Staff Blog:若者のドラッグ使用とヒップホップ。Action Bronson、Lil Pump、Chance the Rapperを例に考える

(この記事は医療従事者が書いたものではなく、ヒップホップと音楽の観点で個人的な意見を書いています。)

 

 

音楽とドラッグカルチャー

の繋がりは今に始まったことではない。大昔からスピリチュアルなものとして自然の物を摂取する儀式からはじまり、60年代70年代にも多くのロックスターなどがドラッグの産物としての音楽を創造してきた。ヒップホップ界でもドラッグディーラーとしてのし上がったラッパーも多く、遠い存在のように思えるかも知れないが、ドラッグは常に近い位置にある。

そんな「ドラッグ」との距離は年々近くなっていると感じる。入手の難易度が低いものが「流行り」として、若いアーティストたちにもてはやされているのである。そのようなドラッグによって苦しんだMac Millerの症状ついては下記の記事で紹介している。

Mac Miller「自分に言い訳をするのを辞めた」ドラッグの闇から抜け出した彼の成長

特に近年話題に上がるのが、モリー、パーコセット、リーン、Xanaxなどのドラッグである。様々なラッパーたちがこれらをネタにしてラップをしたり、MVにて「これがイケてる」と言わんばかりのイメージで使用しているのだ。これらのドラッグは実際に市販の咳止めシロップや処方の鎮痛剤/鎮静剤を使用しており、誰でも手に入れることができるのが事実である。私は薬剤師でも薬物の専門家でもないので、専門的な知識は持ち合わせておらず、自分が読んだことや見たことしか語れない。なのでこれらのドラッグの詳細は語らないが、これらのドラッグが明らかに、今までに以上に身近になっており、若者の間で問題になっているのは伝わってくる。

その中でも特に問題になっているのは、Xanax(ザナックス)なのでないだろうか?Xanaxは短期間作用型抗不安薬であり、ヒップホップ界でも蔓延している薬である。世界中で処方されているこの薬であるが、非常に依存性が高いらしく、12歳〜の若者の乱用が目立つとFox47が報道をしている。国立薬害研究所のコンプトン氏によると、その依存性が強さが一般に知られていないのもあり、依存する人が非常に増えているとのこと。もちろんXanaxは使用方法を守れば不安薬として作用するが、その依存性により、ハイになるために乱用する人が増えているとも語られている。米国の年間のドラッグのオーバードーズの死因の30%以上がXanaxや類似ドラッグによるものであり、年々増えている数字は米国やオーストラリアでは大きな問題となっている。ヒース・レジャー、マイケル・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストンなどの死因の一つにXanaxが関わっていたことが発表されている。

そのなかで、やはり若い「流行り」のラッパーたちの影響は大きいのかもしれない。FutureのMask Offでは、かの有名な「Percocet, Molly, Percocet」というリリックが印象的であるが、他にはLil Pump世代のラッパーたちの影響もXanaxやパーコセット使用に影響があると感じる。彼は楽曲だけではなく、ツイッターでもこのように発言している。

Lil Pump:Xanaxが新しい波だ

 

「そんな波に乗らないでくれ」というツッコみは置いておき、彼の動画や生活を見れば明らかに不安薬として、医師の処方のもと使用しているわけではないのがわかる。リプライには「次の金曜にXanax持っていくから超熱い夜にしようぜ」という「Xanaxを乱用することが今の流行り(笑)」と言わんばかりの若気の至り満載のリプも見ることができる。さらに彼はお祝い事でXanaxが500個入ったケーキをインスタグラムにも載せている。

そんななかで、Xanaxの危険性を伝えるラッパーたちもいる。Chance the Rapperも一時期Xanaxによって「家で何もできない」期間があったとGQに語っており、もしそこでそのライフスタイルを変えていなかったらChanceのキャリアは終了となっていただろう。そしてこの度Xanaxに対して発言したのは先日ニューアルバムをリリースしたAction Bronsonである。

 

筋トレの話題から

Action:地下室という存在は凄いよ。友達の地下室で音楽やったり、筋トレしたり、ウィードやったり。地下室で音楽かけてみんなでプロテインを飲んだりするんだ。

ホスト:近年の子供たちがやらないといけないのは、そういうことだと思うよ。体を動かしてプロテイン飲んだりじゃなくて、皆Xanaxで体を駄目にしている。

Action:俺は幸いそういうドラッグは体にとって良くないって理解しているからな。前にオーストラリアに行く飛行機で、Xanaxを摂取したんだ。そしたら16時間のフライトなのに、効果が消えなくて足が動かなかったんだ。ずっと意識がなくて、周りは俺が死んだと思っていた。

 

このように語ったAction Bronson。実際に彼がどのように使用したかは定かではないが、そのときの経験によりもうXanaxはやらないと決心したとのこと。また、Vince Staplesの兄弟もXanax乱用によって亡くなっている。

不安薬として、医師の支持にしたがっていれば、このようなことにはならないはずである。しかしここまで問題になっておりながらも、依存性が非常に高いこの薬を、米国で11番目に処方されている薬になるまで処方し続けるのにも違和感がある。まるで80年代後半のクラック・コカインエピデミックを彷彿とさせる流れとなっており、誰かしらが莫大な金額を稼いでいるのは想像できる。Thundercatがジョークで言った「ラッパーたちは製薬会社からマーケティング費用としてお金をもらって、ドラッグについてラップしている」という発言が、ただのオモシロ発言で済まされない未来も想像できる。またこのようなドラッグの一番の危険は、純正だと偽ったものを摂取してしまう可能性でもある。

医療従事者でもなく、薬物の専門的な知識がない私には正直「薬物」としての問題の詳しいところまではわからない。しかし音楽を通して、様々な若者が後々苦しむような問題が起きていることは伝わってくる。若いうちは体が丈夫なので、「全然大丈夫だから(笑)」といった調子の人もいるだろう。しかし私が感じている問題は「受信した情報/好きなアーティストに妄信的についていく精神」ということである。

若者が「ドラッグをやることがイケてる!」などと言ったイメージや流行りに影響されやすいのは、今に始まったことではない。人生にて成し遂げないといけないことや、好きなことにコミットできなくなるリスクを理解できていないことが多いからだと感じる。かくゆう私も25歳なので、世間的には若者の粋に入るかも知れない。「これが流行りだ!」と言わんばかりのアーティストの「マーケティング」をフォローする「羊」になるのは構わないが、それが原因で自分の人生に起こるデメリットも考えてほしいと願っている。自分の人生で何をやらないといけないのか?今ここでそれができなくなるリスクとは?という疑問は重要である。知り合いの死や収監を目の当たりにして、はじめて気がつく人が多いのかも知れない。しかしそのような状況を目の当たりにすることが少ない環境では、物珍しさから「なんかドラッグイケてるっしょ(笑)」と感じてしまっている人もいるだろう。また、流行りのアーティストたちのこのようなドラッグ使用方法を、「イケてる」といった雰囲気で紹介する自称カルチャーメディアにも疑問が浮かぶ。

もしかしたらパーティードラッグにハマっている人たちには「なんだこのクソ真面目野郎は?」と思われるかもしれない。しかし人為的に作られたこのような処方箋ドラッグの危険性を発信するアーティストたちの発言を、さらに発信する必要があると感じた。特に誰でも入手できるこの時代のドラッグであるからこそ、80年代後半のクラック・コカインエピデミックの状況を、若者の間で再発させてはならないと思うばかりだ。もちろん人間である限りは不安症状や精神的な問題で薬を頼りにしたい場合もあるだろう。そのようなときには、医者とちゃんと相談をし、根本的な原因の解決を試みてほしいと感じる。

(この記事は医療従事者が書いたものではなく、ヒップホップと音楽の観点で個人的な意見を書いています)

Mac Miller「自分に言い訳をするのを辞めた」ドラッグの闇から抜け出した彼の成長

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