差別問題やテロリズムにたいして独自の目線で語るOddiseeの「You Grew Up」のメッセージは必見

 

 

ヒップホップにおけるメッセージ

は非常に重要なものだ。それがプロテストソングであっても、人々の生きる糧になるものであっても、考えさせられる内容であっても、マイクを持った人の心を代弁する媒体として成長してきた音楽でもある。そんななかで、Playatunerはそのようなメッセージを伝えるとともに、アーティストの理念から人生に残るような「何か」を紹介できるように努めている。

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社会情勢や問題について伝えることができるのもヒップホップの強みであり、今までに様々なアーティストたちがそのようにして声を挙げてきた。それはN.W.A.のような過激な伝え方であったり、ケンドリックJ. Coleのような伝え方であったり、アーティストによって様々なスタイルがある。

そんななか、あまり日本では注目はされていないが、現代アメリカで生きる上で重要なメッセージを伝えているラッパーがOddisee(オディシー)である。彼の楽曲「You Grew Up」では、社会問題に対して一方的な結論を出さずに、双方から問題の根本を見ることの重要性を語っている。そんな楽曲を紹介したい。

1stヴァース


こちらの1stヴァースと2ndヴァースは彼の経験を元に書かれている。1stヴァースでは彼の小さい頃について語っており、「当時の親友は白人だった」という内容からはじまる。黒人である自分と、その白人の親友は毎日のように一緒に遊んでおり、二人共ワーキングクラスの家庭に生まれ、フッドから抜け出そうとしていた。そのような経験から彼は趣向と文化の違いに幼い頃から気が付き始める。

 

俺達は違う肌の色だったけど、エルマーの糊のように、いつもくっついて一緒にいた
俺がNikeの靴を綺麗に保とうとしているとき、彼は「コンヴァースは汚いほうがかっこいい」と言ってボロボロにしようしていた。
彼はグランジなファッションだったけど、俺はいつもフレッシュで綺麗な格好が良いと思っていた。
でも若かったから一緒にラップしたり、パンクのライブハウスにこっそり入ろうとしたりしていた。

 

趣向や文化の違いがあれど、「若かった」からそういうことはあまり気にせずに趣味の壁を超えて一緒の行動をしていたのだ。OddiseeはNPRのインタビューにて、「俺はフレッシュになるために親にNikeの靴が欲しいと頼んでいるときに、彼はコンヴァースをボロボロにするためにわざと汚していた。そしてどちらも周りからは評価されることだった。その時にはじめて文化と趣向の違いがあるんだな、と気がついた。」と語っている。しかし彼との関係はとあることがきっかけで崩れていく。

 

でも彼の父親がリストラをされて、2人の関係は変わった
彼はその原因は俺の父親にあると言った
移民が彼の父親の仕事を奪い、彼の居場所がなくなったと言った
もう家に足を踏み入れるなとも言われた
そして俺達はこの「アメリカ」というカルトで大人になって、彼は警官になった
俺の思考はさらに黒人よりになり、彼の思考はさらに白人よりになった
元々持っていた考えの「根」に戻る方法はなかった

 

親友の父親がリストラをされ、親友は「移民が仕事を奪った」と言い聞かされてきたため、そのように信じて生きてきたのだ。そのように信じた彼は徐々にさらに極端な考えになり、白人の親友との関係が崩れたOddiseeも徐々に黒人としての思考が強くなったのだ。元々は親友であったにも関わらず、このような一つの原因で関係が崩れるどころか、人生における価値観/選択肢が大きく変わったのだ。そしてOddiseeは警官になった彼の名前を数年後にニュースで聞くことになる。彼の車に座っていた黒人を撃ったのだ。そのニュースを見て、Oddiseeは何のせいにすればいいのかわからなくなった。

 

2ndヴァース


2ndヴァースではテロリストになってしまった子供の話である。Oddiseeはスーダンとアメリカのハーフであり、名字がモハメドなのだ。そんな彼は自分の生い立ちと絡め、このようなヴァースを書いた。

 

あなたの友達に狂信者になった人はいるか?
恐らくいないだろうけど、もしいたとしたら、一つ共通点があるということを理解しているだろう。
それは子供時代に与えられたダメージや彼の経験を誰かが利用したということだ。
俺の知り合いでもそのような人がいた。
あまり彼と同じ人種の人がいない土地で育った、アッラーを信じていた人だ。

 

狂信者となり、「テロリスト」になった知り合いについて語るOddisee。そのような人たちには「子供の頃の経験を利用された」過去があると説明する。

 

彼は学校でも常に虐められていた
クラスの全員を憎みながら卒業をした
東に向かって毎日5回お祈りをするから虐められた
アッラーが駄目と言った肉は食べないから変な奴だと思われていた
そしてある日モスクにいるときに、とある男が彼に近づいた
そして彼の人生を変える質問をした
「自分の人生は無駄だったと思うか?」
「武器として役に立つ方法を教えてあげよう」
今まで人に承認されたことがなかった彼は、その男の言葉に惹かれた

 

国家単位のマイノリティだけではなく、コミュニティー単位のマイノリティとして虐められてきたムスリムの子供の話を説明した。学校では「変な奴」として虐められ、自分の居場所がなく認められないことに悔しさと憎しみを感じていたのだろう。そのときに、彼に近づいた男の言葉に居場所と使命を感じ、惹かれてしまったのだ。そしてOddiseeはこのように語る。

 

現代の人は過去の顔を持っている。そんな顔が何か間違いを起こしたとしたら。
愛に溢れた家庭で育てることはできるが、
憎しみに溢れた世界から子供を守ることができない
だから彼は爆発した
彼が唯一犯したその間違いに、世の中は全ての責任を負わせるように

 

問題の根っことしては、彼が虐められてきたことや、それにつけこんだ人たちの存在もあるだろう。しかし彼が結果的に「爆発」してしまったため、彼の「唯一犯した選択ミス」が問題の全ての原因だと世間には思われるのだ。この曲のメッセージを一文でまとめるとしたら、「結果を見て指をさすだけではなく、原因の連鎖を見ることが重要」ということであろう。

Oddiseeは子供の頃Prince George’s Countyという、黒人がマジョリティの地域に住んでいたことがある。そこで彼は名字が「モハメド」というだけで、イジられたり、「お前のお父さんはタクシー運転手なの?」という質問を何度も投げかけられたと語っている。「黒人とスーダンのハーフである自分でがこの扱いであったら、見た目も名前もさらにアラブ系な人たちはもっと苦労しているだろう」とも語った。そしてイギリスの青年のISIS事件もあり、この曲の内容が出来上がったのである。

もちろんこれは彼の視点の話であり、フラットに原因の「根本」を考える重要性を語った曲なので、全ての事例が当てはまるわけではない。しかしこれは「自分と違う思考/趣向の人たちと出会ったとき、一旦その人の立場を論理的に想像して考えてみる」ことの重要性を謳った曲でもある。価値観の形成において「環境」の要素が非常に大きいなか、頭ごなしに指をさすだけではなく、そのような「環境」を見直すことが問題の根本的な解決に繋がるのかもしれない。

Staff Blog:ヒップホップと差別問題と教育について考える【今だからこそ】

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