「Eric B. & Rakim」のツイッターアカウントに関してRakimが正式な声明を出す。彼自身の意見は?
フェイクニュース
が世の中には蔓延るなか、ヒップホップ業界にも影響を及ぼしているということを以前は書いた。Eric B. & Rakimのツイッターアカウントが「ヒップホップは退化している」とツイートしたことが話題になり、多くのメディアがそれを「Rakimが書いた」としていた。
しかし以前Eric B. & Rakimのツイッターが「トランプ支持」のツイートをしたとき、Rakimの代表からは「このツイッターアカウントにRakimは関与していません」という声明が発表されたのだ。詳しくは上記の記事を読んで頂きたいが、そのためPlayatunerでは取り上げる前にファクトチェックとして一旦保留をした。上記の記事では、素早く情報が入ってくるインターネット時代には一旦独自で調べたりする時間を取る「責任」があるという旨を書いた。
そしてこの度のEric B. & Rakimツイッターの「ヒップホップが退化している」議論であるが、新たに彼のマネージャーMatthew Kempから正式に声明が発表された。米メディアDJBoothが実際に彼のマネージャーにコンタクトするというナイスジョブをしてくれたので、その声明を紹介したい。
Matthew Kemp:「Eric B. & Rakim」のツイッターアカウントはRakimとは関係ない第三者のマネージメント会社にマネージングされています。Rakimは直接アカウントの投稿に貢献することはなく、他の投稿やメッセージも彼によってレビューされたり認可されていません。
今回の投稿群も彼の感情を反映したものではありません。彼は自分の個人的な趣向はありつつも、「ヒップホップとは常に個性的であり、実験的であった」と言っております。彼が批判するのはアーティストが自分にとっての真実を捨て去り、流行を追っているときだけです。彼の言葉をそのまま使用すると「他人が”こうやれ”と言った自分ではなく、常に”自分”であれ」ということです。
実際にRakimは「ヒップホップの退化」というツイートをしていないという声明を出した。しかし彼が個性ではなく「流行」を追っているアーティストに対して疑問を感じていることは事実である。「個人的な趣向」はやはり近年のヒップホップの流行りに疑問を感じているということなのだろう。しかし彼は「実験的」なものは、例え自分が好きでなかったとしてもアーティストとしては認めたいと言っているのだ。
さらにこの度TMZにてRakim本人が登場をし、この件について語っている。この動画のタイトルがまた「クリックベイト」的であり、「TMZだなぁ…」と感じるがその動画を紹介したい。
「Rakimがミレニアル世代がラップを破壊していると言っている!」というタイトルの動画となっているが、本当にそう言っているのか?彼の本音はどうなのか?この動画で彼が語ったことは下記だ。
Rakim:面白いのは、この投稿はEric B. & Rakimのツイッターからポストされたものだが、俺はその情報を知らなかったんだ。ヒップホップはこの長年で、色んな道を辿ってきた。俺は1986年から業界にいるわけだが、そのなかでもヒップホップは色々な方向に行った。俺は単にヒップホップが繁栄しているのを見たいだけなんだ。
➖でも実際にチャートとかを見ると「繁栄」してるよね?今やヒップホップは巨大だ。
Rakim:巨大な業界になった。俺が言いたいのは、若いアーティストには「若いアーティスト」をやらせてあげないといけないんだ。俺も一時期は若いアーティストだった。でも「ラップ」と「ヒップホップ」の違いを知ってほしいと思うんだ。俺は「ラップ」にたいして文句はない。俺はリリシストの時代から来ているけど、「自分」を表現している若いアーティストを批判することはできない。そいつらはヒップホップに命を与えてる。
➖俺にとって「ラップ」というのは、社会的でありディープな意味が込められたものだったけど、10年前ぐらいからシャンパンと宝石についての内容になった。今ではシリーなネタ要素があるけど
Rakim:そうだな。俺の時代はもっとコンシャスなリリックが多かった。その時は「アート」が「ストリート」の真似をしていたんだ。「ストリート」が「アート」の真似ごとをしているのではなく。ネイバーフッドで何が起こっているか常に意識していて、コンシャスなムーブメントがあった。そして人々が社会に注目するようになっていった。政治にも地域にも注目したいという人が多かったけど、それは今は違う。
➖もう一度聞くけど、そんな若者アーティストの具体的な名前は?
Rakim:まぁ俺は今とは正反対な時代から来ている人だから、誰かをディスリスペクトしているわけではないが、たしかに文化と社会の品位を下げているような音楽はある。でもそれはそういう音楽を作る選択をした「個人」の話だ。逆にリスナーも自分たちが何を聞いて、何を好んでいるかの意見を言うべきだ。それによってアーティストたちも「内容」のある曲を作るようになるかもしれない。
➖なるほど、具体的な名前は言わないのね。
Rakimがこの話題について話している全文を訳した。このインタビューを見る限りわかることは①Rakimは確かに近年のアーティストに疑問を感じている ②そのようなアーティストを批判したいが、「個性」を認めるために括って批判はしたくない ③確かにヒップホップの品位を下げているアーティストは多いが、それは「個人」だ。ということを感じているのだろう。実際彼はあのツイートをしていなく、「色々な形を認める」というスタンスではあるが、少なからず近年のヒップホップの方向性に憤りを感じていることもあるということが伝わってくる。
しかし彼は明確に「そのような個人がいる」と言っており、一度も「ミレニアル世代」と一括りにしたり「破壊している」などの言葉を使用していないのに、このTMZ動画のタイトルは「ミレニアル世代がラップを破壊している」となっており、「さすがゴシップ・メディアだ」という感想だ。アクセス数のために彼が使用していない表現を大々的にタイトルに使用しており、タイトルだけを読んだ人が勘違いするものとなっている。ここからもやはり自分でちゃんと調べる重要性がわかってくる。
「ヒップホップ」と「ラップ」の違いについて言っていたが、Rakimの「MC」と「ラッパー」の違いについてもオススメである。
ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。
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