皆を笑わせるScarfaceのスキルには脱帽した。Lil Pumpが好きでオールドスクールリリシズムを理解できない若者でも笑える答えであり、「このScarfaceという面白いOGはどんなラップをしているんだろ」と気になる若者も出てくるかもしれない。
それと同時に、記事を書きはじめたばかりのときに書いた下記の内容を思い出した。記事を書きはじめて2週間ぐらいのときに書いたものなので文章は拙いが、初期Playatunerのバズに貢献した記事の一つである。
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