【ライブレポ】Thundercatのグルーヴ、超絶テク、シュール&キュート全ての頂点に立った笑顔のライブ【LIQUIDROOM】

Photos: Kazumichi Kokei

 

これなんて表現をすればいいんだろうか?

と言いたくなる音楽が素晴らしいと感じるようになったのはいつからだろうか。一つのジャンルに囚われず、聞いた/見た瞬間に頭に「!?」が浮かんでくると同時に、すんなりと体に入ってくる心地よさも持っているアーティストはとても貴重だと感じる。その数少ないアーティストのうちの1人は確実にThundercat(サンダーキャット)であろう。彼の「Drunk」ジャパンツアーは東京、名古屋、大阪、京都の全公演が完売となったわけだが、4月27日の恵比寿リキッドルームでの演奏を見る機会を頂いたので、Playatuner風にレポートをさせて頂こうと思う。

Playatunerでは度々Thundercatの面白さや、アーティストとしての特徴などを紹介してきていたため、かなりワクワクな状態で会場についた。「Drunk」ツアーであったため、予想通り「Rabbot Ho」の演奏から始まったのである。ちょうど私は同日の昼にキーボーディストのDennis Hammとお寿司を食べていて、彼に「Rabbot Ho」の制作秘話を聞いたのでそのエピソードを思い出しながらニヤニヤしていた。(このエピソードはまた後日公開いたします)生で彼のライブを見た個人的な感想を3つのポイントにまとめるとすると、「グルーヴ/テク」「伏線回収」「シュール&キュート」になるだろう。

 

グルーヴ/テク

本当に凄いものを見たときに、感動する前に笑ってしまった経験はあるだろうか?Thundercatのライブはまさにそうである。彼らのグルーヴと超絶テクに関しては、様々な媒体にて紹介されているのでそこまで深く入り込む必要はないと感じる。ただ単にグルーヴと言っても、リズムマシーンで作られたようなものではない。ジャズ、ロック、ファンクなどを感じることができる演奏は一言で表すとまさに「自由」であった。「おいおい、こんな自由な演奏は久しぶりに見たぞ!」と叫びたくなるほど、「箱」に囚われていないのである。この「感覚的にその場の判断の全てがお互いとマッチする」という状態はThundercat、ドラムのJustin Brown、キーボードのDennis Hammの百戦錬磨の経験を持っていないとできないと感じた。

全曲が音源とは全く違う形であり、例えばCaptain Stupidoでは「あ、Suicidal Tendenciesやってたよね」と思い出し「ベースの領域超えてるでしょ」と笑ってしまう場面もあった。定番曲「Them Changes」などの唸るベースもあり、「静と動」「重と速」が入れ替わる、ジェットコースターのような経験であった。

Photos: Kazumichi Kokei

 

伏線回収!?

ヒップホップファンであれば、Thundercatをケンドリック・ラマーのTo Pimp a Butterflyで知った人も多いのではないだろうか?そんなヒップホップから流入されたファンにとっては嬉しい伏線回収があった。例えば今回Thundercatは、曲の間にケンドリックの「Complexion (A Zulu Love)」を挟んできたのだ。彼らはセットリストを事前に作らないと言っていたので、恐らくこのような演出は即興なのかも知れない。さらにはLAのエレクトロジャズファンクバンドKNOWERのLouis Coleとのコラボであり、Drunkに収録されている「Bus in the Streets」をスローアレンジで演奏しているときには、なんとグラミー受賞もした「These Walls」のサビを混ぜてきたのだ。これにはテンションが上がったのは私だけではないだろう。ヒップホップファンにも嬉しい演出をしてくれたのだ。

 

シュール & キュート

Thundercatに対するイメージの一つとして「シュール」がある。ライブMCをする彼はまさにシュールであった。MCと言っても途中で「Hi…!」や「…I love you guys」と一言で終わることが多かったのだが、その沈黙と演奏のバランスがとても印象に残っている。観客が叫んだことに対して「…What the Fuck?」と反応を示したのも、観客と彼の距離感が縮んだように感じる要素であった。

そしてそのシュールさとともにキュートさも持ち合わせているのがThundercatである。特に楽曲「Tokyo」をジェスチャー込みで演奏する彼の姿には、テンションが上がった女性ファンも多かったようだ。「Tokyo」は実ははじめてライブで演奏したらしくて、ここにも東京への愛を感じることができた。最前列にいた私の友人が「Thundercatの靴にドラゴンボールのフリーザのアップリケが施してあった」と教えてくれたのだが、その情報も相まって「Tokyo」の演奏中には微笑ましい雰囲気に包まれていた気がする。また「A Fan’s Mail (Tron Song Suite II)」ではDennis HammがiPhoneアプリの「Cat Piano」を使用して、猫の声を演奏していたのもまさに「シュール&キュート」であろう。

Photos: Kazumichi Kokei

 

このような3つのポイントにまとめてみたが、思い返せば思い返すほど紹介したいポイントが増えてくる。今回彼のライブをはじめて見て感じたのは「もっと色んな雰囲気の会場でも見てみたいな」であった。セットリストを持たない即興性の高い演奏が、会場の雰囲気や規模によってどのようにして変わるのか、とても楽しみである。ライブ後、彼と話す機会があったのだが、何故リスナーたちが彼の音楽と共鳴するのかを感じ取ることができた。彼が言っていたことで印象的だったのがこちらである。

「どんなに変なことや嫌なことがあったとしても、それを笑いに変えるんだ。そういうことを全部ネタにして笑っていれば、どうにかなる」

彼のライブからも感じた「得体の知れない魅力」が言葉に現れた瞬間であったと感じる。今回チケットが取れず、参加をすることができなかった方は是非次回の来日の際には参加してほしいと感じる。そこで皆さんも笑えば嫌なことも吹き飛ぶだろう。

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