G-Funkに多大な影響を与えたOHIO PLAYERS「Funky Worm」。あの高音シンセメロディはここから始まった
Writer: 渡邉航光(Kaz Skellington)
G-Funkという言葉から何を連想するだろうか?
Dr. Dre(ドクター・ドレー)のThe Chronicだろうか?それともP-Funkから影響された歪んだベースラインだろうか?またはZapp & Rogerから影響されたビート感とトークボックスだろうか?時代によってG-Funkのイメージは変わりつつも、とある一定の定義があるようだ。
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G-Funkのイメージとして大きな要素がいくつかあるなかで、最も目立つのは「高音で鳴っているシンセメロディ」と言っても過言ではないだろう(個人的には「歯医者サウンド」と呼んでいる)。あの鳴くような響き、土臭さとエモさが共存する世界観を演出するメロディはG-Funkにおいては欠かせない要素となっている。具体例を挙げるとしたらこの辺であろうか。
もちろんヒップホップ内ではこのようなファンキー高音シンセを使用した第一人者はDr. Dreと言っても過言ではない。N.W.A.時代から積極的に取り入れていたこのファンキーシンセは彼の1stアルバム「The Chronic」にて洗練されたのである。ではこれらの高音シンセメロディのロールモデルとなった「元ネタ」はどれかと言うと、OHIO PLAYERS(オハイオ・プレイヤーズ)の“Funky Worm”であろう。
OHIO PLAYERS – Funky Worm
是非この曲の00:46と2:14からはじまるシンセパートを聞いて欲しい。そう、このなんともファンキーであり、ぶっとく鋭いシンセサウンドが、後に数々のヒップホッププロデューサーを影響するのである。
この曲は1973年にリリースされた曲であり、ビルボードR&Bチャート1位を獲得している。P-FunkやJBほど聞き馴染みはないと思うが、この曲の攻めているファンキーシンセパートがなければ90年代のG-Funkサウンドは存在していないだろう。よくMoogというシンセが使用されたと言われているが、メンバーのインタビューにてARP Soloistが使用されたと明言されている。ファンキーな「ミミズ」が穴から出てきて、再び穴に戻る様子を表現したと言われている。
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上にて貼った例ではこの曲を直接サンプルしたトラックはあえて抜いたのだが、実際にN.W.A.、Snoop Dogg、Ice Cube、Kris Kross、Nipsey Hussle、The Game、MC Breedなどのアーティストにサンプルされている。
このように1973年にリリースされた曲のシンセを聞くことにより、元の曲がどれだけぶっとくファンキーなシンセを鳴らしていたのかを知ることができる。驚きなのは現代のシンセを使用している曲より、はるかに当時のアナログ・シンセのほうがぶっとい音だと言うことだ。当時のアナログ・シンセが今でも人気なのが伝わってくるサウンドである。この「歯医者サウンド」はヒップホップの一つの形として永遠に語り続けられるであろう。
ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。
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