車での寝泊まり生活から5年でForbesに載った23歳のラッパーPhora。2度死にかけた経験とビジネスの成功

 

 

若くして

苦悩と成功を味わったラッパーと聞くと、誰を思い浮かべるだろうか。2Pacも亡くなったときは25歳であり、非常に若くしてローラーコースターのような人生を歩んだ。そんな若くして苦悩と成功を味わったラッパーたちに仲間入りしたラッパーがいる。それがPhoraである。もしかしたら日本ではあまり有名ではないかもしれないが、彼はYouTubeジェネレーションのラッパーとしてネットで話題になり、等身大でありリアルなリリシズムによってファンベースを築いてきた。(ネット時代に同じように表にでてきたラッパーはこちら

 

そんな23歳のPhoraはこの度Forbesに載ったのだが、彼はツイートでこのように語った。

5年前、俺は行く場所がなくて車のなかで寝ていた。何もないところからForbesにいきついた。

 

彼はどのような人生を歩んできたのだろうか?彼はOCにあるアナハイムという町で生まれ育った。OCというと数々のドラマの影響もあり、非常にリッチな場所だと思われがちであるが、なかには治安が悪い場所もある。彼は上記の「My Story」にて、シングルマザーの一人っ子として育ち、母親の彼氏に虐待されていたこと、学校では馴染めずにカウンセリングを受けていたこと、ギャングではないが悪い友達とつるむようになったことを語った。しかし15歳の頃に昔つるんでいたやつらに下校中に刺され、危うく命を落としそうになったのだ。楽曲内では、一度気を失ったが、下校中に誰も助けてくれないから学校に戻って自分で救急車を呼んだと語っている。さらに2015年には、LA内を運転しているときに、何者かによって3発撃たれている。ギリギリ背骨を回避できたため、一命をとりとめた。彼はギャングとの関係は全くないと語っており、今だに犯人の特定ができていないらしい。彼は家族を危ない目に合わせるような活動はやらないという理念を持っている。

 

そんな彼は今年までレーベルと契約しておらず、マネージャーもいない状態で活動をしていた。今年に入りワーナー・ブラザーズとメジャー流通のパートナー契約したが、彼は2011年に立ち上げた「Yours Truly」という独自のレーベルで活動している。23歳の彼がForbesにて名を挙げたのは音楽活動の結果として得た「グッズ」の売上である。「Yours Truly」をブランドとして、マーチャンダイジングで想像以上の売上をあげているのだ。

Forbesの報道によると、彼の「Yours Truly」のブランドは、ブラックフライデーセールの24時間で2.5億円ほどの売上をあげた。8000円弱のアイテムを3万点売ったらしく、23歳アーティストのインディペンデントなマーチャンダイジングとしては信じられないほどの売上である。今まで何もなかった若者が、インターネット上のラップでファンを集め、「ブランド」を確立し、経済的に成功した事例である。人々が彼の経験、内心を素直に伝えたポジティブなリリック、ストーリーに共感し、コアなファンとなったのだ。

これは以前紹介したNipsey Hussleの例に非常に似ているように感じる。「アーティストがファンベースを築く」と言うと、近年だとどうしてもITを駆使しないといけないという風潮がある。特に最新技術に集中しているエンターテック方面のイベントなどにいくと、その風潮をヒシヒシと感じる。しかしNipsey、HopsinblackbearRuss、Phoraの例を見ると、話題になり、露出するのはインターネットであるが、実際に「売上」を上げるのはリアルな「商品」であると感じる。アイドル的な稼ぎ方ではなく、オーセンティックに活動するということはそういうことなのかもしれない。しかし23歳でここまでの経験をし、成功を収めた彼には心から感心する。今後も彼の快進撃は止まらないだろう。

Nipsey Hussle「俺らはストリートのサンリオになる」彼のビジネスセンスとコンテンツ・クリエイターとしての戦略から学ぶ

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