日本人とメキシコ人ハーフのラッパーTowkioがRick Rubinのレーベルと契約。レーベルのカラーから今後を考察

 

 

日本人とメキシコ人のハーフ

であり、かつChance the RapperのSave Money Crewの一員であるシカゴ出身のTowkio。以前彼がRick Rubinと何かを企んでいるという記事を書いたが、あれから2曲が公開された。2015年にリリースした「.Wav Theory」が個人的にかなりお気に入りであったのもあり、彼の動向が気になっていた。特に日本人のラッパーがアメリカのメインストリームで活躍することは今までなかったと思うので、彼には期待を寄せていた。

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そんな彼が新曲「Hot Shit」を公開し、Rick RubinのAmerican Recordingsと契約したと報道されている。このニュースを聞き、「レーベル契約するんだ」と思ったのが率直な感想であるが、American Recordingsだとなおさら今後の動向が気になるところである。

American RecordingsはRick RubinがDef Jamを1988年に辞めてから、立ち上げたレーベルである。レーベルの第一弾アーティストはDef JamからRickの後をついてきたスラッシュメタル四天王のうちの一つ「Slayer」であった。メタル界で非常に重要な役割を担っているアルバム「Reign in Blood」はAmerican Recordingsからリリースされたものであり、レーベルの代表作の一つとなった。下記のAngel of DeathはPublic Enemyにもサンプリングされているスラッシュメタルを代表する曲である。

さらにこのレーベルの有名どころでは、Jonny Cash、System of the Down、ZZ Top、Tom Pettyなどの作品をリリースしており、ヒップホップレーベルではない。Rick Rubinの音楽の多様性が伝わってくるカタログである。過去にはDJ Kool、Chino XL、Geto Boys、Lordz of Brooklyn、Sir Mix-a-lot、などの作品がリリースされているが、ロックに比べたら圧倒的にヒップホップのリリースは少ない。現在も所属しているのはロックバンドがメインである。

そのように考えると、Towkioの今後のスタイルは「ヒップホップ」に固執することはないと考えることができる。元々「.Wav Theory」でもヒップホップ/ゴスペル/フューチャーファンクなど様々なジャンルをミックスした曲が多かったが、今回の「Hot Shit」も非常に興味深い曲である。前回の「Drift」の攻めている新しいビートは好きであったが、個人的にはサビの「アリガトゴザイマース」という箇所が苦手であった。しかし今回の「Hot Shit」では彼の少し浮いているラップと、メロディアスな言葉運びが印象的であり、ハウス/フューチャーソウルからの影響も伺える多幸感溢れるトラックと非常にマッチしている。多幸感だけではなく、サウンドの狭間から感じることができる、どこかしら寂しい感じが非常にノスタルジックでもある。彼が元々持ち合わせているスタイルに、感情を操作する能力が備わってきたのではないのだろうか?とも感じる楽曲である。

ジャンル的な垣根がないにも関わらず、ヒップホップ界のレジェンドとして多くのアーティストをプロデュースしてきたRick Rubinの元で、彼は今後「ラッパー」から「アーティスト」へと変換していくであろう。さらにレーベルがLAにあるので、今後LAのアーティストたちと絡む機会も増えてくるかも知れない。彼と少し共通点もあるGoldLinkのようなアーティストのコラボや、LAのビートシーンの鬼才Flying Lotusなどのコラボは是非見てみたい。

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