【後半】長続きする良いイベントはどうやって作るの?DJ WATARAIとDJ U-YAに聞く人気イベント「GETBACK!!」の軌跡と想い【2000年~2005年ヒップホップ限定】

 

 

前半はこちら!

良いイベントや大きなイベントに足を運ぶなかで、「このようなイベントってどうやって作るんだろう?」と気になる方もいるだろう。また、イベントに参加するにつれて、「自分もイベントを作ってみたい!」と思う方もいるだろう。今回はそんな考えに対する一例を紹介するために、2000年〜2005年縛りのイベント「GETBACK!!」を主宰するDJ U-YAさん、そして毎回メインDJとして参加するベテランDJ/プロデューサーとして数々の功績を残してきたDJ WATARAIさんにお話を聞くことができた。

インタビュー前半とイベントの詳細はこちら!

 

「こいつらがこんなに頑張っているなら俺らも頑張ろう」って思ってもらえたら、また一つ存在意義ができる

 

➖「◯◯を実現したい」ということを考えたとき、私がメディアをやる上でも凄く意識しているところが「どのレイアーにアウトプットされるか?」ということなんですよね。例えばその目標が「自分にとってプラスになる」というアウトプットなのか、「社会/コミュニティ/文化にとってプラスになる」というアウトプットなのか?自分が作るコンテンツが、自分たちの懐を肥やすためのものなのか、社会/ヒップホップ文化/コミュニティのためのものなのか?ということを考えるようにしていて。どこまでその「実現したいこと」を落とし込まれているのか気になりました。

DJ U-YA:そこまで落とし込んで話したりもしますね!「実現したいこと」で言うと、まずは「自分たちが楽しむ」というのは大前提であって、そこに共感してくれるお客さんを増やしていきたいってのはありますね。「自分たちが楽しいと思うもの」をより多くの人達と共有していきたいです。

GETBACK!!」というパーティー名は、Ludacrisの楽曲「GETBACK!!」からとっていて、Ludacrisをゲストライブに呼びたいという目標があるんですよね。来年には誰かしら外タレを呼びたいと思っているのですが、再来年は10周年なので、そこでLudacrisを呼ぶというのを目標にしています。そしてその景色を皆で見たいというのを共有して、「外タレを呼ぶにはどうしたらいいか?誰を呼ぼうか?」ということを考えて、皆でそこに向けて走っていっている感じですね。

また、俺らって30代後半が多くて、年齢的には結構オッサンなんですよ。そんな「売れているわけではない人間たち」がこうやって楽しみながら、影響力のあるものを作っている姿というものも届けたいなと思ってますね。それで「こいつらがこんなに楽しそうに頑張っているなら、俺らも頑張ろう」って思ってもらえたら、また一つ存在意義ができるのかなとも考えていて。そして他のイベントなどにも影響を与えられるようなイベントになれたらいいな、と思います。こういうこととかは出演者に話したりしていますね。

その上でGETBACK!!を大きくしていきたい旨、集客の話に繋げるようにしていますね。

 

➖ Playatunerにピッタリな内容を頂きました!そのような少しずつ「還元」したいというか、良くしていきたいという「想い」って、僕は自分のWEBメディアというプラットフォームを持っているので発信できるのですが、このようにイベントの「想い」とかってなかなか取り上げられないと思うんですよね。そういうことも、メディアとしては発信していくべきなんだなって感じました。

「想い」に共感して、自分の人生が影響されたから、音楽を買い続けたりイベントに行き続けたりすると思うのですが、そういう意識を持った人たちを増やす土台作りって音楽業界や音楽メディアが今まで出来なかったことなんじゃないかなって考えてます。

独自でそのような「想い」を公に発信とかってされてますか?多分出演者とかにはマンツーマンで話せるから伝わると思うのですが

DJ U-YA:そうですね。「GETBACK!!」に関して、「もっとコンセプトを言葉にして発信していかないとね」って仲間と話しています。出演者だけじゃなくて、お客さんが「合うか/合わないか」ということを判断するためにも、コンセプトを発信していくのは一つの手だなと考えています。それで「GETBACK!!」のことをもっと好きになってくれる人もいると思うので。

 

➖そういうコンセプトや「ブランディング」の本質的なところも含めて、凄くちゃんと運営されているな、と感じました。

DJ WATARAI:今むしろ隣で聞いていて感動しちゃったよ(笑)

 

「これを実現したい」と考える目標は、個人レベルのものも、マクロなものもある。その複数のレイヤーに存在する「目標」というものをどちらも言語化をし、人々に伝える。それが出演者の支持も含め、「GETBACK!!」独特の空気感を作っているものなのだろう。

 

お金を持っている大きな企業がLudacrisを呼びたいからageHaでイベントをやって、数千人を集客しました!ってやってもそこまでの意味がないと思うんですよ

 

➖UNDERBARからClub AsiaからageHaに規模を広げていくにつれ、意識していることはなんですか?規模を大きくしていく上で意識するフィードバックとか、気をつけていることはありますか?

DJ U-YA:フィードバックに関してはやっぱり、「お客さんがもう一回遊びに来てくれるか?」ということを重要にしていますね。会場の空気感などを含めて、お客さんにちゃんと刺さっているか?ということは常に意識していて、実際にイベントが変化する上でお客さんが増えたり若干減ったりもしているので、自分たちがやりたいことを明確にしながら最終的にはお客さんに選んでもらう為の施策を研ぎ澄ましていくって感じですね。もちろんお客さんに刺さるか?というのは当日の自分たちのプレイも大きく影響するので、そこもイベント後にプレイリストを確認しながら話し合ったりします。

あとイベントを大きくしていく中で大切にしているのは、どんなに大きくなってもUNDERBAR時代の「小箱の空気感」というものをキープしていきたいということですね。知り合いが知り合いを呼んで、お客さんと一緒にイベントを作りあげていく感じです。例えば、お金を持っている大きな企業がLudacrisを呼びたいからageHaでイベントをやって、2000人~3000人を集客しました!ってやってもそこまでの意味、感動がないと思うんですよ。「いかにして今まで大切にしてきた価値観をageHaにも引き継いでいくか」ということは真剣に考えています。

 

➖レギュラーで出演されているDJ WATARAIさん的にも、やはり他のイベントとお客さんの感じとかは違いますか?

DJ WATARAI:そうですね!やっぱりコンセプト通り、お客さんも出演者も当時の熱量を再現できてると思いますね。しかもそれが変に懐メロ感があるわけでもなく、当時の曲を今の現行のクラブイベントとして成り立たせている感じがありますね。そういう意味で楽しいですし、凄くバランスが良いです。

DJ U-YAWATARAIさんのプレイに関しては、僕は当時からWATARAIさんのプレイを聞いていたので、昔と今で曲の並べ方の違いとかもあって、勉強になってます。今の盛り上げ方で当時の曲をかけつつ、当時のお客さんが楽しめるものにもなっているので、イベントにとってWATARAIさんの存在は大きいですね。無くてはならない存在です。

DJ WATARAI:あざす(笑)

 

➖今後の展望について

DJ U-YA:今は深夜帯でやっているので、昼帯でももっと挑戦してみようとは考えています。また、明確には決まっていないのですが、例えば海外のパーティーとコラボしてみたりとか、自分たちが好きな年代の曲とか空気感で、海を越えて一緒に盛り上がれたら最高だなって考えてます。Ludacrisを呼ぶところまでは、「夢」というよりは「目標」に近い形に持っていけてると思うので、「夢」と言ったら「GETBACK!!」を気に入ったLudacrisとワールドツアーとか出来たら最高ですね(笑)

➖それめっちゃ熱いですね!

 

「イベントの軌跡」は深くお聞きすることができたので、最後に2000年代についてお聞きしたいです、GETBACK!!で一番盛り上がるのはどんな曲でしょうか?

DJ U-YA:まずはLudacrisの「Get Back」絶対に盛り上がりますね。やっぱり当時のヒット曲は大体盛り上がります。Nellyの「Ride Wit Me」とかも盛り上がりますね。

➖Lil Jonの「Get Low」とかTerror Squadの「Lean Back」とかも盛り上がりそうですね!

 

➖DJ WATARAIさんが2000年代に影響を受けたプロデューサーは誰ですか?

DJ WATARAI:いやーあの時代はやっぱTimbaland、Neptunes、Just Blazeですかね〜。でも一番影響を受けたのはJust Blazeですかね。Scott Storchとかは、僕的には偏差値高すぎて真似しようとは思わなかったですね。

2000年代というと、まだ90sのブームバップの流れが日本では全然残ってたので、やっぱJust Blazeが一番影響受けましたね。Dreとかは90sからミュージシャンを使ってやってましたけど、どちらかと言うと「いかに人がもってないサンプルを使って新しい音楽を作るか?」って美学が強かったんですよね。2000年に入ってくるとミュージシャンを使って作るのが「新しい」って風潮もあって、それにも影響されていたと思います。

 

➖あまり抵抗なく入ることができたのですか?

DJ  WATARAI:2000年のときにニューヨークに行って、完全にやられてしまったんですよね。それこそサウスのヒップホップもそうですけど、一気に入っちゃったんですよね。

 

➖ちょうどクランクとかも出てきたときですもんね。今はどこに行ったのか?というアーティストもたくさんいますが。結構新しいサウンドが出てきたとき「これはクソだ!こんなのヒップホップじゃない!」って言う人もいますが、サウンド的には違和感なかったのですかね?

DJ WATARAI:クラブでDJしてたからってのもありますけど、ハーレムとかの大箱でやってて、常にメインストリームをかけないといけないという状況もあったので、受け入れることができたのもありますね。もしかしたら今のトラップとかもDJをやってなかったらあまり聞いてなかったかもです(笑)音楽としては大好きですが。

 

➖ありがとうございました!6月9日楽しみにしております!

 

「イベント」としてのコンセプト/理念を持ち、さらにはストーリーを打ち出す。皆でそのストーリーを作ることに協力し合い、組織として運営する姿は多くのプロジェクトの参考になるだろう。イベントを作る上で重要なことを語って頂いたが、彼らの理念から空気感を実際に味わってみるのが楽しみである。UNDERBARからageHaまでイベントを持っていき、8年という年月のストーリーを感じることができることを期待している。「コンセプト/理念を作り、そしてそれを体現して伝える、出演者もお客さんも同じ目線で楽しむ」、「GETBACK!!」が成長したバックボーンにはこのような要因があったのだ。「これからイベントを作ってみたい!」と考える方にとっても参考にしてほしい熱い想いを聞くことができた。

そんな「GETBACK!!」の8周年記念パーティーは、6月9日にageHaにて行われるので要チェックだ。

Event Info
GETBACK!! Facebook
・GETBACK!! Mixcloud
DJ WATARAI Interview

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