大気圏10万フィートからアルバムをドロップしたTowkioが語る「概観効果」と地球。伝説リック・ルービンが20年ぶりに契約した日系人ラッパー

 

 

レジェンド・プロデューサー

が契約したアーティストであれば恐らく多くの人はチェックするであろう。大体のこのような「◯◯が新人と契約!」という話題になったときは、Dr. DreのAftermath Entertainmentであったり、近年であればTDEの場合が多いと思うが、デフ・ジャムの創始者でもある伝説のプロデューサーRick Rubin(リック・ルービン)が20年以上ぶりにラッパーと契約したのだ。それがTowkioである。

日本人とメキシコ人ハーフのラッパーTowkioがRick Rubinのレーベルと契約。レーベルのカラーから今後を考察

私がはじめてTowkioを聞いたときは2015年の.Wav Theoryというミックステープをリリースしたときであったのだが、彼には素晴らしい才能があると感じ応援をしてきた。さらに彼は日本人の父親とメキシコ人の母親との間のハーフであり、Chance the RapperやVic Mensaとホーミーであり、彼らのクルーSavemoneyの一員であったことから「これは日系人ラッパーがメインストリームになるのでは!」と感じていた。そんな彼がリック・ルービンと契約し、この度デビュー・アルバム「WWW.」をリリースしたのだ。

彼は単にアルバムをリリースしたわけではない。彼はこの度ヘリウムバルーンに乗り、100,000フィート(30km)上空の成層圏からアルバムを言葉通り「ドロップ」したのである。恐らく成層圏までいき、青い地球を外から見たラッパーは世界で彼一人であろう。

 

そんな彼が成層圏まで行って感じたことや、リック・ルービンについて語ったことが面白かったので紹介をしたい。彼はこの度Beats1のZane Loweにこのように語った。

 

Towkio:グーグルのラリー・ペイジがこう言ってたんだ。「全てアイディアは、クレイジーじゃなくなるまではクレイジーなんだ」ってね。だから近い将来、皆がこのように宇宙から地球を見ることができるようになるよ。「オーバービュー・エフェクト(概観効果)」を感じることができるようになる。

Zane:オーバービュー・エフェクト?それはどういう効果?

Towkio:オーバービュー・エフェクトはアルバム「WWW.」のテーマでもあるんだけど、宇宙飛行士とかが、宇宙に浮いてる地球を見たときに感じることなんだ。外から自分が生活する地球を見たときに「Wow…自分の地球での人生は地球でしか存在しないんだ…」って自分の意識に変換が起きる。普遍的な法則とか、人に対する愛以外のことは全て窓の外なんだ。

でも実際に地球を見たとき、そういうことではなく地球の「美しさ」と「貴重さ」だけを考えてた。宇宙はクールだけど、そこには何もない。まぁ本当は色々あるんだろうけど、俺たちは地球という「良いスポット」を持っている。でも実際に中にいると、国で別けられていたり、黒/白で別けられたり、インスタグラムで悩んだり、インターネット時代の変な隔てがあったりする。外から地球全体を見ると「人間社会」として前に進むために、お互いを手助けしあってインスパイアすることが最も重要だと感じた。どんな国で、どんな経験をした人でも、外から地球の丸みを見たときに全員が同じ感情を抱くだろう。地球と命の尊さを。

 

彼は成層圏から地球を外から見たときに感じた「オーバービュー・エフェクト」について語った。宇宙という無限大のなかで、地球という「素晴らしいスポット」があると語り、それを客観的/概観的に見ることによって世の中にある隔てに疑問を感じるようになったのだ。疑問を感じるというより、色んな国に行ってみた結果「自分の悩みはちっぽけだった!」と前向きになれる人がいるように、地球上で起こっている争いと隔たりは地球外から見たら「なんでこんなことが起こってるんだろ」と感じるのかもしれない。そしてTowkioは近い将来、多くの人が外から地球を見てそのように感じる日がくると語っている。

さらにレジェンド、リック・ルービンがチェックインし、Towkioについて語る。

 

Zane:Towkioが成層圏に行くことについて、何か恐れはありましたか?

Rick:私はTowkioを信じているし、彼はなんでも実現できる人だと思っている。

Zane:長い間自身のレーベルでラッパーと契約していなかったですが、なぜTowkioと契約しようと思ったのですか?

Rick:単純に彼の音楽を聞いたときに感じたし、まずは彼の周りの人たちから会ってから彼に会ったんだけど、単純にクールなヴァイブスがあったんだよね。自分が聞きたい音楽だった。大体はそういう理由だね。人としてもスピリチュアルな話が合ったり、同じ本を読んでたり色々な分野でコネクトした気がした。

音楽に関しては、毎回新しいフィーリングを提供してくれる。声とフローも好きだし、ときにはアバンギャルドな攻め方もあったり、ときにはヒップホップには珍しいアコースティックな美しさも見せてくれる広さが好きかな。

Towkio:愛してるぜリック!

 

レジェンド、リック・ルービンはTowkioについてこのように語った。彼のアルバム「WWW.」は確かに普段ヒップホップファンが聞いている「ヒップホップ」とは全く雰囲気が違う作品となっているが、これはTowkioの「アーティスト」としての幅広さと成長を表しているだろう。ダンスミュージックとしても通用するラップもあり、さらには人生の全体像を想像させる楽曲も混ざっているこの作品は必聴である。また、.Wav Theoryをチェックしていない人は、こちらのミックステープも必聴である。

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ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

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