DMC「Run-D.M.C.の後継者は◯◯」その答えと理由に違和感を覚える人が多数。しかしそんなことより…

 

 

真のヒップホップ・レジェンド

は誰だろうか?Kool Herc、グランドマスター・フラッシュ、Rakim、Dr. Dre…この他にも様々なアーティストを思い浮かべる。そのなかでも絶対に外せないのがRun-D.M.C.である。彼らほどヒップホップにインパクトを与えたグループはいないのではないだろうか?Ice Cubeが言うように「Run-D.M.C.がヒップホップをロックスター的な地位に押し上げた」のだ。

「Hip-Hipがロックスター的な地位になったのはRun-D.M.C.の功績だ」Ice CubeのRun DMCに対する想いを語る

そんなRun-D.M.C.のD.M.C.がGQのインタビューで語っていることが面白いので紹介したいと思う。彼は「Run-D.M.C.のバトンを受け継いでいる人は誰ですか?」という質問にてこのように答えた。

 

D.M.C.:今のヒップホップを見ると、誰も「責任」の中核を担っている人はいない。悪い言葉を使わないことや、女性をディスしない…まぁRun DMCもセックス/ドラッグ/ロックンロールな人生を生きていたけど、そのようなイメージやコンセプトを音楽に落とし込まなかった。それは俺らを見ている若い人たちがいるからだ。俺は、スモークしたドラッグ、吸引したコカイン、寝た女などについてラップしたことがない。

そんな意味で、一番近いのはChance the Rapperだな。

 

まずは、彼の「自分がやったことが、悪影響を及ぼす場合はラップにしない」というポリシーに関しては、様々な意見があるかもしれないが、彼の「アーティスト性」ということで納得する。むしろN.W.A.が「実際に起こってることなんだからラップしてもいいだろ」というスタンスをやるまでは、曝け出すということは許されていなかったのではないか?と感じる部分も少しあるが、それは単純に「アーティスト」としての目的の違いであろう。周りを気にしない「内なる表現者」になるのか、「ロールモデル的な存在」になるのかによって、活動の内容も大きく違ってくる。彼らは曝け出していないが、紛れもなく素晴らしい伝説級のアーティストなので、この発言はこの記事にては注目ポイントではない。

ネット上で議論が起きているのはそこではない。彼がChance the Rapperの名前を挙げたことだ。勘違いをしないで頂きたいが、Chance the Rapperは素晴らしいアーティストであり、この時代の「光」だ。

しかし「ドラッグなどについてラップをしない」という理由で彼の名前を挙げたとしたら、Chanceの音楽をあまり聞いたことはないのでは?という意見がHipHopDXなどのコメント欄でも見受けられる。Chanceは「Acid Rap」という素晴らしいプロジェクトを出しているのもそうだが、Xanax中毒だったこともリリックにて何度もラップをしている。彼は今はドラッグから抜け出し、クリーンになったが「Xanaxは新しいヘロインだ。騙されるな」ともツイートしている。

若者のドラッグ使用とヒップホップ。Action Bronson、Lil Pump、Chance the Rapperを例に考える

しかしドラッグについてラップをしていても、リリックにて伝えている「本質」は他のドラッグリリックとは違うと感じる。彼はドラッグについてラップする場合も、助長するのではなく、自分の一経験として「俺はこうだった。あかんで。」と曝け出しているのだ。そのように考えるとRun DMCのパターンとは逆なのでは?と感じる。

私生活ではセックス/ドラッグ/ロックンロールだったがそれについてはラップをしないDMC、クリーンになったが自分の経験をアートとして曝け出すChance…似ているようで正反対の性質を持っているのかもしれない。どちらにせよ、双方とも素晴らしいアーティストであり、ChanceもいずれかはRun DMCのような伝説ステータスに上り詰めると感じる。

 

しかし原文のインタビューを読んでいると、そんな議論がどうでもよくなることが書いてあった。

 

どうやらDMCは今アルバムを作っているのだが、そのゲストがヤバイのだ。なんとパンクバンドRancidのTim Armstrong、ドラマーのトラヴィス・バーカー、ジョーン・ジェット、チャックDなどとコラボをしているらしい。なんとも素晴らしいメンツだ。さらにはヴァン・ヘイレンの元ボーカリストのSammy Hagarとのライブもやったらしい。彼はこの年になっても「ジャンル」という想像上の壁をぶち破るつもりなのだ。DMCのロックへの愛は以前から有名であるが、このアルバムが今から楽しみである。

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