CommonがJ Dillaプロデュースの名曲「The Light」について語る。元ネタのBobby Caldwellの反応と元ネタのBobby Caldwellの反応と「ピュア」な気持ち。

 

 

ヒップホップ・ラブソング

というとなんの曲を思い浮かべるだろうか?もちろん今まで多くのヒップホップ・ラブソングがヒットレコードとなったが、そのなかでも時代を超え、最も「ピュア」な形の愛を歌っている曲と言ったら私はCommonの「The Light」を思い浮かべる。Commonがエリカ・バドゥにインスパイアされてラップした曲であり、J Dillaプロデュースの名曲となっている。

 

そんなJ Dillaのマスターピースとも言える楽曲であるが、こちらの関するエピソードで興味深いものがあったので紹介したい。こちらのComplexの名曲の裏話を解説するシリーズ「Magnum Opus」では、J Dillaとの関係、The Rootsの役割、元ネタBobby Caldwell(ボビー・コールドウェル)の反応、エリカ・バドゥとの関係などについて語られている。

 

Common:俺はシカゴからNYに引っ越して、新しいレコード会社と仕事することになったんだ。NYに引っ越すのは、自分にとって新しい章であり、新しいクリエイティビティのはじまりだった。それが「Like Water for Chocolate」のはじまりだったんだ。俺は既にThe Rootsのメンツとつるんでて、クリスマスになると、彼らはデトロイトに行ってJ Dillaと一緒に作業していた。俺らは既に音楽を一緒に作ったりしていたけど、まだ世には作品は出していなかった。彼らと一緒にいるのは非常に心地がよく、そこでクリエイティブな集団ができたんだ。

Frank Nitt:NYのElectric Ladyスタジオにいくと、Commonが作業していて、その隣にThe Rootsがいて、2階にBlackstarがいるって感じだった。本当に色々なことが起こっていたよ。

Common:J Dillaと作業するときはいつもデトロイトのダウンタウンのホテルに泊まって、J Dillaが迎えに来てくるのを待つんだ。そして彼が家に行って作業をする。彼はたまにスピーカーで流すけど、一人でヘッドフォンでレコードを聞いたりして、「フゥー!」って言うんだ。彼がビートを作り終わったら、彼はストリップクラブに行くんだけど、俺は地下室にこもってリリックを書くんだ。

 

J Dillaといわゆる「ソウルクエリアンズ」となるメンツと、どのような環境で制作していたかを語ったCommonと、J DillaのホーミーでもあるFrank Nitt。彼らと一緒に制作するのは非常に心地がよかったと語る。J Dillaの「フゥー!」はやはりイケてるものに出会ったときにプロデューサーであれば誰でもやる反応なのだろう。さらにCommonは元ネタのBobby Caldwellについて語る。

 

Common:Dillaは俺にあのビートを聞かせた後、あのビートをブラッシュアップしたんだ。そのときはまだサビとなる実際の歌は入ってなかった。俺は実はサンプルするまで白人のBobby Caldwellがこの曲を歌っていることを知らなかったんだ。「この人は本当にソウルフルだ…ソウルに”色”は関係ないんだ」って感じたね。

Bobby Caldwell:誰かが自分の作品をリメイクしようって思ってくれるぐらい、自分の曲が人々に想われてるって考えると素晴らしいことだよ。実際にオリジナルの売上も上がったし、Commonのように楽曲に2回目の人生を与えてくれるアーティストは素晴らしいと感じたよ。

 

Bobby Caldwellが白人だということを知らず、さらに彼の「ソウル」に驚いたと方語るCommon。ソウルに「色」は関係ないという台詞が非常に印象的だ。Dr. DreのNext Episodeの元ネタとなったDavid Axlerodも含め、サンプリングについてマイナスな印象を持っていたアーティストは多いが、Bobby Caldwellはサンプリングされることを非常に嬉しいことだと語っている。自分の楽曲が新しい時代を象徴する大きな要素として、復活するのだ。

Commonのエンジニアによると、この曲は1回のテイクで最初から最後までレコーディングされたらしく、以前紹介したAlchemistとEvidenceの意見とは少し違う内容になっている。このことについてCommonはこのように語る。

 

Common:このビート上で、俺は失敗する気がしなかった。この曲は本当に心から溢れ出す想いを、真っ直ぐに書いてたから、全然考える必要がなかったんだ。自分のなかの「真実」と「想い」を心から伝えただけだ。俺は非常にオープンだった。エリカ・バドゥは俺にとって良い友だちであり、なんでも相談できる人物だった。

Erykah:私たちは友人として関係をはじめたけど、恋に落ちたんだと思う。若かったし、お互いクリエイティブだったし、性格的にもとてもマッチしたし、お互いを影響しあってた。

Common:これはとてもピュアなものだった。もともとそういう意図で書いたものではなかったんだけど、徐々にそのような「愛」に変化していった。愛にたいする価値観が、その気持に「真」であることと、その気持を恐れないことだった。

 

非常にピュアな気持ちを語った2人。若かりし頃の関係であったかもしれないが、Commonの「恐れないこと」という台詞がとても印象的だ。これはエリカ・バドゥの元カレでもあるAndre 3000も言っていたことなのであるが、「ラッパーとしてソフトだと思われるのを恐れている人が多い」なか、このように自分のジェニュインな気持ちを公開するのは非常に勇気のいることだ。そんななかCommonは、自分のピュアな想い、そしてハードなラッパーとしてではなく「自分の等身大の気持ち」を音楽にする強さを知っていたのだろう。元々アルバムカバーに40Ozのビールを持って写っていたような人であったが、彼はこの曲にて世間的にも、内面的にも一皮剥けたのかもしれない。

エリカ・バドゥが過去に関係を持ったトップレベルの男性ラッパーたち

いいね!して、ちょっと「濃い」
ヒップホップ記事をチェック!