25歳以降に音楽活動を本格的に開始したラッパー4人。期間の長さより活動の濃さにフォーカス

 

 

How Old is Too Old?

何歳から人間は「もうこの活動はできないな」と感じるのだろうか?それは人の価値観それぞれであろう。10代の若手アーティストやアスリートが毎日のように注目されているなかで、自分と世間の期待にギャップを感じている人もいるかもしれない。特にアーティストを目指している人は、そのギャップに焦る人もいるのではないだろうか?しかしよくよく考えてみるとエミネムやJay-Zは苦労の末27歳のときにデビュー・アルバムをリリースしており、スタートとデビューした年齢は「人それぞれ」なのである。Tech N9neに関しては40代に入ってからやっとメインストリームから認識されるようになった。そこで今回はスタートした年齢の早さより、活動の密度の高さが目立つ「25歳以降に活動を本格化させたアーティスト」を紹介したい。

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Action Bronson

Action Bronsonは現在34歳であるが、彼が本格的にラップをしはじめたのは27歳のときである。彼は元々尊敬されている料理人であり、趣味でラップを嗜んでいる程度であった。しかし27歳の頃にキッチンで足を骨折したことをきっかけで本気でラップキャリアに挑戦するようになる。どのようにしてキッチンで骨折したのかは不明であるが、数ヶ月間シェフとしての仕事ができなくなった彼はフルタイムラッパーとなった。彼の凄いところは27歳に本格的にラッパーとして活動しはじめて、同じ年にインディペンデント・レーベルからデビューアルバムをリリースしていることである。元々スキルがあったのか、ものすごくラップ密度の濃い骨折期間だったのか。From: XXL

 

Danny Brown

Danny Brownは現在36歳であるが、元々小さい頃から韻を踏んだり、ラップを書いていた。18歳まで「俺はラッパーになる」と信じていたが、両親が離婚したことがきっかけでドラッグディーラーになる。彼は「一回逮捕されたらドラッグディーラーを辞める」と考えていたらしいが、ライフスタイルにどっぷりハマってしまい抜け出すことができなくなったと語る。裁判から5年ほど逃げ続けた結果、彼はお金がなくなったのもあり、音楽を勉強しはじめ、覚悟を決めて刑期を受けた。牢屋から出た彼は様々なスタジオを訪問するためにNYに足を頻繁に運ぶようになる。彼が「今始めないと、もう後ははない」と感じ、音楽「活動」をするようになったのは27歳のときであった。From: Complex

「Danny Brownは最初自分がやってる音楽に自信がなかった」とA-Trakが語っている。

 

Lil Dicky

Lil Dickyはどちらかと言うと「ヒップホップ×コメディ」という分野で最初話題になったので、少し特別かもしれない。彼はリッチモンド大学を卒業した後、広告代理店に就職した。25歳のときにラッパーとしてのキャリアを追うために、会社を辞める。彼は就職していた時期に貯金したお金で、サンフランシスコに引っ越し、数々のMVを制作していった。彼の最初のMV「Ex-Boyfriend」は「彼女の元カレと思われる人がイケメンで、色々想像してしまって悔しい」という内容であり、その面白さから24時間で100万再生を達成する。彼は貯金がつきるまで15個もMVを公開しており、32曲をリリースしている。Boston Magazine

 

Chuck D

Chuck Dに関しては少し別枠である。実際に彼が「ラップをはじめた」年齢は25歳以前だと思われるが、彼が27歳のときにPublic Enemyをはじめたと語られている。元々グラフィックデザインを専攻していた彼は、ローカルラジオのホストをやったり、ローカルで行われるヒップホップイベントのフライヤーなどをデザインしていた。Rick Rubinが彼のデモ「Public Enemy No.1」を聞き、彼と契約しようとした際に、Chuck Dは「ラッパーとしてデビューする年ではない」と一度断っているのだ。まだまだヒップホップが若い頃であったので、27歳という年齢はグランドマスター・フラッシュと2歳違いであった。しかしその後Chuck Dは30年経った今でも第一線で活躍し続けている。あのChuck Dでさえ、「俺ちょっと年行き過ぎてるかな?」と感じていたのだ。

 

ボーナス

上記では20代後半にラッパーとして本格的に活動しはじめた4人を紹介したが、もっと若い頃から活動をしはじめてキャリアの後半で爆発した人も多い。上記のエミネムやJay-Zも27歳デビューであったが、遅咲きと言えば2 ChainzやRick Rossが良い例であろう。2 Chainzは元々Tity Boiという名前で活動しており、20歳となった1997年にPlayaz Circleを結成している。2000年代に入り大ヒットしていたLudacrisのDisturbing Tha Peaceと契約したが、彼がデビュー・アルバムを同レーベルからリリースしたのはその10年後であった。しかし彼はLudacrisの元を離れ、個人で「グラインド」をするようになる。名前を2 Chainzに改名し、改めて1から活動をしはじめた時、彼は34歳であった。Rick Rossも長く水面下で活動していたが、アルバム「Port of Miami」をリリースしたときは30歳であった。

 

若く活動をはじめるに越したことはないが、このように見てみると多くのラッパーが25歳以降にキャリアを本格化させていることがわかる。アリーヤが言うように「Age aint nothing but a number」ということなのかもしれない。「Age」ではなく、どれだけコミットをして「密度」を高くし、濃くできるか?ということなのだろう。特にChuck D以外の3人のアーティストは、短い間に多くのミックステープなどを公開しており、その公開の数が肝となってくるように感じる。若い人を見て「焦る」のではなく、上記を見て「安心」するのでもなく、自分ができる最大限のペースでアウトプットにコミットする必要があるのだろう。

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