Mac Miller「自分に言い訳をするのを辞めた」ドラッグの闇から抜け出した彼の成長

 

 

近年最も成長したアーティスト

という言葉を聞くと、誰を思い浮かべるだろうか?Big Sean、J. Cole、Joey Bada$$などを思い浮かべる人は多いと感じるが、そのなかでも著しく成長したのはMac Miller(マック・ミラー)だと感じる。彼の場合は成長したというより、一度悪状況に陥ってから、乗り越えたというほうが適切なのかもしれない。今ではアーティストとしてリスペクトされ、アリアナ・グランデのようなスターとも交際する彼であるが、デビューしたときはかなり酷評されていたのである。

Mac Millerが「Divine Feminine」にてスタイルを大幅に変えることができた理由

彼のデビュー・アルバム「Blue Slide Park」はPitchforkでも1/10のスコアを記録し、数々のヒップホップファンやブログにて酷評されたのである。彼のポップでパーティサウンドは売上枚数的には成功だったにも関わらず、Danny Brownなどのラッパーたちにも酷い言われようであり、マック・ミラーはこのアルバムに収録されている曲を演奏することを拒み始めたのである。黒歴史になってしまったアルバムであるが、彼はComplexにて当時のことをこのように語っている。

 

➖ ほとんどのレビューが音楽そのものだけではなく、俺という個人に対する批判でもだった。正直そっちのほうがキツかった。

 

その結果彼は部屋に引きこもるようになる。部屋から出ない状態であったので、当然様々な感情がこみ上げてくるのだろう。彼は周りに勧められたドラッグを使用するようになる。

FADERがアップした上記のショートドキュメンタリーでは彼はこのように語っている。

 

➖ まずは独りで部屋にいる状態から始まった。そしたら段々飽きてくるから、ドラッグでハイになればいいじゃんって考え始める。金があると気に入ったドラッグを買い続けることができるから、本当に駄目になってしまうんだ。

ウィードではリラックスできなくなってしまうほどのパラノイアから抜け出すために、もっと麻痺するようなドラッグを摂取するようになった。

 

コデインが入った「パープルドリンク」いわゆるリーンを常用するようになった彼であった。コカインで80億円の財産を溶かしたScott Storchと共通する話である。動画でもFrench Montanaに「お前これは強すぎるから辞めておけ」を何回も言われても「いやいや、俺にとってはこのぐらいがちょうどいい」と返答している。French Montanaに言われるぐらいということは、相当である。

若者のドラッグ使用とヒップホップ。Action Bronson、Lil Pump、Chance the Rapperを例に考える

この頃に彼は2ndアルバム「Watching Movies with the Sound Off」をリリースし、今までのハッピーな世界観を覆すような当作品は評価もかなり高かった。TDEやOdd Futureからの客演も多く、さらにはFlying Lotusがプロデュースするトラックが1stシングルであり、哲学的であり「変」な世界観が出来上がったのだ。

彼の音楽が世間にも認められたことについて彼はこのように語っている。

 

➖ 俺の音楽は世間からあまりにもヘイトされていて、これ以上ネガティブになることはなかったんだと思う。あまりにも嫌われているから、逆に「フラットな目線で彼の音楽を聞いてみるか」という人が増えたんだと思う。

 

彼の友達は「彼は全てのことから逃げ出そうとしており、彼ほどリーンを摂取していた人が辞めることができたのが驚きだ」と語っており、中毒であったマックを今までと同じように見れなかったとも言っている。マックはドラッグから抜け出したことについてこのように語っている。

 

➖ 俺は家からも出れないようなドラッグ漬けのラッパーよりも、ダサい白人ラッパーであるほうを選んだんだ。オーバードーズはクールじゃない。オーバードーズに伝説的なロマンスなんてない。オーバードーズしているから歴史に残るなんてない…ただ死ぬだけだ。

自分に言い訳をするのをやめてから、自分がどんな状況にいるのかが見えてくるようになった。そのような人生は生きるべきじゃないと、自分で認めることができたのが良かったよ。まぁ今でも楽しんでベロベロになることはあるけどな!ただ今は自分をコントロール出来ているんだ。

 

確かに彼がドラッグ漬けであった「Watching Movies with the Sound Off」や「Faces」が彼のキャリアのなかで一番評価されている作品かもしれない。しかし彼は一度はその状況で音楽的に認められつつも、自分で「この状況は人生にとって良くない」と判断し、抜け出すことができたのだ。その状態で音楽的に認められてきたアーティストとしては「もしドラッグを止めて、いい作品を作れなくなったらどうしよう」という不安はあっただろう。「俺は家から出れないようなドラッグ漬けのラッパーよりも、ダサい白人ラッパーであるほうを選んだんだ」という彼の言葉はとてもパワフルであり、ある意味勇敢な言葉だと感じる。

その後も彼はGO:OD AMや最新のDivine Feminineのように、評価の高いアルバムをリリースしており、今ではヒップホップにかかせないイノベーター/挑戦者となった。ドラッグに頼らなくても、彼は「現実と向き合い」、新しいことに挑戦できるようになったのだ。もちろん最初から世間からのヘイトを気にしない強いハートを持っていたら、このようになっていなかったのかもしれない。しかし一度悪状況に陥っても、きちんと自分を見つめ直し「自分で這い上がる」ことができた彼は賞賛に値すると感じる。今ではドラッグライフから抜け出し、音楽的にも、人物的にリスペクトされる「アーティスト」になったことを嬉しく感じる。

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