ケンドリック「DAMN.」のラスト「DUCKWORTH.」に込められたストーリーを解説/考察

 

ケンドリック・ラマー「DAMN.」

ケンドリックが4月16日の日曜日のもう一枚アルバムをリリースする可能性」という記事で書いた通り、もしかしたら4月16日に「青」のアルバムをリリースするかも知れないケンドリック・ラマー。そんな彼の「DAMN.」であるが、2017年の最も期待されているプロジェクトとして4月14日の「聖金曜日」にリリースされた。

このアルバムはとてもハイコンテクストであり、一聴しただけでは彼が本当に伝えたいことがわからないと感じる。(私は1日中頭を抱えて悩みました…)上記の「ケンドリックが4月16日の日曜日のもう一枚アルバムをリリースする可能性」でも書いた通り、このアルバムにはどうやら二面性があるのだが、イントロのケンドリック・ラマーの「死」から最後のトラックの「復活」もあり、彼の「神になる」という意図が感じ取れる。

そんな最後のトラックでは、とある登場人物2人の人生の「交差点」について描かれている。「DUCKWORTH.」にて伝えられているストーリーを紹介したい。

 

人生と神はとても面白いやつだ。本物のコメディアンだ。愛して信じないといけない。

このようにストーリーははじまる。以下は「DUCKWORTH.」の要約/説明となる。

 

Kendrick Lamar – DUCKWORTH. (Full Lyrics

アンソニーは7人兄弟の長男として生まれた。彼はよくリスペクトをされ、落ち着いていた。大変な人生であったが、笑ったり冗談を言うことでその痛みは和らいだ。母がクラックコカイン中毒であり、売春斡旋やギャングが彼の家族の歴史であった。彼は危ない人生を歩むことが約束されており、彼もドラッグを売り始めた。徐々に規模も大きくなり、クラックコカインのディーラーとして金持ちになった。子供も生まれ、手下もできた。

彼は殺人罪で起訴されたが、証拠不十分となり無実になった。無実になった彼はドラッグディーリングに戻り、貧民街にてはじめての2トーンマスタングを買った人物となった。警察が街角の皆を邪魔しにきたときも、汚職警官の提案などを無視してケンタッキー・フライド・チキンに向かったのだ。

そこのケンタッキー・フライド・チキンには「Ducky(ダッキー)」と呼ばれるやつがいた。彼はクルクルの髪の毛ですきっ歯であり、治安の悪いシカゴの南出身のやつだった。彼は$500を持って1人の女性と共にシカゴからカリフォルニアに運転して移住した人だった。彼には息子がおり、息子には大学にいけるぐらい生き延びて欲しいと願っていた。9時から17時の間に働く以外にはドラッグを売り、週末にはキャデラックに息子を乗せていた。普段はケンタッキーにて働いている普通の人であった。

アンソニーはそのケンタッキー・フライド・チキンに強盗に入ろうと計画をしていた。彼は以前84年に同じケンタッキーを強盗することに成功していた。コンプトンに住んでいる人たちにとってはこのようなストーリーは珍しいことではなく、ダッキーに関しても同じであった。ダッキーはアンソニーの行動に注目をしていたし、アンソニーたちにより店長が強盗に合い、客が撃たれたことも知っていた。ダッキーはアンソニーの敵にならないように、毎回アンソニーが来店するたびに無料でチキンと2つ余分にビスケットを提供していた。アンソニーはダッキーのことが気に入り、彼らがケンタッキーに強盗に入ったときもダッキーは無事に生かされた。

ここが物語の肝となり、この一つの選択が彼らの人生を変えることになる。2人の他人に「人生の選択」をさせるために苦境に投げ入れ、魂を与えてみる。

そして20年後、その2人の他人をお互いにもう一度対面させてみる。お互いの利益のためにレコーディングスタジオにいる。そして20年前のチキンの事件について話してみる。彼らの選択/偶然があったがため、最も偉大なラッパーが存在していると誰が思っただろうか?もしアンソニーがダッキーを殺していれば、「アンソニー”TOP DAWG”ティフス」は終身刑になっていた可能性もあるし、俺(ケンドリック)は父親(ダッキー)がいない生活の影響で道を踏み外し銃殺されていたからだ。

 

そう、アンソニーとは「Anthony “TOP DAWG” Tiffith」のことであり、ケンドリックのレーベル「TOP DAWG Entertainment」の創業者/CEOである。さらにダッキーは「Kenneth Duckworth(ケネス・ダックワース)」であり、ケンドリック・ラマーの父親である。後にTDEを創業するアンソニーがもし「チキン事件」でダッキーを殺していたら、TDEは生まれていなければ、父親を失ったケンドリックは偉大なラッパーとして育っていなかっただろう。この偶然の積み重ねにより、実現したことなのである。(追記:このストーリーは実話らしい。この曲の再考察はこちら

さらにこのように道を踏み外さない選択、人を傷つけない選択をすることにより、コミュニティとしても多くの成功者を出すことができるというストーリーなのかもしれない。「神」のイタズラとでも言うべきだろうか。一つの善意が数々の偶然を起こしたのである。この曲のストーリーはPlayatunerの「ストーリーとオチのあるヒップホップ曲5選」に入るべきだと感じる。この曲のオチを聞いて、J. Coleの「4 Your Eyez Only」を思い浮かべたのは私だけではないだろう。

J. Coleの「4 Your Eyez Only」から印象に残ったリリック8つを解説。映画のようなストーリーと最大のオチとは?

さらに「DUCKWORTH.」ではケンドリックのラップで最後に銃撃されるが、逆再生サウンドが入り、アルバムのイントロ「BLOOD.」の最初の台詞が出てくる。こちらにもその意図の考察を書いたが、「イントロで撃たれ死ぬ→最後の曲で過去のことを思い出している途中で同じ銃撃音で遮られる→ 生き返る」という流れなのではないかと感じる。

そう考えるとこのアルバム全体的にケンドリックが「死と復活」の狭間で語るストーリーと解釈することもできる。キリストが亡くなった「聖金曜日(4月14日)」と復活する「復活の日曜日(4月16日)」の間に彼が見た「世の中の真理」なのかもしれない。

ケンドリック「DUCKWORTH.」のストーリーが実話だとプロデューサーの9th Wonderが語る。当曲を再考察。

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington)カリフォルニア州オレンジカウンティー育ちのラッパー兼、Playatunerの代表。FUJI ROCK 2015に出演したumber session tribeのMCとしても活動をしている。