Nasがトランプや政治について書いた文章がとてもパワフル。彼のメッセージを解説/考察

 

 

音楽とプロテスト

は常に隣り合わせであった。隣り合わせというより、音楽のなかにプロテストが生きているのかもしれない。特にヒップホップは歴史的にも公民権運動的な側面も強く、込められたメッセージはどのジャンルよりも強い場合もある。

2016年にリリースされたプロテスト曲を5曲厳選し、解説。

特に今年はドナルド・トランプが大統領に就任し、彼のポリシーに対するプロテストが多く行われている。ヒップホップ界でもYGをはじめとしスヌープ・ドッグエミネムなど様々なアーティストがトランプに対してものを申しており、プロテスト音楽としての本領を発揮しつつあると感じる。そんななか、政治にたいして今まで数回発言してきたのがNasである。彼は今までジョージ・ブッシュを批判したり、オバマに対して喜びを表したりしてきた。そんな彼がMass Appealにて綴った文章がとてもパワフルなので、ハイライトを紹介したい。

 

From: Mass Appeal

Nas:黒人がアメリカにて普通に生活するためにはO.J.シンプソンみたいなスタンスを取らないといけない。「俺は黒人じゃない、俺はO.J.だ」というスタンスだ。人々が抱える問題を無視をし、幻想のなかに生きることにすれば、平和を得ることができる。世の中で起こっていることは、既に人の心を狂わせるのには充分なことだ。

それでは俺はどんなスタンスか?俺は「人」として、「自分がやらないといけないことをやる」というスタンスだ。自分が生まれてきた理由と運命を全うするために生きる。誰も俺という人を決めつけることはできない。俺が何をしていいか、何をしてはいけないかなんて、誰も指示できない。

彼らのシステムの都合で、何が「正しい」かなんて押し付けることはできないし、それを俺に信じさせようとすることもできない。

創造主は俺たちに役割をくれたから、俺はその役割を全うする。だから今は政治に注意を向けていない。政治に注意を向ける理由なんてない。俺にとってはそんなことはナンセンスなんだ。

 

自分の役割を全うするスタンスと冒頭で語ったNas。誰に何を言われても彼の「役割」は変わらないと語る。さらに政治について言及する。

 

Nas:人種差別主義者が現在の大統領であることは皆知っている。人々が何を言おうが勝手だ。コメディアンが人種ジョークを言うことは別にいいし、皆その時々考えていることはある。でも「大統領」という責任があるポジションの人がそうだと、自分のグループの外部に「お前は無価値だ」という強いメッセージを送っていることが明らかにわかる。

そのようなことは政治にフォーカスをしなくても伝わってくる。もし次に投票をするとしたら、別にニュースを見ていなくても、誰に反対するかはすぐに理解できる。「次に世の中をよくしてくれそうな人は誰だ?」ということを調べればいいんだ。

俺が世の中の問題について言及するのは、俺の「仕事」を通してだ。どんな大統領だったとしても、それが直接自分の「仕事/音楽」に影響を及ぼすことはない。自分に影響を及ぼすのは、彼が「人々にどんな影響を及ぼすか」という事実だ。周りがどうなっているかを観察し、それをクリエイティブプロセスに落とし込む。「大統領」という「人物そのもの」にとらわれることはないし、トランプやペンスのという人物に使う時間なんてない。彼らはどうでもいい。

 

「政治」や「トランプ本人」にフォーカスしなくても、彼が伝えるネガティビティが伝わってくるとNasは語る。「トランプという1人の存在」にフォーカスをするのではなく、自分の周りがどう変化するのかをアートに落とし込むのである。誰が大統領だっとしても、自分のやることは変わらないのである。自分の国にて何が起きているかに注目しつつも、「大統領」という「人物そのもの」にとらわれることはないと語っている。

 

Nas:どんな情勢でもアートは繁栄する。誰が大統領であってもアートは繁栄をする。俺はそのなかで生きている。そのアートの壁、ワイヤー、鉛筆、紙、音のなかに生きている。政治に囚われることはない。俺は生きている間にフォードとその副大統領のロックフェラーを経験した。ジミー・カーターも、ロナルド・レーガンも、ジョージ・ブッシュSr.も、クリントンも、ジョージ・ブッシュJr.も、オバマも全員経験した。俺は政治に「囚われない」。

大統領というポジションは今では手が届かないポジションではない。オバマが誰もが大統領になるチャンスがあると証明してくれた。俺は自分が小さい頃、夢を見ていた全てのことをやっている。レーガンのような黒人コミュニティを明らかに破壊する政策をやっていた大統領もいたが、俺は全ての夢を叶えている。俺が生まれたときから、マイノリティを支配するような法律が施行されていたが、俺はそれを生き抜いた。

俺は10代の頃、東洋哲学について読み、全てのことに「バランス」が見えるようになり、冷静な頭で考えることができるようになった。特に現代は様々なリソースがあり、多くの情報が入ってくる時代だ。トランプ政権であっても、なくても「情報」が多く入る時代であることには変わらない。だから俺には愚痴を言ったり、ダベる時間はない。俺には「行動」をとる時間しかない。俺が「喋る」ときは「行動」をとるときだ。

 

彼が言っていることは、まさに現代社会にて最も重要であることだと感じる。この最後の部分を要約するとなると

様々な惑わしがある情報過多な社会であり、マイナスなできごともあるが、全てにはバランスというものがある。なので自分がやらないといけない役割を自覚し、「行動」を起こすことにフォーカスしよう。

ということであろう。確かに現代社会ではネット上も含め、様々な議論が行われている。多くの問題を抱える社会だからこそ、そのような議論に時間を使う人も多いだろう。しかしそのような議論で何かが解決することがあるのだろうか?あるかもしれないが、自分が本来やらないといけない「役割」が疎かになっていないだろうか?とNasは私たちに投げかけていると感じる。海外メディアでも「Nasがトランプが人種差別主義者だと発言」と報道をしているところが多かったが、彼のメッセージの本質はとても深く「人々の生活レベル」まで落とし込んだものだと感じた。下記に貼った彼の「I Can」という曲にも共通するメッセージなのかもしれない。

Nasはレーガンという大統領の元でも生き残り、自分の夢を叶えており、どのような政権下でも彼は成功をしていただろう。もちろん自分の国について何が起こっているかについては注目をしており、言及もしてきた。しかし政権を理由に諦めたり、「時間に囚われたり」はせず、自分の「役割」と「アート/表現」にフォーカスをし、行動してきたのだ。こんな世の中だからこそ、自分の役割にフォーカスし、行動を起こすことが大切だと教えてくれていると感じる。

Nasがハーバード大学の教授に「It Ain’t Hard to Tell」のリリックの一部を解説する。解説されたリリックを紹介

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