Jay Electronicaの「アルバムは間違ったコンセプトだ」発言を考察。アルバムを一生出さないであろう理由

 

永遠の新人

と呼ばれているJay Electronica(ジェイ・エレクトロニカ)。彼は高いラップスキルがありながらも、未だにデビューアルバムをリリースしていない。2009年の “Exhibit C”やミックステープやらはリリースしているが、正式なアルバムは一枚もリリースしていないのである。もう7年もJay ZのRoc Nationと契約しておきながらも、ほぼ続報がないまま7年間が過ぎてしまった。40歳というラップ界では大御所と言っても過言ではない年齢だが、彼は今も新人なのだ。

そんな彼がビルボードのインタビューにて「アルバムは間違ったコンセプトだ」と発言した部分が他社メディアでは報道されているが、それに加えてJay Electronicaに少しツッコミを入れたいと感じる。

 

彼は95%の確率でアルバムを出さないと感じる


私はJay Electronicaが好きだ。ラップのスキルもリリックも素晴らしいと感じる。しかし私が一生彼のアルバムを聞くことはないとほぼ断言できる。それにはいくつかの理由がある。

① TOYOTAでさえ彼にラップさせることはできなかった

去年公開された彼とTOYOTAのコラボ映像を知っているだろうか?「映像かっこいい」と感じるかも知れないが、私はこれを見た時複雑な気持ちになった。それは「ラップしないのかよ…」というツッコミから生まれる落胆でもあった。彼は「ラップするふり」をして乗り切っているのだ。例えそういうコンセプトであってもJay Electronicaがやるだけで「あぁこの人はもうラップしたくないのかな?」と感じてしまう。「Music in Motion(音楽の動作)」というコンセプトの映像なのだが、彼が一番動作するときは「アルバムリリースをしない理由」を一生懸命説明しているときなのかもしれない。

②何故リリースをしないのか?にたいする理由

彼の落ち着きのなさは置いておき、数日前のComplexニュースにてJayはこのように言っている。

「何かを作って時間が過ぎると、趣向/スキルが変わっているのでそれに満足できなくなるからまた変えるんだ。それに時間制限をかけることはできない」

言いたいことはわかるが、これはアーティストとして当たり前の話であり、全てのアーティストはそれを乗り越え作品をリリースするのだ。むしろ過去の自分とのバランスをとりつつ、スピードとクオリティを担保し確実にリリースするのもアーティストとしての「スキル」だと感じる。完成させ、反省点を次に活かすのも「プロ」の立派な仕事だろう。彼の言いたいことはわかるし、アーティストとしての苦悩はリスペクトするが、「リリースしてみないとわからないこと」もあるのだ。「自分はラップの神」だと言ってみたり、50 Centやケンドリックをディスったりしているうちに、既に40歳というのもあり、恐らく本人と他人からのハードルが高くなりすぎて本人も判断ができなくなっているのではないかと感じる。

この状況を考えると一つ思い浮かぶ事例がある。それはDr. Dreのついにリリースされなかった「Detox」である。

「Compton」はリリースされたものの、「Detox」はかなりハイプされてきたにも関わらず結局リリースされなかった。DJ Quikなどが「Detox」用の作業をやっている動画を見る限り、もしリリースしていたらかなりのヒットになったかもしれないと感じる。というわけで、Jay Electronicaは恐らくアルバムを一生リリースしないだろう。リリースした頃には既に遅し、とならないように祈るばかりだ。

アルバムは出せないかも知れないが、渾身の1曲でも良いので期待しています!!

SZA「アルバム完成のためにレーベルにハードディスクを奪われた」アーティストが抱えるジレンマについて考える

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

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