ピンチを成長に変えることができた才能溢れる若手ラッパーSmino。来日予定の彼がライブの「スキル」に気がついた瞬間

 

 

インターネットでの活動

は現代カムアップするアーティストにとって非常に重要である。自分の楽曲を人々が集まる場所にアップし続けることにより、徐々に認知度が上がるだけではなく、自分のカムアップ・ストーリーをリアルタイムで見てきた「ファン」を獲得することができる。Playatunerでは度々インターネットでカムアップしてきたアーティストインディペンデント・レーベルを紹介してきた。

巨大なファンベースを築き、突如として解散したインディーズレーベルの栄枯盛衰から学ぶ。自主レーベルと組織とコミュニケーション

 

近年は特にこのような事例が目立つため、インターネットでの活動のみにフォーカスしがちなアーティストが多い中、ライブのクオリティも常にトップノッチにしておく必要があるのだ。以前Denzel Curryの「ライブで音源を流して、実際には生でラップをしないラッパーが多い」という発言について考察したが、インターネットでの活動のみで「有名」になったアーティストはライブが洗練されていない場合もある。ライブを「テンション」で盛り上げることと、実際に演奏として感動させつつ盛り上げることは別のスキルセットなのである。

 

Smino

そのことを感じさせてくれるのが近年出てきたなかでも、非常に「アーティスト」としての才能が羨ましくもなるSmino(スミノ)である。彼は4月8日にContact Tokyoにて来日公演が決まっているが、彼のライブにおけるスキルについて書きたい。ちなみに彼が2017年にリリースした「Blkswn」はPlayatunerのBest of 2017の19位にランクインしている。

彼はセントルイスの音楽的な家庭に生まれ、幼少期から教会でドラムをやってきた「ミュージシャン」でもあり、彼の祖父はブルースの伝説Muddy Watersのギタリストとしても活躍していた。彼は大学時代にシカゴに移り住み、スタジオの床やソファで1年以上生活しながら楽曲を制作していくという「グラインド」っぷりを見せてきた。そんな彼のことをNoNameの「Telefone」で知った方も多いのではないだろうか?彼の楽曲から感じることができるヴァイブスは唯一無二であり、歌とラップどちらをとっても独自の才能を開花させていることがわかる。

 

ピンチを成長へ

そんな彼は実際に編集された「音源上」だけでスキルを見せているわけではない。彼の場合はライブでもそのスキルを披露することができるのだ。彼はまだ「新人」であるが、とあるピンチをきっかけに、ライブでの「演奏力」に集中するようになったのだ。彼はSwayにてこのように語る。

 

Smino:全てのライブを「初ライブ」のような感覚でやるようにしているんだ。ライブ終わった後にバンドメンバーとも毎回「あそこどうだった?」って議論するし。

でも今年(2017年)に初のヘッドラインツアーをやって、20公演以上をソールドアウトしたときにステージプレゼンスに対する意識が変わったんだ。ツアーの2日目で、俺はモッシュピットのなかで足を骨折してしまったんだ。でも松葉杖に赤ちゃん用のエアフォースワンを履かせて、松葉杖をつきながらツアーを続行した。

その時はめちゃくちゃ落ち込んだけど、学ぶことができた。松葉杖で普段みたいに動けないから、ちゃんとアーティストとして「歌」と「演奏」で説得する必要があるんだ。いつもみたいに飛び跳ねまくって、テンションで盛り上げるとかじゃなくて、まずは「声」で観客の心を掴む重要性にフォーカスするようになった。

 

初のヘッドラインツアーの序盤で足を折ってしまったSmino。通常であれば落ち込んで、恐らくツアーをキャンセルするであろう。しかし彼は、自分の音楽の「生演奏」の力を信じ、ミュージシャンとしてパフォーマンスすることにより、激しく飛び跳ねたりしなくても素晴らしいライブができるようになったと語っている。元々教会でドラムをやり、幼少期から音楽をやっているので、演奏能力に対する意識は高いのだろう。

若手アーティストにありがちな、「テンションだけで盛り上げる」ライブは正直イメージと体力があればできるが、「演奏」で説得/感動させるライブをするにはそれなりの練習が必要である。もちろん彼にはその「盛り上げる」ステージプレゼンスもある。彼はSZAとツアーしたときの経験をこのように語った。

 

Smino:その後SZAとツアーしたときにはまた違うことを学んだ。そのツアーでは70%ぐらいの人たちがSZAのファンで、SZAを目当てにライブにくるから、まじでクレイジーなライブをやらないといけない。SZAのファンを説得しないといけないから、全力でライブをやるんだ。

 

彼は自分の声と演奏で説得をできるようになり、そのスキルセットを持ち、盛り上げることもできるのだ。そのため、最前列で盛り上がったとしても、後ろで腕を組んで見たとしても楽しめるライブとなっていることが伝わってくる。このように彼は足を骨折したという「ピンチ」から自分のなかに潜在的に眠っていた能力を見つけることができ、アーティストとしても成長することができたのだ。

特に近年は「若いから盛り上げることはできるけど演奏としては微妙」というラッパーのライブが増えているようにも感じるなか、彼のようにバランスが取れている若手ラッパーは非常に貴重である。彼が自分の音楽と真摯に向き合った結果とも言える。

そしてこの度、Sminoの名アルバムとなった「Blkswn」の18曲中16曲もプロデュースしたSoulectionのプロデューサーMonte BookerもSminoと一緒に来日公演を行う。まだまだスーパースターとは言えないが、今後確実にそのステータスにたどり着くであろうSminoとMonte Bookerを2018年に東京で見ることができる機会、見逃さないことをおすすめする。私も実際に生で見て、動画を見て感じたことが実際に正しいかを確かめにいこうと思っている。

Smino×Monte Booker KOUPLE TOUR DRILLZ

4月8日(日) Contact Tokyo
Advance: 3500円 DOOR: 4500円
Open: 14:30 Close: 20:30
Tickets: Eplus

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