Kendrick Lamarがメンタリングと人生においての過ちを語る。「前に進み続ける糧」となる彼の発言

 

 

ヒップホップの精神性

というと、人によっては様々な意味を思い浮かべるだろう。しかしそんな言葉でも、ケンドリック・ラマーが現代のヒップホップの精神性を背負っている人ということは満場一致であると予想ができる。今までの彼のインタビューからは、彼が自分の声をいかに人々のエンパワーメントのために使用しているかが伝わってくる。彼の「共感力」の高い発言とリリックは、私を含めコンプトンからはるか離れた場所にいる人たちの、動き続ける糧となっていると感じる。

ケンドリック・ラマー「過去の自分に挑戦し続ける」前に進み続けるモチベーションとは?

 

そんな彼は先日ForbesのUnder 30 Summitに出席したのだが、そちらのインタビューも素晴らしい内容となっているので紹介したい。彼のパーソナリティも見えるものとなっており、彼が何故「ケンドリック・ラマー」なのかがわかる内容となっている。

 

ケンドリックはまず「メンタリング」について語った。彼の人生と音楽活動には、TDE代表のTOP DAWGとDr. Dreという2人のメンターがいるのだが、彼らについてこのように語った。

 

ケンドリック

TOP DAWGについて:コンプトンとかワッツとかではOGだったり、ビッグホーミーだったりが重要な役割を担う。父親がいない子供たちは自分の叔父だったり、フッドのOGやビッグホーミーを父親像として慕うんだ。TOP DAWGは間違いなくOGなんだけど、メンタリングという意味で他の人と違うのは、俺らをネガティブな活動から遠ざけようとしてくれていたんだ。それが彼と出会ったときに、16歳の俺が感じたことだ。彼は若い世代にポジティブな活動をさせることによって、コミュニティに還元していたんだ。俺は彼のそういう面を尊敬している。

Dr. Dreについて:俺はDreの家にいて、ずっと「まじでこの家クソでかいな」ってずっと言ってたんだ。彼は「確かにまじでデカイ家だよ。でもこういう家を買うのは簡単なんだ。難しいことはこれを維持することだよ。常にハードワークをし続ける。そしていずれかは過ちを犯すだろう。色々間違えることもあるだろうけど、質問をし続けることが重要だ。」と言ったんだ。それが今俺が学んでいることだ。まだわからないこともたくさんあるし、俺はまだビジネスマンとしては新人だから、わからないことがあったら質問をし続けるんだ。しかもこのDreとの話は、俺の頭のなかでは全然昔の話ではなくて、つい最近のことのような気がするんだ。

 

TOP DAWGについての話は、以前「TOPとケンドリックがTDEについて語る」という記事で紹介した通りである。彼は所属アーティストがトラブルに巻き込まれないように、「家族」として彼らを人生を抱えたのだ。そしてDr. Dreについて語ったが、ケンドリックファンであれば、このDreの台詞をどこかで聞いたことがあるだろう。これはTPABの1曲目「Wesley’s Theory」のブリッジで入るDr. Dreの台詞である。以前「TDEが他のレーベルと違う理由」という記事でも書いたが、Dreはその「お金の使い方」がテーマの曲で「お前は俺みたいな家が欲しいって言ってたよな?ゲットするのは簡単なんだ。その家をキープするのが難しいんだ!」と言っている。この場合の「家」とは直接的に家という意味もあれば、「財産、名誉、影響力を維持するためには常にハードワークをしないといけない」という意味でも捉えることができる。

さらにDreも人生で様々な過ちをおかしてきた。ビジネスを知らない理由で、Ruthlessやデスロウで満足行く契約ができず、結果的には搾取されてきたような形になってしまったり、Aftermathの第一弾コンピレーションが思ったほど売れなく、インタースコープから切られそうになったりした。しかし彼は最終的に「自分を信じる」ことにより、エミネムなどのアーティストを輩出することができたのだ。

さらにケンドリックはアーティストにとって非常に重要なことを語る。

 

➖ 自分が若いアーティストをメンタリングするとき

ケンドリック:凄く興味深いことだよ。自分がした過ちから学んで、若いアーティストに伝えることができる。それは音楽であっても、ビジネスであってもそうだ。レーベルのために、自分が本来レプリゼントしていないことをやったり、他のアーティストが既にやっていることをやったりするなってね。だからTDEの新しいアーティストには「他人に寄せるために手を伸ばすな。自分が良い気分になれるようなことをやるんだ。レーベルと契約がしたいがために、人に合わせるな」って伝えるんだ。そういうメンタリティで音楽を作っても、長続きしないからね。

 

これは昨日書いた「Futureが音楽キャリアを長続きさせる方法を語る」という記事に共通しまくることである。他人に合わせるのではなく、自分がレプリゼントすること、そして他人の意向に合わせた音楽を作っても、レガシーが長続きしないと語った。

 

➖ 今までで一番の過ちは?

ケンドリック:それは他のアーティストの成功が気になったり、他人の成功を自分の成功にも置き換えようとしてしまったことだな。例えばラジオとかでプレイされている曲を聞いて、それを羨んだりすると、業界が押し出すことであったり、世間的に何が流行っているかに意識を奪われてしまう。そしてそれによって自分の表現をすることを阻まれたりするんだ。だから俺は「自分」しかできないことをやるために、自分のラップネームを本名の「ケンドリック・ラマー」に変えたんだ。もし俺の音楽が気に入らないのであれば、別にそれでいいよって考えだ。

 

➖ これから新しいことを始めようとしている人たちにアドバイス

ケンドリック:「Failure(失敗)」どれだけの人がこの言葉を恐れているかわかるか?多分80%がこの言葉を恐れているだろう。自分もそうだった。でも自分の仕事やワークに対する理念で、この言葉を逆にビビらせないといけないんだ。失敗を恐れるのは、他人からどう思われるかが怖かったり、お金を失うことを恐れていたり、そういうことだ。自分の人生のコントロールを持ちたいのであれば、「失敗」という疑念を完全にブロックしないといけない。例え失敗したとしても、それは人生の経験になるし、次に活かせる。自分の子供たちだったり、外の子供たちだったり、次の世代に託すこともできるし、彼らが自分の夢をもっと大きく実現してくれるかもしれない。

 

これらは、人々にとって非常に重要なことだ。いつも「◯◯がやりたい」と言うが、何もしない人を見ているとき、上記のようなことが脳裏に浮かぶ。他人の人生の選択について責任を追う気はないが、「Failure」を恐れている人が世の中には多い。特に日本では「失敗することは悪」という風潮がいまだにあるようにも思える。安西先生ではないが、個人的にも「失敗は動きを止めたときに、はじめて失敗になる」と考えている。動き続けている限り、全ての失敗は次の動きのための「検証」なのだ。その「検証」をやり続けるのは、非常に辛く孤独な道であり、現在は誰にも理解されないかもしれない。しかし現在理解されないからこそ、20年後、30年後、死後にもレガシーとして残り、それに影響された人たちがそのバトンをまた次の世代に託してくれる。そのように、動き続ける糧となる音楽/文化の一つが私にとっての「ヒップホップ」であり、私にとってケンドリック・ラマーはそのような存在だ。

エミネムとケンドリック・ラマーが共感される理由を考える。ストーリーテリングと多重視点

 

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