「Control」のケンドリック・ラマーのヴァースとその一週間後に起こった出来事。世代交代の瞬間
時代を象徴するヴァース
というものは、どの時代にもある。Playatunerでは以前「ストーリーテリング」について第一弾と第二弾にわけて記事を書いたが、そのなかのヴァースはどれも時代を代表するヴァースであったと感じる。人々を驚かせ、考えさせ、業界がそのヴァースのカバレッジに夢中になるヴァースはそうそうないだろう。
そんな「時代を代表するヴァース」だが、2010年代を象徴するヴァースの一つがBig Sean「Control」の2ndヴァースとなる、ケンドリック・ラマーのヴァースであると感じる。このヴァースは当時のヒップホップ業界を非常に騒がせたものであった。
騒がせたラインはいくつかあるが、そのなかの大きな3つは
・俺はマキャベリ(2Pac)の子孫だ。そしてニューヨークの王、コーストの王。片手でどちらもジャグリングする。
・床屋ではいつも「誰が最高のMCか?」というディベートが行われているそうだ。ケンドリック、Jay-Z、Nas、エミネム、Andre 3000、他の新しいやつらは新しいだけだから関わるな。
・俺といつもは一緒にライムしているやつらはホームボーイだけど、これはヒップホップだ。J. Cole、Big KRIT、Wale、Pusha T、Meek Millz、A$AP Rocky、Drake、Big Sean、Jay Electron’、Tyler、Mac Millerよ。お前らには愛があるが、俺はお前らを殺そうとしている。
というラインであろう。最初のラインは実際にはKuruptのヴァースからのレファレンスであり、Kuruptは後に「King of New Yorkは映画だし俺らはお前らのフッドなんか欲しくないから!💢」とインタビューで語っている。しかしこのことを知らないファンやラッパーたちは、コンプトン出身のラッパーが「ニューヨークの王様」を名乗ることに憤怒していたのだ。さらに「ヒップホップは競争が激しいカルチャー」というのもあり、同じ時代で活躍している人たちを激励する意味も込めた「お前らには負けない」というリリックも、ディスと捉えたファンやメディアも多かったのだ。一般的にはメディアというものは必要以上にリリックを「ディス」に近づけ、ゴシップのように火に油を注ぐのが仕事のようなものなので、その影響もあり、このヴァースがリリースされたときは相当盛り上がったのだ。
そんな「Control」のヴァースであるが、その後様々な出来事があったが、TDEの共同代表のPunchが非常に面白いツイートをしているので紹介したい。「Hip-Hop最高のアーティストとの思い出を語れ」というお題で彼は下記のツイートをした。
Walked into a jayz and puff party in ny, w kdot a wk after control dropped. seeing half the rappers kdot mentioned on the verse in there… https://t.co/xybGEf58Id
— Punch TDE (@iamstillpunch) 2017年8月2日
Controlがリリースされた一週間後にケンドリックとNYのパーティーに行き、Jay-ZとDiddyに遭遇した。そしてケンドリックがあのヴァースにて名を挙げた人たちの半数ぐらいがその場にいた。
なんと彼はあの「NYの王様」事件の一週間後に、NYにてNYの王様とも言えるJay-ZとDiddyに遭遇したのである。さらに彼は名前を挙げた人たちと同じ場にいたのである。実際その場はどのような雰囲気だったのだろうか?半年後とかであれば、自然にパーティも楽しめるだろうが、一週間後となると逆にケンドリック以外の人たちがどのような反応をすればいいのかわからずに緊張していた可能性もある。さらに彼はこのように語った。
Punch:2013年は皆が前に進んでいる年だった。GKMCがリリースされて、Drakeもいい感じだった。Coleも乗りに乗っていた。Meekも動いていた。皆前に進んでいた。
新世代のヒップホップが熟しはじめた年だったと感じる。Jay-Z、Nas、エミネムがいなくても成立した最初の世代だった。
確かに2013年にケンドリックが名前を挙げたラッパーたちは、今ではビッグネームとなっている。もちろんNasやJay-Zはまだ現役であるが、世代の交代が目に見えて起こった年が2013年頃だったと感じる。Punchもその時代に感じていた熱さを思い出しながらツイートし、色々当時のことを思い出してエモくなっているのだろう。今後の人生で何度このような世代交代を見ることができるのだろうか?そしてその世代交代に自分の感覚がついていけるのだろうか?非常に楽しみである。
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