Jay-Z「人々は結果だけを真似ようとする」彼の言う「結果とプロセス」について考えてみる
憧れの存在
は何かしら志のある人であれば人生に1人や2人ぐらいいるであろう。人生において「最終的には◯◯のようになりたい!」とヴィジョンを持つことは非常に重要であり、それが長期的に続くかどうかは置いておき、人生にフォーカスするためには重要な要素である。特に多大な功績を挙げているラッパーに憧れている人は多いだろう。
そのような「憧れ」の存在に影響され、真似ることはヴィジョンへの第一歩とも言える。しかし「真似る」という言葉に少し違和感を感じるのは私だけではないだろう。この記事ではJay-Zの最新のRapRadarのインタビューからの一言にフォーカスをし、「結果」と「プロセス」の話まで掘り下げたい。インタビュー全編はTidalで公開されているが、この発言はHipHopDXのツイッターでも公開されている。
"People emulate the end RESULT not The PROCESS."
(@S_C_ )Bottom line: Put in that work#Jayz pic.twitter.com/qJPm8UBTIA
— HipHopDX (@HipHopDX) 2017年8月26日
カルチャーでは全てが加速していて、皆が一晩でJay-Zになりたがったり、J. Coleになりたがったりしてるけど
Jay-Z:大体そうだよ。人生というものはそういうものだ。人々はプロセスじゃなくて最終的な「結果」を真似るんだ。何故かと言うと、人々からはその「結果」しか見えないからだ。でも本来は違うはずなんだ。例えばコービーが61ポイントをスコアしたあの日、彼は練習をしていた。彼は人生の全てを練習に捧げているんだ。メイウェザーも多分今この瞬間走り込んでいるだろう。もちろん誰もが成功してジェットとかに乗りたいと思っているだろうけど、そのコミットメントを人生に込めることができるのか?
人々からは最終的な「結果」しか見えないから、皆プロセスの真似はしないと語るJay-Z。結果しか見えないので、簡単に思えてしまったり、何かしら法外なことをやっていたりと勘違いする人もいるが、その裏側を見ることが重要なのである。一見「気合い系」の自己啓発のようにも思えてしまうが、これはそのような精神論ではなく、論理的な数字に基づいた話でもある。このような「プロセス」を精神論だと思ってしまうことが既に「プロセス」ではなく「結果」を真似てしまっていることなのではないだろうか?
多少ビジネスとも共通してくる話であるが、Jay-Zが言っている「プロセスを真似る」ということは、漠然と「同じぐらい頑張るぞ!」と気合を入れることではなく、下記のようなことであると考えることができる。
①目標について考える
②自分の状態を分析
③参考にする人物のプロセスを解体
④ ③で解体したプロセスを参考しつつ、①のために具体的な数字を制定する
なのではないだろうか? ビジネスマンとして、何かしらの数字制定したことがある方的には、この①−④は「KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)」と知られているだろう。そう、ビジネスに限らず、音楽にもこのKPIという概念は非常に重要になってくる。スポーツではこのKPIという概念は、恐らく「トレーニングメニュー」として具体的な数字に落とし込まれているはずだ。このメニューも、適当な数字を当てはめたわけではなく、「理想と現実の差」からスケジュールも考慮した結果として制定した数字となっているだろう。
音楽だとプロセスが語られることが少なかったり、インタビューなどもバイアスがかかっていたりで、イメージが湧きづらいであろう。現代の音楽活動にマッチしており、KPIを設定する上でわかりやすい例がラッパーRussのカムアップの話である。彼は過去にアルバムを何枚もリリースしていたが、それでも全く反響がなかったのだ。そのため、アルバムをリリースしたときにもらえる、ほんの少しの反響を長続きさせることにフォーカスする活動を試みた。アルバムを定期的にリリースする形態から、「一週間に1曲をリリースする」という数字の義務を自分に課し、それが効果として現れるかどうかを測ったのだ。
それが彼の活動スタイルと、ポテンシャルオーディエンスにガッチリハマったのか、彼は今のポジションを獲得した。簡単に言うと彼は「PDCA」を回したことになる。ここで重要なのは、良い効果が現れている施策に関しては、その施策の目標に達するまで毎日コミットし続けたということである。ここで具体的な数字が重要になってくる。具体的な数字を設定しなければ、大体の人は「まぁ今日はいいか」というテンションになってしまうのが普通である。数字を設定していれば、もし達成できなくても、「まだ早いってことだから、とりあえず数字を緩めるか」という判断をすることができる。このように大まかな数字ではなく、最小限まで要素を解体した「毎日コミットする細かい数字」を設定するのが重要である。
Playatunerも実は初期は厳しいKPIを設定していた(今は新規企画期間なので緩めている)。自ら毎日Twitterでフォローする数を設定し、一日絶対に3つの記事をアップしたところ、スタート3ヶ月間の目標アクセス数を達成することができた。その数字は適当な数字ではなく、他社メディアの現状などから分析したものであった。一般的に言う「KPI」の制定、そして「PDCA」を回すことは、ビジネスだけではなく音楽にも使用できる概念である。しかし音楽のような「芸術分野」の場合は、非常に思考回路が難しい。作品を創る「スキル」も出てくるし、その表現力も評価軸に加わる。そしてその「アート」が果たして人々に刺さるのか?という疑問も出てくる。「自分を信じる」という作品を作る上で重要なメンタリティと、KPIで設定できる分野を分析する戦略性が必要な時代に突入している。
Jay-Zが言っていた「プロセスを真似る」ということは、そのように時代/自分にあったプロセス/数字を設定し、コミットすることであると感じる。
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