【Part.2】日本最高峰のヒップホップバンド「韻シスト」インタビュー。韻シストの音楽性、バンドのルーツなどについて

 

インタビューPart. 1はこちら

 

日本最高峰のヒップホップバンド

と言ったら「韻シスト」の名前を思い浮かべるだろう。生々しく、独創的なサウンドとグルーヴィーで極上なライブパフォーマンスに定評がある大阪をベースに活動するヒップホップ・バンドである。数度のメンバー・チェンジを経て、2MC(BASI、サッコン)Gt(TAKU)Bs(Shyoudog)Ds(TAROW-ONE)からなる鉄壁の現メンバーとなった彼らは1998年結成当初から大阪を拠点として活動し、日本におけるヒップホップ・バンドのパイオニア的存在として高い評価を受け続けている。

そんな韻シストであるが、この度COCOLO BLANDの15周年企画として、5月24日にSTUDIO韻シスト THE ALBUMをリリースをしたのである。昨年からYouTubeにて配信してきた人気セッション番組『STUDIO韻シスト』のハイライトをアレンジしたアルバムとなっており、セッションから生まれた楽曲たちが、豪華ゲストの書き下ろしヴァースと共に収録されている。誰がゲストMCか知らされてない韻シストのメンバーと、そこへ乱入するゲストMC達の1時間ガチセッションという企画から生まれたこの作品について、さらには韻シストというバンドについてお話しを聞くことができた。STUDIO韻シスト THE ALBUMの詳細についてはこちら

 

韻シストInterview Part.2

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CLASSIXとの違い、ハラQさんの存在


 

“信頼関係があるからこそ、100以上の気持ちを込めて言ってくれる”

 

 

 

➖ STUDIO韻シストはセッションから生まれたものなので、CLASSIXとの違いはかなりあると思うのですが、実際に制作しててどのような違いを感じましたか?

SHYOUDOG:CLASSIXは僕らの集大成みたいな意味もあって、「自分たちから見た韻シスト」というイメージがあったんですよね。でも今回はハラQさんのプロデュースってのもあり、ハラQさんから見た「こういう韻シストが聞きたいねん!」という感じが詰まっていますね。そういう意味でも「あ、そういう感じなんだ!」という発見があったりで、楽しかったですね。言われたことを実際にやってみたら「こういうの確かに前にやったことあったな」って思い出したりして、懐かしかったりもする場面もありました。そういう感覚をまた7thアルバムにも落とし込んだりもしてます。新鮮でしたね。

 

➖ 私の個人的な考えだと、アーティストは自分たちがやりたいことをフルでやるべきだと思っているのですが、そういうプロデューサー的な方との信頼関係はめちゃくちゃ大切ですよね。そのような方と一緒に作るのは面白そうですね。

SHYOUDOG:そうですね。しかもその提案してもらったことがやりたくないとかはなくて、むしろ自分たちが気が付かないようなことまで、気が付かせてくれたりするんです。やはり10年以上の付き合いで、信頼関係があるからこそ、100以上の気持ちを込めて言ってくれるんですよね。売れるとか売れないとか、そういうの抜きで「こういうの面白い/かっこいい」ってことをぶつけてくれるので信頼できます。

 

➖ ハラQさん自身は音楽はやられていたのですか?

BASI:これは僕のストーリーがあるんですけど、18歳ぐらいのとき、とあるラッパーのレコードをよく聞いてた時期があって。内容は結構下ネタな感じなんですが、韻とかがかなり固くて、そのラッパーを指標にしていたんですよね。そのあと時が経って、ハラQさんと出会ってからお店に遊びに行ったときに、そのラッパーの話をしたら「そのラッパー、俺やで」って言われて(笑)実は自分が18歳のときに聞いてたラッパーの正体がハラQさんだったんですよ。

 

➖ それめっちゃ運命的ですね…!

BASI:だからそれ以降は何を言われても信頼をしているんですよね。「こんなこと考えてんねん」って言われてから、実際にそれが実現しているときとかを考えると、得るものが大きくて。「またこれも成功するんだろうな」って思わせてくれる人ですね。

TAKU:まぁめっちゃオモロイ人なんですけどね。今の話を聞いていると、凄腕プロデューサー/ビジネスマンみたいなイメージが浮かぶと思うんですけど、気が抜けてて俺らの「兄貴」って感じの人なんですよ。

SHYOUDOG:そうだね。まさに俺らの「兄貴」って感じだね。

TAKU:あとは強力なレコードディガーですね。大阪の皆にも凄く好かれてます。

➖ 大阪ストリートの長嶋監督みたいな方ですね…!

 

「韻シスト」のルーツ/理念


 

“「常に自分らだけが先に行く」という考え方が一番ヒップホップ”

 

➖ 私の個人的な意見なのですが、韻シストってアメリカの真似事でもないし、だからと言っても「ジャパニーズヒップホップ」ってジャンルでもないのかなと思っていて。むしろ「韻シスト」ってジャンルなのかなって思うんですよね。初期のほうは「ヒップホップ」っぽかったと思うのですが、その意識ってどのようにして変わっていったのですか?

SHYOUDOG:「韻シスト」という「ヒップホップを抜きにした考え」はあって。例えばミスチルとかサザンオールスターズってジャンルに括られないんですよね。「サザンオールスターズってロックやんか?」みたいな話にはならないじゃないですか?そういう「個」としての「韻シスト」ということを考え始めたのは結構最近ですね。

元々ヒップホップをやるために組んだバンドではあったんで、そこには長い歳月と魂を費やしたんですよね。そこに忠誠を誓ってきたのもあって、ヒップホップというものが根付きすぎて、説明しなくてもいいぐらいに溶け込んだと思います。「バンドでやるなんてヒップホップじゃない」って言われても、それに返答できるようなスタンスでやっていたので、それが根付いた上で、最近やっと「韻シスト」というジャンルであることを意識できるようになりましたね。

そもそもそうやって何かに寄せるのが「ヒップホップ」じゃないなと感じてて、前にあったものと同じようなものをやるようだったらやりたくないって感覚はあって。「常に自分らだけが先に行く」という考え方が一番ヒップホップなんじゃないかなって思いますね。

 

➖ それこそがヒップホップサウンドの本質ではありますよね。「昔のものを勉強をして、新しいものを作る」という要素が大きい音楽なので、その姿勢がまさに「ヒップホップ」のサウンド面っぽいと感じます。

僕はカリフォルニアのOCというところ出身で、現地の友達に韻シストさんを聞かせたら、めっちゃハマってたんですよね。そういう言語も文化も違う人たちにも好かれる音楽というのは、やはり「オンリーワン」な証拠だと感じました。

 

➖ とてもベーシックな質問に戻るのですが、皆さんどんなアーティストに影響されてヒップホップ、または音楽を始めたのですか?

SHYOUDOG:僕とサッコンは高校が一緒で、バンドやろうぜって誘われて韻シストを組んだんですよね。そのときの理想がThe Beatnutsみたいなのを生バンドでやることだったんですよ。でもなかなか当時はそれを演奏で表現ができなくて。

 

➖ The Beatnutsだったんですね。The BeatnutsやWu-Tangなどのヒップホップにハマる前はどうやって音楽に入ったのですか?

SHYOUDOG:僕らの時代って、パンクとかハードコアとかヒップホップとか、色々がごっちゃになって紹介されてる時代だったんですよね。高校では色んなやつがいたんで、皆で共有しあってたのですが、高校を卒業してからは自分がしっくりくるヒップホップばかりを聞くようになりましたね。

サッコン:当時の感覚って今の若者には想像しづらいかも知れないけど、まだテレビとかでもヒップホップという言葉を聞くのが珍しい時代だったんですよね。だから洋楽の情報を得るには、金曜の夜にやってたMTVの番組かラジオぐらいしかなかったんですよ。そのような洋楽チャートや番組だと、全部一緒くたに紹介されるんですよね。それこそガンズ・アンド・ローゼズとかも流れてましたし。そのなかでもヒップホップがかかると「やっぱヒップホップはヤバイな」ってなってましたね。そこで発見した曲を買いに行ったら、日本では売ってないとかもあったりしましたね。

 

➖ その「情報が与えられない状況でDigる」ってのは、現代の若者からするとかなり面白い話ですよね。

BASI:僕は岸和田の泉州ってところなんですけど、そこでは昔のStussyみたいな横乗り系が根付いてたんですよ。泉州ジャグリンシティって言うレゲェ箱の周りに、スケーターがたくさんいたんですよね。彼らがラジカセでヒップホップ流してたんで、それに興味を持って、友達の家に行ってレコード聞かせてもらったりとかしましたね。当時はDJだらけだったんで、その隙間を行こうと思ってマイクで発言する道に進んだ感じですね。

 

➖ 今の世代は音楽に入るきっかけがYouTubeだったりすると思うんですけど、その世代からすると皆さんのストーリーを聞いてるだけでかなり面白いと感じる人も多いのではないかなと。

TAKU:羨ましい時代ではあるけど、情報が多いから大変そうですよね。

 

➖ さっきのWu-Tangのくだりで思い出したのですが、韻シストバンドでODBの「Shimmy Shimmy Ya」をカバーしてますよね?あれ聞いた時に「この曲でこんなコード使うのか!」って驚いたのですが、「当時ハマってたヒップホップを生音で、かつオリジナルな感じでアレンジしたい」というルーツがあったのですね。

SHYOUDOG:あれやったときは「そう感じてもらえるといいな」と思っていたので、5年越しでやっと伝わりました(笑)

 

➖ ヒップホップってやっぱりサンプルを重ねるのもあって、サウンドごとの「分離感」があると私は思っていて。昔の韻シストさんの音源を聞くと、そのパートごとの「分離感」が伝わってくるんですが、最近の音源はかなり一体感があるなって感じるんですよね。それってメンバー内の関係とかでもその一体感を感じてたりしますか?

SHYOUDOG:結構バンドを長続きさせる秘訣として、プライベートと仕事を完全に別けるってバンドもいるんですが、うちは逆なんですよね。

TAKU:うちらはプライベートと仕事を別けないですね。一緒に飲みに行ったりもしますし。むしろ製作中とかは家とスタジオしかいかないんで、プライベートとかはないに等しいんですが。

SHYOUDOG:花見とかも一緒にやるんで、結構他のバンドマンにびっくりされることもありますね。

 

“リリックはそのときの「生活」が全て”

 

➖ 韻シストさんってめっちゃライブとかツアーやってますよね?そのように数多くライブをやる上で、得た学びとかってありますか?

SHYOUDOG:これはBASIが言ってたんですけど、ある時「ライブを止めたらあかんな」って発言をしてて。制作期間とかだったとしても、ライブを止めちゃうと「生の感覚」がわからなくなっちゃうんですよね。ライブをしてないってことは「実践」をしてないってことで、常に実践をしている必要があるなと。

TAKU:今日のリハでも思いましたもん。最近レコーディングが多かったからか、前回のライブから1週間も空いてないのに既になんか感覚が前と違うというか。

SHYOUDOG:ネットで皆の反応とかって見れることには見れるんですが、やっぱりそれを生で見ないとわからないんですよね。頭で理解するんじゃなくて、体で理解するためには、常にライブをやらないといけないと自分らの場合は思いました。

TAKU:やっぱ3日空いちゃうと、ちょっと感覚が変わってくるかなって。コンスタントにやってると「グルーヴの帯(おび)」がギュッと締まってきますね。通称「グルーヴ帯」が。

➖ 「グルーヴ帯」って言葉めっちゃ良いですね。

 

➖ これは私の勝手なイメージで、韻シストをもし一文字で表すとしたら「和」だと思うんですよね。それは一体感の「和」でもあるし、リリックの内容としても「皆で音楽で気持ちよくなろう」といったポジティブな「和」もありますし。

BASI:やっぱりリリックってそのときの「生活」が全てなんですよね。今は制作とかライブとかでも、とても充実をしているからリリックもポジティブになりますし、俺らがどこかで落ちるようなことがあればそれも「生活」なんで、その時は落ちたリリックになりますし。今いい感じの状況が続いてるってことなのかな、って気がしますね。

TAKU:どうします?次のアルバムが「和」ってタイトルだったら(笑)

 

➖ 前に実家でBASIさんの「It’s All Good」を流していて、母親が「これめっちゃいいね」って言ってたんですよね。「全て良し!」ってフレーズが特に気に入ったみたいで。人生で「全て良し」って状況ってなかなかないと思うんですが、そういうリリックが前向きにしてくれますよね。

SHYOUDOG:僕は自分がやってる音楽の理想があって… うちの母親は全然音楽聞かないんですけど、昔僕がCommonを流してたときに「これめっちゃかっこええな」って言ってたんですよ。それが自分にとって凄く衝撃で、自分が音楽をやるなら、そうなるような音楽をやりたいって思ってたんですよね。それをBASIが実現してたって話を今きいて、めっちゃヤバイなって思いました(笑)

 

➖ 最後に皆さんのオススメ音楽とかを教えて頂いてもよろしいですか?

SHYOUDOG:それこそさっき雑談してた時に、ちょっと名前が出ましたけど、VULFPECKとかは聞いてますね。白人のファンクというか、かなり独特で面白いなと感じます。彼らはツアー代を稼ぐために「Silentify」という「寝る時に流しておくための、30秒の無音を集めたアルバム」をストリーミングで配信してて、そういう戦略というかムーブメントも凄く面白いなと感じましたね。しかも曲もかっこいいから、そういうことをやっても許されるところとかが、かっこいいなと。

 

TAROW-ONE:僕はドラマーなんですけど、Nate Smithにハマってますね。こないだ大阪にきたときに見に行って、めちゃくちゃやられましたね。Nate Smithはグルーヴィーなビート中心に攻めまくるんで、是非聞いてほしいですね。

➖ 結構Jose Jamesが挙げている彼の動画がFacebookのフィードとかに出てきますよね。

 

BASI:僕は自分の作品になってしまうんですが、4月5日にリリースした「LOVEBUM」は自分でも聞けるような作品を作ろうと思ったんですよね。最後の曲と1曲目の境目もわからないような、ずっと聞けちゃうような、流れを大事にした作品なんで、韻シストとの味の違いなどを楽しんで頂けたらなと思います。

TAKU:B-RealとBernerのコラボ作品を最近は聞いてますね。メロウなトラックの上で凄くヒップホップっぽいことを言う、みたいな。やっぱああいうトラックにB-Realが乗ると凄く良いなと思いますね。自分が好きなヒップホップサウンドを感じるんです。車乗ってるときとかに聞くと「ええな〜」ってなります。

 

TAKU:あとは読者にギタリストがいるなら、テデスキ・トラックス・バンドですね。デレックトラックスが嫁さんとやってるバンドですね。ライブとかでデレックのソロが入ったときは、もう手を付けられないような最高のギターを見せてくれますね。

 

➖ 本日は韻シストの皆様ありがとうございました!インタビューのPart.1はこちら!

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