リアルタイムで聞いて育った音楽がもたらす効果と「自然な音楽」。Vince Staplesのインタビューから考える。

 

 

小さい頃聞いて育った

という音楽はいつまでも色あせないものだ。思い出補正というものが大きいのだろうが、まっさらな感性をもっていた小・中学生時代に聞いていた音楽は一生ものだと感じる。私にとってDr. Dreの「2001」や、エミネムが今でも特別な存在なのはそのためであろう。子供の時に聞いたものと、大人の時に聞いたものでは、印象が全く違うのはほぼ全ての音楽リスナーに当てはまる話だと予想ができる。

そのようなことを考えているとき、面白いインタビューを見つけたので紹介をしたい。これはVince Staples(ヴィンス・ステープルズ)のインタビューなのだが、Playatunerでは彼の意見に賛同し、度々彼の理念をブレイクダウンする記事を出している。特に下記の内容は是非チェックしてほしい。

Vince Staples「メディアや世間のイメージがラッパーたちにプレッシャーを与えている」彼の超リアルトーク。

そんな彼が「Hotな音楽」について語っている部分を紹介したい。

 

Charlamagne:楽曲にLil Bow wowのをレファレンスしたリリックがあるよね?

Vince: そうだよ。結構ヒップホップ界の中で、Lil Bow wowがダサいとかハードじゃないとか言ってるやついるけど、俺の知ってる彼はホットだよ。だって彼はファレルやティンバランドからビートを提供してもらってたし、T.I.もスヌープ・ドッグも彼を手伝ってたし、JD(ジャーメイン・デュプリ)とJay-Zが曲を書くのを手伝ってたんだぞ?それでもホットじゃないってどういうことだよ。皆意味もなくクソ野郎みたいな発言をしたり、アグレッシヴになるためにディスったりしたりするけど。

Charlamagne:でもやっぱり30歳のShad Moss(Bow Wow)は好きになれないよね?見栄を張るための、嘘のプライベートジェットの写真を投稿するようなやつ。

Vince:ここで言いたいことは、俺は「そういうイメージ」の彼は知らないんだ。俺はそんな「今の彼」を知らないし、俺が知っているLil Bow Wowはジャージーを着て、合成された犬と写ってる写真のやつだ。だからそれ以外は知らない。

 

ヒップホップ界でも度々ネタになってしまうようになったBow Wowであるが、Vince Staplesは今でもLil Bow Wowが好きだという。楽曲「Love Can Be」の「Never let a bitch lil Bow Wow me」というリリックでもレファレンスされている。しかし彼の言う「Lil Bow Wow」は、今の頻繁にネタにされてしまうShad Moss(Bow Wow)ではなく、当時の彼の全盛期なのだ。ジャージーを着て犬と写ってる写真とは、彼のデビュー・アルバム「Beware of the Dog」であり、ダブルプラチナ認定もされているアルバムである。

よく周りのくだらない「風潮」に流され、今まで自分が好きだったものに自身を持てなくなってしまう人は多い。しかしVinceは自分の好きなものをきちんと記憶のなかにとどめて、昔は昔、今は今、とわけているのだ。さらにWill Smithについての話題に移る。

 

Charlamagne:俺はその意見をリスペクトできるよ。俺もフレッシュ・プリンス(ウィル・スミス)についてそう思うんだ。

Vince:そりゃそうだろ。ウィル・スミスは超ハードなラッパーだよ

Charlamagne:フレッシュ・プリンスは超ハードなラッパーだったけど、本名ウィル・スミスに改名してからゴミだよ

Vince:いやいや、ウィル・スミスのMen in Blackは超ハードだったでしょ。

Charlamagne:ウィル・スミスは俳優としてはドープだけど、「Miami」「Gettin’ Jiggy Wit It」とはクソでしょ。

Vince:いやいや落ち着けよ!「Gettin’ Jiggy Wit It」は超ハードでしょ。あんたがあれを好きじゃないのは、その時に6歳じゃなかったからでしょ。

一同:(笑)

Vince:大人に向けられたものではなかったんだよ。「Wild Wild West」も「Miami」も子供たちにとっては最高だったんだよ。あなたは当時既に大人だったから、あの曲はあなたに向けられたものじゃないんだよ。

Charlamagne:でもウィル・スミスも大人だったじゃん。

Vince:それは大人が作った「Blue’s Clue(子供向け番組)」を子供に見せるのと同じだよ。子供番組は子供に見せるけど、別に大人たちがそれを純粋に楽しまないといけないということではないじゃん?そういうことだよ。

 

 

個人的には今「Gettin’ Jiggy Wit It」を聞いてもトラックはかなり格好いいと思うが、やはりフレッシュ・プリンス時代に聞いていたCharlamagneは、新しめのウィル・スミスの曲が嫌いなようだ。このように「何歳のときにその曲をはじめて聞いたか?」ということは、重要なファクターであると感じる。これは現代の「マンブルラップ」に対する議論にも共通することであろう。例えば今のアメリカの小・中学生たちにとっては、あのサウンドが自然なものとなる。

私が2000年代初頭に小学生だったころに、人気だったラッパーがLudacris、Nelly、Lil Wayneなどであった。学校でもそのようなアーティストの話で持ち切りであったし、私たちとってそれが「自然」なサウンドであった。しかし年上のヒップホップ好きは「リリックが弱い」や「リアルヒップホップじゃない」ということを言っていたのを覚えている。ところが今、当時流行っていた曲のYouTubeページのコメント欄を見ると、「これがリアルヒップホップだ」「音楽がこの時代に戻らないかな」というコメントで溢れている。とても興味深い皮肉を感じる。恐らく10年後にMigosやLil Uzi VertのYouTubeページ(もし存在していたら)を見たら「10年前のこの時代の音楽は良かった…」というコメントで溢れているのだろう。結局音楽というものはそのサイクルなのだ。耳は聞いて育った音楽を自然だと感じるのだ。もちろんインターネットの発達により、過去の作品を発掘しやすくなったので、当てはまらない若者もいるだろう。

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面白いと感じるのは、私はLil Wayneの最初の4枚が好きだったのだが、「Lolipop」辺りが出た頃から「うわぁこれは聞けないわ」となりはじめたのだ。2000年代後半から、流行りのヒップホップのサウンドが苦手になり、離れていた期間があった。しかし、最近改めてその時代のヒップホップを聞いてみると「あれ?当時は好きじゃなかったのに、普通に良いな」と感じたのだ。その経験もあり、瞬時に好きになれない音楽は「なるべく多方面から、フラットな耳を持って聞こう」という意識になった。この辺の議論は下記の記事がオススメである。

「最近の若者は先人たちをリスペクトしない」という批判について。Lil’ Yachty、ラップブーム、私のミッション

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

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