1984年に一回だけTV放送された伝説のヒップホップ番組「Graffiti Rock」この超フレッシュな番組から伝わること。

 

 

ヒップホップ番組

日本では現在では「フリースタイルダンジョン」があるが、アメリカでは「Yo! MTV Raps」「Rap City」「106 & Park」などのヒップホップ番組が存在していた。90年代に入り、次々と出てきたヒップホップ番組であるが、そのなかの「祖」と言える伝説のヒップホップ番組を知っているだろうか?この記事はそんな元祖ヒップホップ番組について紹介したい。

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Graffiti Rock(グラフィティ・ロック)


数々の人気ヒップホップ番組が全米にて放映されるはるか昔、この番組「Graffiti Rock(グラフィティ・ロック)」の構想は始まった。この番組が「伝説」とされているのには複数の理由があるが、このグラフィティ・ロックは1984年6月29日に一度放送された限り、その後電波の日の目を見ることはなかった。パイロット版として、レギュラー化するための検討材料として制作/放映された番組である。全米初のヒップホップ番組であったため、世界初のヒップホップ番組でもあると言える。

この番組は1984年にMichael Holman(マイケル・ホルマン)によって構想/開始されたプロジェクトであった。彼はダンスグループ「New York City Breakers」のマネージャーであり、まだ当時一般的には知られていなかったヒップホップ文化を広めようという志を持っていた。サウス・ブロンクスで生まれたこのムーブメントはラップや音楽だけではなく、グラフィティ、ブレイキング、ファッションなどの要素もかなり強く、ホルマンは全ての要素をちゃんと表したものを作ろうとしていたのだ。

とにかく今までにないユニークさ、世間が見たことがないようなダンス、一般世間では使用されない言葉、聞いたことがないような歌唱スタイルを世間に広めるために、彼は$150,000のファンドを集めたのである。彼はそのお金で当時ナンバーワンMCであったKool Moe DeeとSpecial Kを番組に参加させることに成功したのである。さらに彼はAfrika Bambaataを音楽コンサルタントとしてリクルートし、それに留まらずRun-D.M.C.とShannonのパフォーマンスもゲットすることに成功した。

 

超フレッシュ

この番組一言で言えば「超フレッシュ」である。まだ一般的には知られていない、10年後には巨大産業になるこの文化を作っていく若者たちの「とにかく楽しむ」という気概が伝わってくる。格好も超フレッシュであり、このように世間とは違うユニークな方法で自己表現をする人たちの映像が今でも残っていることに有り難みを感じる。この番組でハイライトすべき点はいくつかあるだろう。

① New York City Breakersのブレイクダンス

現代の10代が彼らの格好を見たら「ダサい」と思うかも知れないが、彼らは最高にフレッシュな格好と、独自のスタイルで評判を得ていたブレイクダンスクルーである。一人ひとりの見せ場をを作り、全員のスキルが際立つようにする彼らの演出はまさに「クルー」であると感じる。

 

②CM前に解説されるスラング

番組がCMに入る前にこのようにヒップホップローカル内で使用されている言葉の解説が入るのだが、これがまた時代や文化を感じることができて面白い。お茶の間に届けるという意味でヒップホップやフレッシュなどの単語が解説されている。

Hip-Hop:ブレイクダンサー、ラッパー”MC”、スクラッチDJ、グラフィティアートを表すサブカルチャーの名称

Fresh:最もヒップで、新しく、ユニークなこと

Chill:落ち着いた様子。クールな様子。コントロール下に置いている様子。

と解説されている。

 

③ 当時のヒップホップファッション

ヒップホップファッションといえば、とある一定のイメージが世間にはあると感じる。実際にヒップホップファッションという特定の「服装ジャンル」が決まってしまっているかのように、一般的なイメージは確定してしまっているだろう。しかしこの動画を見て、感じたのは「全員違う格好をしている」ということである。とにかくオリジナルで新しい「フレッシュ」なものがイケている時代だったのだろう。そして一つ気がついたのは、多様な人種である。とにかく楽しみたいという人たちが集まっているのがわかる。そして若かりし頃のデビ・メイザーとヴィンセント・ギャロがおり、ギャロに関しては自分を「Prince Vince」と名乗っている。とてもフレッシュなヒップホップネームだ。

 

④ スクラッチDJの説明

このシーンではお茶の間にスクラッチという手法を教えている。「レコードを前後に、前後に動かし続けるんだ。でもこれはお父さんのステレオでやったら駄目だぞ!ヒップホップの監視下やろう!」とホルマンが語っている。実際にこのパートはビースティ・ボーイズの「Alright Hear This」にてサンプリングされている。

 

実際にこの番組の評判は高かったらしいが、レギュラー化することはなかった。全放送局が渋り、「他の放送局が取るなら、うちもかなぁ」と言ったテンションで企画がその後進むことはなかったのだ。プロデューサーたちには「SoulTrain」などの番組との違いがわからないと言われ、恐らくこの文化がいかに新しくフレッシュであったかという意図が伝わらなかったのだろう。しかしこの試験的な放送が、ヒップホップがはじめて全米に紹介された歴史的瞬間であったのだ。

そしてこのグラフィティ・ロックのおかげで、歴史が動き出した例もある。グラフィティ・ロックが放映される前日の夜に、放映を祝うパーティーが行われたのだが、そちらで伝説的な出会いがあったのである。ホルマンの知り合いであったRussel Simmons(ラッセル・シモンズ)と伝説的なプロデューサーRick Rubin(リック・ルービン)が出会ったのだ。そのパーティーでJazzy Jayがラッセル・シモンズにリック・ルービンを紹介したのがきっかけで意気投合をし、後にDef Jamを創業する

一回限りの放送であったが、この番組が後世に残した功績は計り知れないだろう。ヒップホップのフレッシュさ、オリジナリティ、楽しむ精神を詰め込めた瞬間をキャプチャーした番組となっていた。こんなにカラフルであり、多様性のある文化として前進してきたと考えると、頻繁に聞く「◯◯はヒップホップではない」という批判の言葉がなおさら響かなくなるだろう。新しいことをやり、フレッシュであること。そして自分のオリジナリティを精一杯に出し楽しむこと。自分を表現し、恥ずかしがらずに自信を持つこと。この番組はそんなことを教えてくれているように感じる。2013年には30周年を記念し、KickStarterキャンペーンもやっていた。日本版も出ているので、是非気になる方はチェックして頂きたい。

参考文献:NightflightimbdMichaelHolman.comNYTimes

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