RZAがWu-Tang ClanのプロダクションをMathematicsにバトンタッチした理由を語る
Wu-Tangサウンド
はRZAのサウンドであり、彼ほどハンズオンな人物はなかなかいないだろう。Wu-Tangのリーダーとして、そしてプロデューサーとして彼がヒップホップ界及ぼした影響は計り知れない。
そんなWu-Tang Clanが新アルバム「The Saga Continues」をリリースした。このアルバムはWu-Tang名義のアルバムであるが、実はRZAではなく、DJ Mathematicsがプロデュースをしている。RZAはエグゼクティブ・プロデューサーとして手を加えることになったが、RZA以外のプロデューサーが全曲プロデュースしているWu-Tangアルバムはこれが初となる。
そんなMathematicsはWu-Tang ClanのDJとして、そしてあの「W」ロゴのデザイナーとしても知られている。何故今回RZAはMathematicsにバトンタッチをしたのだろうか?彼はこのように語る。
RZA:Mathematicsの才能はいつの時代も素晴らしかったけど、完成形に近づいてきたのがわかったんだ。彼がアルバムとか関係なしに作っていた音楽を聞かせてもらったら、俺が忘れていた「真のWu-Tangサウンド」を思い出したんだ。俺は最近では映像とかディレクションをやってるからね。自分のクルーのなかでその「真のWu-Tangサウンド」を作れる人が出てきたことに喜びを感じるよ。だからタイトルが「The Saga Continues」なんだ。
俺はもう大人で、昔ほど固執していないんだ。「自分しかできない」と感じることって多いから、「俺にやらせろ」とか「俺が教えてやるよ!」ってなる。でも他の人が実際にできているところを見たのであれば、それが手放して機会を与える時だ。
RZAは自分がプロダクションを手放した理由を語った。元々全てに携わり、かなりハンズオンであった彼がプロダクションから降りたのであれば、それには大きな意味があるはずだ。彼は「自分しかできない」という状態から、「Wu-Tangサウンドの後継者」を作る人物を見つけ、そして認めることができたのだ。Mathematicsも実際にはベテランであり、「次の世代」とは言えないかもしれないが、RZAが認めることができたという事実が非常に重要であるように感じる。
これはもちろん仕事や職人にも当てはまる話であろう。自分が特出したスキルを持っていることは、社会的に必要とされるが、最も必要とされるのはそのスキルが一般化されるような仕組みを自分で構築することなのかもしれない。特に仕事の場合は、いかに次の人に引き継いでもらえるかによって、その組織のレガシーが変わってくる。親が子供に自分の想いを込めるように、このプロセスにおける最初のステップであり、一番重要なことは「認める」ということであろう。
もしRZAが「いや〜Mathematicsは良くなったけど、俺のほうがスゲェから!」となっていたら恐らくWu-Tangの新アルバムは制作もされずに、将来のキッズにおける彼らのイメージも徐々にフェードアウトしていたかもしれない。そんななか、RZAが仲間に聖火を渡したのもあり、Wuのサーガ/レガシーは今後も続くであろう。
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