G-Eazyから学ぶ「目先のお金」にとらわれずにキャリアを作る重要性。H&Mとの契約を破棄したことについて語る。

 

 

アーティストの収入源

と言ったら基本的には音源の売上とツアーやグッズを思い浮かべるだろう。特に現代ではツアーとマーチャンダイジングを収入の主軸にしているアーティストは多く、インディペンデントアーティストにとって非常に重要なファクターとなっている。

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そんななか、自分の「イメージ」が確立できているメインストリームアーティストのなかには、ブランドとスポンサー契約を結ぶ者もいる。近年ではLil Yachtyがナウティカと組んだり、Joey Bada$$もPonyのクリエイティブディレクターに就任した。ケンドリック・ラマーは現在Nikeから独自モデルをリリースしており、ヒップホップアーティストが一般世間でも「イケてる」「オシャレ」の代名詞になったことが伝わってくる。

このようなスポンサー契約は、非常に大きな金額が動くため、メインストリームアーティストにとっては収入の大きな要素となっている。しかしこの度「億単位」の契約を破棄したアーティストがいる。それは先日Playatunerでも取り上げたG-Eazyである。

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彼が契約していたブランドとは、「The Coolest Monkey in the Jungle」というパーカーを黒人少年モデルに着せたということで問題となったH&Mだ。ご存知の方は多いと思うが、H&Mは現在インターネットの炎上だけには留まらないレベルで問題になっている。この件に関して知りたい方は、こちらのページでチェックして頂きたい。この件に関しては日本ではあまりピンとこない方も多いかも知れないが、今回はG-Eazyの判断力とビジネスの速さについて紹介したい。彼はこの件を受けて、H&Mとのパートナーシップを速攻切ったのだが、こちらのインタビューにてこのように語っている。

 

G-Eazy:俺は「自分の名前が何に使用されるか」ということに関して凄く敏感なんだ。誰とコラボをするか、自分が何をコーサインするか、その「ブランド」が自分が持っている全てだ。もし金のために自分が全く好きでもない、使用してもいない製品に名前を提供してしまったら、「一体人間として自分は誰なんだ?」という感じになってしまう。俺はH&Mのことが好きだったし、一緒に何かをできることを楽しみにしていたんだ。自分の服やブランドを世界中に広めるのに大きな機会だった。

でもあの件で、「これはOKじゃない」って思ったんだ。だから関わることができなくなった。契約を切ったことで大金を逃したけど、そもそも持っていなかったものを惜しむことはできない。母親に家を買った代金はあの契約金から出すはずだったけど、俺はそのお金以上に「自分の価値」を信じている。あの機会が俺のところに周ってきた「俺の価値」は、これで最後ではないはずだ。自分を信じていれば、彼らが俺に見た「価値」がなくなるわけではないし、いつかまた他の機会がくる。

大金をもらって酷い人間であることはできなかった。ビジネスの前に人間としての理念が重要だ。

 

このように彼は何故H&Mとの契約を破棄したのかを説明した。自分が「エンドースメント」するブランドは自分が好きなものに限ること、そして「契約金」としてもらえるはずだった目先の大金よりもロングスパンで自分の「人間」としてのキャリアを考えたこと。実際に彼は「白人」のラッパーとしても、もしH&Mとのキャンペーンを続けると公表していたら、「キャリア自殺」となっていただろう。億単位の大金を目の前にして、彼は自分が正しいと思ったことを実行し、ロングスパンのキャリアを選んだ。

これが単にヒップホップ界隈に媚びるためのPRスタントだと思う人もいるかもしれないが、彼が「目先の大金」を選ばなかったのはこれが始めてではない。彼は音楽ビジネスの学校を出ているからか、逆に出ているにも関わらずと言うべきか、彼はいつでもロングスパンで物事を考えているようにも思える。彼は新アルバム「The Beautiful & Damned」のコンセプトを伝えるプロモーションのために1億円ほどの映像作品を作ったのだ。しかしその予算はレーベルから降りたものではなく、自費で製作したものだったのだ。アルバムのコンセプトが上手く伝わる映像作品のアイディアが思い浮かんだとしても、レーベルから1億円ほどの予算が降りるわけがない。彼は「最高のクオリティのもの」を作れば、その1億円かかった映像が「何かしらのドア」を開くと信じていたのだ。そして彼は締め切りが4日間しかないなか、その映像作品を作った。目先の「1億円」という数字を見ると、完全に「なにやってんの?」と思う案件かも知れない。しかしリリース直前になってApple Musicがエクスクルーシブで買い取ったのである。

ビジネスとして、自分の価値に下に見積もらずに、正当な金額を要求することは重要である。その上で、彼はその「自分の価値」を下に見積もっていないからこそ、「目先のお金」ではなくロングスパンでの成功を手に入れることを選ぶことができているのだろう。そして徐々にその成果が出てきているのが見える。

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