ケンドリック「DUCKWORTH.」のストーリーが実話だとプロデューサーの9th Wonderが語る。当曲を再考察。

 

 

ケンドリック・ラマーの「DAMN.」

についての記事ばかりになってしまい大変申し訳ないが、深く考え、時間を費やすべき作品だと感じるのでご了承いただきたい。昨日「DAMN.」のラストを飾る「DUCKWORTH.」にて語られている大変興味深いストーリーについて書いたのだが、こちらに関してまた面白いエピソードを見つけたので紹介したい。

ケンドリック「DAMN.」のラスト「DUCKWORTH.」に込められたストーリーを解説/考察

このトラックのプロデューサーであり、レジェンド級のプロデューサーとして知られる9th WonderがComplexにてこの曲について語っているのだ。ケンドリック・ラマーとの出会いや、「Ludacris – Splash Waterfalls」と同じサンプルやHiatus Kaiyoteを使用していることについて話した後、ケンドリックとの共演についてこのように話している。

From: Complex

9th Wonder: 最初にケンドリックにこの曲の全体を聞かせてもらったとき「まじか」ってなったよ。俺が彼最初に聞いたのは「これって実話なの?」ってことだった。そしたら彼はそうだと言った。どうやらネットでは少し噂になっていたようだけど、Top Dawg(アンソニー:TDEのレーベルオーナー)も実話だと認めたんだ。

もちろんこの曲を聞いた瞬間に「これって実話なの?」という疑問は誰もが持つだろう。私もそうであった。J. Coleの「4 Your Eyez Only」を聞いたときと同じように一瞬固まって考えてしまうようなオチであるのだ。多面的な彼のアルバムを締めくくり、アルバムの1曲目からまた様々な伏線を確かめたくなるような内容/メッセージである。詳しくはこちらにて読んで頂きたい

最適なタイミング


Complexと9th Wonderのインタビュー内でも言われているが、このストーリーに関して素晴らしいのは「今まで語らなかったこと」であろう。普通このような超話題になるようなストーリーがあれば、すぐに1stアルバムなどで語ってしまうだろう。しかしケンドリックはSection.80でもgkmcでもTPABでもなく、「DAMN.」にてようやくこんな興味深いストーリーを披露したのだ。(父親に関してのエピソードは以前にも何曲かで語っているが。)

それは何故だろうか?個人的にはこれが最適なタイミングであったと感じる。正直TPABのラストトラックとして語られても納得いくようなストーリーであるが、「DAMN.」で語る必要があったのだ。それはストーリー/作品としての意図を読み取ると

①社会的に大きな影響を与える「最も偉大なラッパー」になっている必要があった

②「DAMN.」が問題定義の先を行った作品である

からと考えることができる。「もしアンソニーとダッキーが違う選択肢を選んでいたら、最も偉大なラッパーは存在しなかっただろう」というオチがあるからこそ、このストーリーのインパクトは最大限に発揮されたのだ。これがもし「社会に多大な影響を与える偉大なラッパー」ではなく、ただの「上手いラッパー」であったら、ここまでのストーリーにはならなかっただろう。そのように考えるとケンドリックが「最も偉大なラッパー」としての王座に座り、自身でもそのポジションの責任/影響力を誰よりも自負していることがわかる。このタイミングにやっと披露したということは、彼の「王というポジションの自覚」を表しているのかも知れない。以前「ケンドリックのアルバムがどのような作品になるかを考える」という記事にてケンドリックのこんな台詞を紹介した。

To Pimp a Butterflyは起きている「問題」を指摘したものであった。今はもう問題を指摘するフェーズではないと感じる。

「DAMN.」、特に「DUCKWORTH.」では「神」に絡めながらも、実話のメッセージとして「人生の選択肢とその結果」を提示している。以前書いたように「このように道を踏み外さない選択、人を傷つけない選択をすることにより、コミュニティとしても多くの成功者を出すことができるというストーリーなのかもしれない。「神」のイタズラとでも言うべきだろうか」という結論/メッセージを私は受け取った。gkmcとTBAPでは貧困地域での「問題」を指摘した。そのように考えると、その貧民街での「問題」を克服した人物たちの「成果報告」が「DUCKWORTH.」のストーリーなのではないだろうか?

私は個人的にはこのように解釈/考察をしましたが、皆さんはどう思いますか?解答はケンドリックが説明してくれるまでわからないが、それまでは皆さんで楽しい議論をしたいと思う。

ケンドリック「DAMN.」のラスト「DUCKWORTH.」に込められたストーリーを解説/考察

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington)カリフォルニア州オレンジカウンティー育ちのラッパー兼、Playatunerの代表。FUJI ROCK 2015に出演したumber session tribeのMCとしても活動をしている。

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