Pro EraのNyck CautionとKirk Knightの新コラボアルバム「Nyck @ Knight」の一聴レビュー

 

 

ヒップホップコレクティブ

というものは2010年代に入り、一時期様々な場所で乱立した印象がある。2010年代ヒップホップコレクティブ時代のパイオニア的存在になったのはA$AP MobやOdd Futureであるが、Joey Bada$$と今は亡きCapital Steezが立ち上げたPro Eraももちろん外せないだろう。

Joey Bada$$「◯◯の新アルバムが今年中にリリースされるよ」

 

そんな私が注目しているPro EraメンバーがNyck Cautionである。彼はJoey Bada$$の音源にも頻繁に登場するので、知っている方も多いと思うが、Joey Bada$$の次にアクティブなMCであろう。彼が2016年にリリースしたミックステープ「Disguise the Limit」は素晴らしい作品であり、なんでPlayatunerのベストof 2016に入れなかったのか、自分で疑問に感じている。

そしてアクティブなメンバーとして、勢力的に活動しているもう一人はKirk Knightである。JoeyのB4DA$$でも、AABAでも、彼のトラックを聞くことができる。Joeyの昔からのプロデューサーとして、さらにMCとして活躍をしてきた。そんな注目の2人のコラボアルバム「Nyck @ Knight」が7月21日にリリースされた。

 

一回だけ聞いて率直な感想書く【一聴レビュー】

私は実はこのアルバムをかなり楽しみにしていた。1stシングルとして先行リリースされていた「Off the Wall」は毎日聞いているぐらい好きな曲であり、キャッチーなサビと「人生のグラインド」的なシリアスなリリックが非常に心にくる曲であった。

 

今回全体的に感じたのは、Kirk Knightのプロダクションの成長である。正直なことを言うと、B4DA$$のKirk Knightのビートはあまり好みではなかった。他の名プロデューサーたちのビートと並んだとき、少しクオリティに差があったと感じる。しかし去年のNyck Cautionの「Disguise the Limit」で感じた彼の成長は、このアルバムで確信に変わった。「Disguise the Limit」はイメージ通りの東海岸ヒップホップの枠を飛び出し、かなりアグレッシブな音作りであった。そして今作「Nyck @ Knight」では、そのアグレッシブな音作りで得たであろう経験と、東海岸ヒップホップの間を上手くとっているサウンドになっている。「Disguise the Limit」で全面的に押し出した新しさと、元々血に通っているヒップホップが融合し、「Kirk Knightオリジナル」な雰囲気が出来上がってきていると感じる。

Nyck Cautionのラップは以前からかなり上手かったが、今回も「さすがのエネルギーだ」と言いたくなるようなエネルギッシュなラップを披露してくれている。Joeyの新アルバムAABAでも、唯一アグレッシブなラップを披露していた彼であるが、彼の最大の魅力は「声の張り」であると感じる。もちろんリリックもフローも素晴らしいが、彼の声から生まれるエネルギーはそれを超越するパワーを持っているようにも思える。

楽曲「Audiopium」では、Pro Eraのメンバーをフィーチャリングしており、Joey、CJ Fly、Dessy Hinds、Aaron Rose、Rockamouth、Dirty Sanchezがラップで参加している。「こいつの声久しぶりに聞いたな」と思わせてくれるメンツである。そして驚いたのが、楽曲の最後になんとCapital Steezのヴァースがアカペラで入るのだ。Joeyの楽曲「Killuminati」のCapital Steezのヴァースである。今年にCapital Steezの1stアルバムと、Pro Eraのアルバムがリリースされるらしいので、それが楽しみになる楽曲である。

このアルバムは大ヒットになるような内容ではないが、全体的にとても良い内容であった。Kirk Knightのトラックの上にNyck Cautionが乗るという自然な雰囲気が段々定着してきており、2人の息が今まで以上に合っている。

Joey Bada$$の「1999」17歳のリリシストが私たちに見せてくれた未来と希望

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

いいね!して、ちょっと「濃い」
ヒップホップ記事をチェック!