Tech N9ne、Nipsey Hussleなどインディペンデントに活動するラッパーたちの活動を紹介。Playatunerのラジオ番組「Booze House」Vol.5 #Booze813 #Jwave

 

 

J-Wave × Playatuner

2018年10月からJ-Wave にて、Playatuner代表Kaz Skellington(渡邉航光)がナビゲーターを務める新番組「Booze House」が始まった。毎週木曜日26:00〜の30分間となっており、ブラックミュージックをはじめとする洋楽を掘り下げる番組となっている。

この番組ではJ-Waveとタッグを組み、番組で話した内容のリキャップをPlayatunerにて記事化していく予定だ。また、番組情報を発信していくツイッターアカウントは下記となっている。

Booze House Twitter

 

Vol.4  1972年にリリースされたファンキーなミミズとヒップホップ

 

Vol. 5 インディペンデント・ハッスル

Playatunerでは、インディペンデントに活動するアーティストたちの活動方法を頻繁に紹介している。今回の放送はそのようなアーティストの活動と楽曲を紹介し、彼らがどのようにして独自の方法でのし上がったのかを語った。

 

Tech N9ne – Straight Out the Gate

 

通称インディペンデントの王(と私が勝手に呼んでいる)Tech N9neの活動は参考になるだろう。彼はインターネットがまだ発達していない時代からインディペンデント・アーティストとして活動してきたので、地道な「グラインド」を続けてきたベテランである。こちらの楽曲はニューメタルバンド「System of a Down」のボーカリストであるSerj Tankianをフィーチャリングしており、2014年の「Something Else」に収録されている。

現代のインディペンデントなアーティストというとChance The Rapperの存在が大きいが、インターネットが非常に重要な役割を担っている。そんななかで、Tech N9neはインターネット広まる前からインディペンデントアーティストとして活動していて、自分のレーベル「Strange Music」で年商25億円ほどを売上をあげている。今やStrange Musicは巨大で、自社でマーチャンダイズを作る工場やスタジオを持っており、「インディペンデントにビジネスを構築している」という意味では彼が「王」と言えるだろう。

そんな彼がインターネットが世に広まっていない時代からどのようにしてファンベースを獲得してきたかというと、「ツアー」である。彼はラジオやテレビなどのメディアを通さず、0からハードコアなファンを獲得したのだ。今までライブしたことがない街に出向き、7人しか客がいないような状態でライブをし、その状態でもまるで7000人がそこにいるかのような気合で全力でライブをした。そしたら、そのライブを見た客が、次回は友達を連れてくるようになる。次回その街に戻ったときには、観客が20人になっており、3回目には50人なっていた。それが100人、200人、300人となり、ついには10,000人の前でライブをやるレベルとなった。彼は40代に入ってからキャリアのピークを迎えており、「ハードワーク」の結果、誰よりもコアなファンベースを獲得することができたのだ。

彼の活動については下記の記事で取り上げているので、おすすめだ。

インディペンデントの王者Tech N9neがどのようにして巨大なファンベースを獲得したかを語る。長年の活動による彼のカルト的なファンベース

インディペンデントの王者、Tech N9neのレーベル「Strange Music」の事例。CEOから学ぶ③つのこと。

 

Nipsey Hussle – Dedication

 

こちらのDedicationは2018年に頭にリリースされたNipsey Hussleのデビュー・アルバム「Victory Lap」に収録されている曲。ケンドリック・ラマーが参加しており、「グラインド」をするモチベーションが上がる曲となっている。

Nipsey Hussleは長年インディペンデントにファンベースを増やし、満を持してアトランティックと「ディストリビューションのパートナーシップ」を組んでおり、原盤とか権利を持ったまま自主レーベルでメジャー流通をしている。彼のレーベル「All Money In」というと、ミックステープ「Crenshaw」を一枚100ドルの価格で、1000枚限定で発売し、1000万円ほどを稼いだことが2013年に話題になっていた。(Jay-Zが100枚買ったことも話題になっていた)また、彼は#Proud2Pay(対価を支払うことに誇りを持っている)」というブランディングをしており、少数をコンシューマーにダイレクトに届ける、希少価値を高まる施策を取っている。

また、彼はアルバムという形ではなく、ミックステープという形で多くの作品をリリースしてきたため、アルバムのセールス枚数を気にしないで多作になれたのだ。基本的に契約は過去のセールス枚数をベースに交渉されるが、正式なアルバムを一度もリリースしていない状態でここまでファンを増やしたという実績がメジャー流通契約を結ぶときに有利になっている。

また、彼はLAのサウス・セントラルにて、子供たちが数学/エンジニアリング/科学などを学べる施設も立ち上げており、そのコミュニティに還元する姿勢も根強いファンベースの元となっている。

Nipsey Hussleについては下記の記事がおすすめである。

ミックステープとアルバムの違い?Nipsey Hussleが今までアルバムではなくミックステープをリリースし続けた理由を語る。

教育を行き渡らせるために地域に長期的な投資をするラッパーNipsey Hussle。彼のプロジェクト「Too Big to Fail」は必見

Nipsey Hussle「俺らはストリートのサンリオになる」彼のビジネスセンスとコンテンツ・クリエイターとしての戦略から学ぶ

 

Hopsin – Die This Way

 

現在はマネージャーとの仲違いで消滅してしまったが、Funk Volumeというレーベルを自分で運営しており、ゴールド認定されたり、億単位の金額を売り上げていた。現在はUndercover Prodigyというレーベルをはじめており、Tech N9ne同様に非常にコアなファンベースを築いている。彼は元々Eazy-Eが亡くなった後のRuthless Recordsと契約していたのだが、レーベルが何もしてくれない状況から「自分で何かしないと…」と焦りを感じ、自分の小さな「レーベル」をはじめたのだ。

「とりあえず自分でMVを作ろう」と決断した彼だが、当時は2005年とか2006年だったので、iPhoneもなかった時代だ。「とりあえずカメラを買おう」と思ってカメラ屋さんに行ったが、いろいろ説明されでも意味がわからないから適当に店員に選んでもらい、いざそのカメラで撮ってみたところ、映像が非常に暗く、調べてみたらライトが必要だと知る。そしていざライトを使って撮ってみたら「え、このあと編集しないといけないの!編集ってなに!?」となり、何もわからない状況から、調べながら一人で試行錯誤していったのがわかる。

そのような感じで、彼は全てのMVを自分で作り、徐々にYouTubeやFacebookの発展とともに話題になっていった。彼はGoogleを駆使し、インターネットの発達とともに成長したアーティストの一人である。今でもMVは自分でディレクションをしており、YouTubeの登録者は230万人近くいる。

インディペンデントに活動する心意気とは?巨大なファンベースを築いたHopsinから学ぶ「段階を踏む」ことの重要性

巨大なファンベースを築き、突如として解散したインディーズレーベルの栄枯盛衰から学ぶ。自主レーベルと組織とコミュニケーション

シングル?アルバム?どんな活動ペースが効果的か?巨大なファンベースを持つインディペンデント・ラッパーHopsinがした検証

 

Phora – Sinner

 

PhoraはYouTubeジェネレーションのラッパーとしてネットで話題になり、等身大でありリアルなリリシズムによってファンベースを築いてきた若手ラッパーだ。彼はOCにあるアナハイムという町で生まれ育ち、2回も殺されかけており、そのような経験が彼の音楽性を築いている。

Phoraは今年に入りワーナー・ブラザーズとメジャー流通のパートナー契約したが、彼は2011年に立ち上げた「Yours Truly」という独自のレーベルで活動しており、そのブランドは、2017年のブラックフライデーセールの24時間で2.5億円ほどの売上をあげている。8000円弱のアイテムを3万点売ったらしく、23歳アーティストのインディペンデントなマーチャンダイジングとしては信じられないほどの売上である。今まで何もなかった若者が、インターネット上のラップでファンを集め、「ブランド」を確立し、経済的に成功した事例だ。人々が彼の経験、内心を素直に伝えたリリック、ストーリーに共感し、コアなファンとなった結果であろう。

車での寝泊まり生活から5年でForbesに載った23歳のラッパーPhora。2度死にかけた経験とビジネスの成功

 

感想

近年だとどうしてもITを駆使しないといけないという風潮があるが。特に最新技術に集中しているエンターテック方面のイベントなどにいくと、いかに音楽に込められた想い/本質ではなく、ITという手法で全てを解決しようとしている人たちが多いかに気がつく。しかしこのようにインディペンデントに成功しているアーティストを見ると、露出するのはインターネットであるが、実際に「売上」を上げるのはリアルな「商品」であり、人の心を掴むのは自分の人生と共鳴することができる「表現」なのだということがわかる。

 

次回は「Classic Samples Vol.1」Stingの名曲「Shape of My Heart」をサンプリングした楽曲を紹介!Juice WRLDのインタビューもOA!(すでに放送されましたが、Radikoのタイムフリーで一週間聞くことができます。)

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